揚げ物、お好きですか? 第二部

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完成!新店舗!!

完成!新店舗!! 3

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 空気と化した俺は、やんややんやと言い合うイリア達をよそに、うどんをすする。
 俺のどこがいいのかね?イリア達に比べたら、俺なんてかなり弱い。出来るのは料理くらいだし。財力は……あるか……。
 そう言えば、家族になったって言うけど、プロポーズはしてないよな。式も挙げてないし……。
 この世界はプロポーズとか結婚式とかないのか?アニメや漫画で見たような儀式もしてない。
 イリアの両親に紹介された時も『私の家族です。』とかいきなりだったもんな……。よく分からん。色々とすっ飛んでる。
 そんな事を考えていると、チリリリンとチャイムがなった。
 誰だ?まだ何か頼んでいたっけ??それとも、マーガレットか??まだ少し時間的に早いような気がするけど?
 まだ、やんややんやと言い争っているイリア達を置いて、俺は玄関のドアを開けた。すると、そこには、

 「やあ。ヤマト君。久し振りだね。元気にしていたかい?」
 「ヤマトさん。ご無沙汰しております。」

 見た目は幼いが、この世界を創るのに多大な影響を及ぼした魔王様。
 そして、その従者、イーシャさん。
 イーシャさんは、魔王様がおつくりになったホムンクルスだ。
 ……と、その横には……見慣れない女性が立っていた。
 イーシャさんより頭一つ小さな身長。肌の色はエルフより日本人の俺に近い。髪も俺と同じ黒。意志の強そうなキリッとした二重瞼の瞳は魔王様やイーシャさんと同じ赤。まあ、イリアとは少し違うのだが……。
 その他には、胸はイーシャさんより少し……大きい。それと、イーシャさんと同じように額の中心に小さな角が一本。この事から、この女性も魔王様がつくったホムンクルスだと言っていいだろう。魔王様のつくったホムンクルスにはみんな、鬼の様な角がはえている。

 「いらっしゃいませ。魔王様、イーシャさん、お久しぶりです。」
 「今日はアリシアから引っ越しの日だと聞いていたからね。引っ越し祝いを持って来たよ。うちで採れた果物達だ。悪魔の実は入っていないから安心したまえ。」

 魔王様は手に持っていたバスケットを俺に手渡す。悪魔の実と言うのは唐辛子の事だ。一号とか二号とか、とんでもない辛さのやつもある。

 「ありがとうございます。何時もすみません……。」
 「うん。いいよ。お互い様だ。それと、ヤマト君も気になっているようだから、この子を紹介するよ。11番目のホムンクルス。レイブンだ。」
 
 魔王様は俺の視線に気がついたのだろう。たずねる前に教えてくれた。

 「ヤマトさん。はじめまして、レイブンと申します。よろしくお願い致します。」

 レイブンさんはそう言った後に深々と頭を下げる。
 流石、魔王様の従者だ。下げる頭にもどこか風格がある。

 「はじめまして、レイブンさん。ヤマトです。こちらこそ、どうぞ、よろしくお願いします。さあ、こんな所で立ち話も何ですし、中へお入り下さい。」
 
 魔王様達を家の中に招き入れ、イリア達の居るリビングダイニングへ通す。
 応接間や客間もあるのだけれど、魔王様だ、うどんや鬼クジャクの天ぷらがあると知ったら食べると言うだろう。アリシアの状態も魔王様なら直ぐに治せるかもしれないしな。リビングダイニングに着く前に確認しておくか。

 「魔王様、今、ちょうど、遅めの昼食を食べていたところなんです。よろしければ、お食べになりますか?」
 「そうだったのかい?すまないね。そんな時にお邪魔してしまって……こんな事を聞くのは、厚かましいけど、ちなみにメニューは何なんだい?」
 「うどんと鬼クジャクの天ぷらです。」
 「へえ~。うどんか。うどんと言う事は、前にご馳走になった皿うどんと言うやつと同じように麺を揚げてあるのかい?」
 「いえ。皿うどんと違いますよ。太さも違いますし、麺自体が違います。」

 ラーメンに使う中華麺だったら、かん水、卵なんか入ってたりするし、ちゃんぽんの麺だと唐灰汁を使った物もある。前に出した物は、エンジェルポークのスペアリブを揚げて使ったパーコー麺を作ってみたくて、中華麺を試作した時に、ついでに皿うどんも作ってみようと思って作った物だ。

 「それは興味深いね。お願いするよ。」
 「分かりました。それと、俺からお願いがあるのですが?よろしいですか??」
 「何だい?僕に出来る事なら引き受けるよ。」
 「ありがとうございます。アリシアがちょっとイリアに媚薬を盛られまして……。」
 「ハハハ。こんな真っ昼間から何をやっているだい?君達は??」
 「お恥ずかしい話で申し訳ありません。」
 「いやいや、いいよ。実に面白い。元気があることは良いことだよ。アリシアの解毒は任せたまえ。」
 「ありがとうございます。」

 話し終えた頃、ちょうど、キッチンダイニングに到着した。ドアを開けると相変わらず、やんややんやとイリア達が言い争っている隣でアリシアは下着姿になっていた。

 「……これは、なかなかの状態だね。」

 魔王様は、イリア達の事を見て、少し呆気にとられている。

 「イーシャ。とりあえず、アリシアに服を着せて、レイブンは、僕のバッグからメガネを取っておくれ。」
 「「かしこまりました。」」

 二人は魔王様の命令で素早く動く。そして、魔王様達が来た事を知り、流石に魔王様に見苦しい姿を見せられないのか、さっきまで騒がしかったイリア達は黙り、魔王様達に挨拶をしていく。そんな中、アリシアは。

 「あははは……イーシャお姉ちゃんだ~。うふ……うふふふ。どうしたの?今日は、どんなご用?」
 「ご用も何もありません。アリシアが今日、引っ越しだと言ったでしょう?」
 「え~。そうだったかな??」

 媚薬ってのは酔うこうかもあるのか?酔っ払った時の状態になっていた。

 「そうです。それより、早く服を着なさい。こんなだらしない格好、ヤマトさんに見せ続けては、嫌われてしまいますよ。」
 「それは……嫌だけど……暑いよ~。イーシャお姉ちゃ~ん。」
 「こら。じっとしていなさい。」
 
 イーシャさんは悪戦苦闘しながら服を着せようとする。……が。

 「イーシャお姉ちゃんも脱ごうよ~。」

 アリシアはイーシャさんに抱きつき、服を脱がそうとする。

 「ちょっと……止めなさい。アリシア。」

 イーシャさんは抵抗し、脱がされないように、アリシアを抱きしめる。
 それを見た魔王様はすかさず、アリシアの元へ近づき。

 「イーシャ、そのままアリシアを抱きしめたまま、屈んでおいてくれ。さあ、アリシア。口を開けてごらん。」
 「あっ。魔王様だ。こんにちは~。あ~ん。」
 「はい。こんにちは。少し、目も見せて。」
 「は~い。」

 魔王様は素早くアリシアの口の中、瞳、首筋に手をあて検温した後、ぶつぶつと口にする。

 「これはなかなか、手の込んだ媚薬を作ったもんだ。『ファイヤーウルフの肝臓』『シナナメ草』『ミルの実』その他にも何種類も使われている。ここまで複雑に調合された媚薬は存在しない。よって、解毒魔法も存在しない。……か。イリア君、やってくれるね。」 

 魔王様はぶつぶつと言う。
 解毒魔法が存在しない?いったいどういう事だ??媚薬の効果も魔法で解けるのか?本来なら??
 あっ。前にイリア達が『隻眼のワイバーン』の話をしてくれた時と同じって事??

 「すまない。レイブン。紙とペンを。」
 「はい。魔王様。」

 魔王様はレイブンさんから紙とペンを受け取りメモをとる。

 「レイブン。今、メモした物を買って来ておくれ。」
 「かしこまりました。」
 
 レイブンさんは、一礼した後、足早に家を出て行った。
 どうやら、必要な物があるようだ。今、うどんを茹でたり、天ぷらを揚げたら冷めたりするから、しばらく待つか。
 でも、魔王様はよく媚薬に何が使われているか分かるな?
 落ち着いたイリア達もアリシアに服を着せるのを手伝っている事だし、聞いてみようかな。

 「魔王様。魔王様は何故、アリシアに使われた媚薬の材料が分かったのですか?」

 メガネを外し、ケースに入れながら、魔王様はこえる。

 「ああ。それはね。このメガネで見るからだよ。」
 「メガネ?」
 「そう、このメガネはマジックアイテムなんだよ。僕、専用のね。」
 「専用?そんなのもあるんですか??」
 「うん。あるよ。君にプレゼントした、疾風の靴は魔力を通さなくても発動するマジックアイテムなんだけど、このメガネは、僕の魔力を通さないとただのメガネなんだよ。覗いてみるかい?」
 「はい。」

 俺は魔王様からメガネを受け取り掛け、アリシアに近付いた。

 「アリシア。すまないけど、口を開けてみて。」
 「わかった~。あ~ん。」

 アリシアの口の中を覗いても、ただ口の中の景色が広がるだけだった。本当にただのメガネ。いや、度の入っていない伊達メガネだ。
 
 「何にも分かりませんでした。」

 俺はメガネを外し、魔王様に返す。
 
 「そうだろう?僕、専用だからね。他の人が魔力を通しても何も見えない。」
 
 あ、よく考えれば俺、魔力が無かったんだわ。魔王様も忘れてるみたいだけど。

 「僕が魔力を通すと、君達には見えないけど、僕には媚薬や毒なんかに使われている材料とそれを打ち消す材料が分かるんだよ。今回は、食事と一緒に摂取したという事だから、口の中の残留物を調べたって訳だね。後は、目が充血していないか?とか、体温の変化を調べたんだ。瞳の変化や体温は色んな症状を教えてくれるから、使われた材料の裏付けにもなる。」

 へぇ~。流石、魔王様。俺はただただ感心するのだった。
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