揚げ物、お好きですか? 第二部

ツ~

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完成!新店舗!!

完成!新店舗!! 2

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 新居への引っ越しも一区切りついた、昼下がり。
 少し遅めの昼食を俺達はとっていた。
 いや~。この世界は便利なのか不便なのかよく分からなくなる。
 引っ越しも元の世界だったら1日では終わらなかっただろう。
 荷造りだけでも数日。それから業者に頼むなりして、運んでもらう。
 その後、また荷ほどきをしなければならない。まさに重労働。
 しかし、この世界には『ゲート』と言う、素晴らしい魔法がある。行った事のある場所なら、瞬間移動が出来ると言う魔法だ。
 簡単な話。引っ越し元と引っ越し先さえ知っていれば、『ゲート』で簡単に行けるということ。
 大きな荷物もぶつけて新居や荷物に傷が付かない程度に梱包して運べば直ぐ終わる。
 重い荷物も、ステータスやスキルで補助されている者がやると簡単に運搬出来る。
 重力を操れる魔法を使える者なら、更に簡単だ。
 もちろん、割れてしまう食器類などは流石にちゃんと梱包するが、それでも元居た世界とは大違いだった。本棚やタンスも本が落ちたり、タンスの中の物が落ちないように梱包すれば、そのままで運べるから便利だ。抱えて移動も運ぶ部屋に一回入ってしまえば、その部屋に瞬間移動出来るから、直ぐ終わってしまう。
 防犯的に、ゲート引っ越しセンターの方に盗みに入られないか心配もしたが、流石にそこは信用問題。盗みを働くような輩が出来る職業ではなく、盗みもかなりの重罪らしく己の命をかけるには高すぎるよう。まあ、それでも盗賊などは居るのだけれど……。
 それに、今回はイリアもゲートで大活躍だった。引っ越しの割り引きもしてもらったし、安心して、楽なのは良い事だな。
 俺はそんな事を考えながら、今日の昼食『冷やしうどん』のお供、『鬼クジャクの天ぷら』を口の中に運ぶ。
 ……ん!?
 何だ?このコリコリとした食感は……。
 肉屋の店主に引っ越し祝いだ!って貰って、揚げてみたけど……地鶏の噛みごたえとは違う。
 そう。ナンコツ。鶏ナンコツに近い食感。いや……数の子か?
 初めて食ったけど……こりゃ、面白いし、美味いわ。
 コリコリしてるのに、噛めば弾けるように肉汁が溢れ出してくる。サクッと仕上げた天ぷらのころもとも合ってる。肉自体の味は鶏肉らしいと言うのか……淡白な味。それでも、大ニワトリより遥かに旨味がある。皮も付いていたから、部位によるのだろうか?脂肪分が多いのか??でも、くどくない。
 そもそも、この鬼クジャクはダンジョンで穫ったのか?野生のものなのか??
 ダンジョンと野生のものなら、取り扱ってる部位も違うのがあるだろうし、味も違いがある。
 野生の物なら、骨も取れるだろう。そこから、良い出汁がでるかも……いや、もしかして、骨からだけじゃなく、この身からも良い出汁が取れたりして……。
 など、考えていると、食卓が騒がしい事に気がつかなかった。それだけ、考え事に集中していたのだろう。

 「ちょっと、アリシア!!それは私の天ぷらですよ。勝手に取らないで下さいよ。」

 イリアは取ろうとした『鬼クジャクの天ぷら』をアリシアに横取りされ、非難の声を上げる。
 しかし、それにアリシアは意を介さない。

 「なんでさ?大皿なんだから、みんなどれを取っても同じじゃない??」
 
 ごもっともな意見だ。多少、大きさには差があるけどたいして変わらない。
 それでも何か気に食わないのか、イリアは食ってかかる。

 「何を言っているのですか?揚げ色が私好みなんですよ。」

 イ、イリアのやつ……と、とんだ言い掛かりをつけやがる。

 「こっちのも変わらないじゃない?ヤマト君が揚げてるんだから、どれも同じだよ。」
 「それでも、それが良かったんですよ。返して下さい。」
 
 それを聞いて、アリシアは一口で天ぷらを食べてしまった。

 「あ~~~~!?何で食べてしまうんですか?!」

 イリアは右手で美しい赤い瞳を覆い、俺の横に居たターニャさんは、「チッ。」と、三大貴族らしからぬ舌打ちをした。
 え?何?どういうこと??もしかして、何かした??

 「あれ?何か少しこの天ぷら味がおかしいよ?苦い……。」

 アリシアはかなり苦かったのか、水を一気に飲み干した。
 俺、焦がしちゃったか?揚げ色は問題なかったと思ったけど??

 「すまん。アリシア。焦げてたか?」
 「ううん。食感も前に食べたのと変わらなかったよ?焦げた、ジャリッとした食感じゃなかったし、味も焦げの味じゃなかったよ。それに……何かさっきから体が熱い……の。」
  
 急にアリシアは輝くアメジストのように瞳を潤ませ、トロンとした色っぽい目になる。
 え?なんで??どういうこと??まだ、真っ昼間だぞ??あ、いやいや、真っ昼間とか関係ないわ。なんで、そんな瞳で見つめてくるんだよ。
 対面から見つめるアリシアに俺は少したじろいでしまった。
 そのあまりの変わりように、何時もの事だろうと、関心を示さなかったララやエリもただ事では無いとジッとアリシアやイリアを見つめる。
 
 「………すみません。私のせいです。」
 
 その視線に耐えかね、イリアは手をおずおずと上げた。

 「……そんな事だろうと……思った。イリア、何したの?」
 
 ララはイリアにたずね、エリは席を立ち、コップに水を汲んで、アリシアの元に向かった。

 「おい。これって……媚薬を口にした時の効果と同じじゃないか?前に任務で同じ様な症状の子、見たことあるぜ。」

 エリはアリシアに水を飲ませ、触診で検温などをしながらイリアの方を振り返る。

 「はい……。媚薬を天ぷらの上からかけていました。」
 「イリアが?お前、媚薬なんかふりかけたら、天ぷらがダークマターに変わるかもしれないのにか?」

 エリはイリアの能力を知っているから突っ込む。
 そう。イリアには料理の出来ないスキル『ダークマタークリエイター』という物がある。
 実際、料理を作ろうものなら、どんな料理でも真っ黒な物体に変えてしまうという、レアスキルだ。
 粉末状の物をかけた。ではなく、料理をした。と判断されたら、それは瞬く間に真っ黒い物体に変わるのだが……。
 ちなみに、サラダにドレッシングなどをかける事は大丈夫だ。玉子焼きに悪魔の血こと、醤油をかけるのも大丈夫。粉をかける。が、コショウを出来た料理にかけると判断されたら、大丈夫なのかもしれないけれど……なかなか、微妙なラインのあるスキルだ。

 「いえ……私も、せっかくの天ぷらが黒炭になってしまうのは忍びないので、ターニャに協力してもらいました。」

 それを聞いて、なぜかターニャさんは胸を張った。
 この人も、たまによく分からないんだよな。イリアの事となると目の色を変えるのは相変わらずだけど……。

 「……それで……イリアが媚薬入りの……天ぷらを食べて、どうするつもり……だったの?」
 「いや。まさか、私が食べる訳ないじゃないですか?あれは、ヤマトに取り分けて食べさせようと思っていただけですよ。」
 「主様に食べさせて、どうするつもりだったんだよ。お前。」
 「それは決まっているではないですか?せっかく新居に引っ越して来たんです。まず生物としての本能。マーキングをしたいじゃないですか??」

 って、おい。マーキングってなんだよ。

 「新居の真新しいシーツに……愛する人と暮らすベッドに匂い……色をつけるとするならば、香水もいいですが、やはり、自分の匂いが一番いいでしょう?」

 イリアは訳の分からない理屈を並べる。

 「ま、まあな。そりゃ……なぁ。自分の匂いを染み込ませたい。ってのは分かる。」

 分かるのかよ?!エリもそっち側なのかよ!?

 「……うん。分かる。私も包みたいし……マスターの香りにも包まれたい。」

 ……ララもか~~~~~。ちょっとエルフっておかしな奴多いのか??

 「そうでしょう?お香を使うという案もあったのですが、お香だと、自分の匂いがお香に負けてしまうのではないかと思ったのですよ。それで、媚薬を食べさせようという魂胆だったのです。」

 ターニャさん同様、イリアは無い胸を張る。二人は仕草とか、言葉遣いも似ているんだよな。小さい頃から一緒にいるからなのか?どっちがどっちに似たのかな?
 それに、何が魂胆だったのです。じゃねえよ!真っ昼間から俺が食ってたらどうするつもりだったんだよ?!

 「……でも、今みたいに……媚薬を食べなかった事は、想定……しなかったの?」

 ララは当然の突っ込みを入れる。

 「そ、それは、想定していませんでした。ささっとお皿に取って回収すれば良いと思いましたし……私の近くに置いていれば大丈夫だと思っていましたから……。」

 イリア、頭良いけど、ぬけてるんだよな。

 「だいたい、大皿に盛られているんだから、場所なんて分からなくなるだろ?仕掛けるなら、大皿じゃなくて、最初から小皿に分けておけば、確実に主様の口に入っただろうによ。」
 
 エリのごもっともな意見にイリアとターニャさんは、なるほどと感心したように、首を縦に振っていた。

 「とりあえず、アリシアには水分を多く摂らせて、中から出してやらないとな。」
 「ありがと~。エリ~~。」

 相変わらず、トロンとした瞳のままのアリシアにエリは水を飲むように進める。
 それにしても、俺も一緒に食卓を囲んでいるのに、よく俺に媚薬を食わせるとかの話が出来るな……。エルフってこんなもんなの?清楚とか純情とか思ってたけど、実際には違うのか?イリアには変なイメージを持たないで。みたいな事は言われたけど……。
 よく考えたら、俺の存在って案外、空気なんじゃね? 
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