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アジゴ編10
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ラインを底まで出さず、サビキ仕掛けが少し見えなくなるまで、ラインを出す。そして、またゆっくりとシャクる。すると、反応は直ぐにあった。
やった!アジゴだ。同じ様な感触なのに、やはり、……堪らない。
それから、表層が釣れなくなると、底まで落としてみたり、底から少し上にあげて、中層を狙ってみたりした。
アジゴはコンスタントに釣れ、休むのも忘れ、釣りに没頭する。
どの位入っているのだろう?クーラーボックスを覗いてみると、氷水の中にアジゴが所狭しといた。
こりゃ、凄い!こんなに釣って食べれるのか?と思いつつも、釣りに戻る。
僕はこの時、自分が自分自身思っているよりも欲張りだと知った。もっと釣りたい。もっと釣りたい。と思ったから。
ゆっくり、ゆっくりとシャクる。
すると、今度は変な?いや、アジゴとは違う微妙なアタリがあった。
最近だけ、コツコツっとアタリがあった後は、ただ重いだけ。
ん?逃げたのかな??と思って上げてみると、変な魚が釣れた。
口が大きく、身体の割には頭がデカいような……。少し赤みがかった小さな魚。
なんだ?これは??見たことない魚だ。
僕が不思議そうに見ていると、島田社長が言った。
「おっ。キンギョば釣ったばいね。おめでとう。」
ん?キンギョ??
……え?キンギョって海にも居るの!?
僕が不思議そうに、その魚を見つめていると、ヨシさんは教えてくれた。
「ネンブツダイだね。こっちでは、キンギョって言ったりするけど。」
あ、あぁ~。
びっくりした。本当にキンギョの仲間かと思ったら、違う魚だったんだ。
「この魚は食べれるんですか?」
食べれる魚なのか気になって僕は聞いた。
「うん。食べれるよ。すり身にして鍋とかに入れて食べたら美味しいらしいよ。」
「うんうん。そぎゃんらしいね。」
らしい?という事は、二人は食べた事ないのだろうか?持って帰って良いのだろうか?そう、疑問に思えた。
「この魚、持って帰って良いんですかね?」
僕の問いに二人は考える。
「釣りではよく釣れる外道なんだけど、すり身にする量ってほど、なかなか釣れないんだよね。だから、俺達はリリースしてる。」
「そぎゃん。何気に量は釣れんとよね。だけん、リリースで。」
二人の言う通り、なんか残念な気もするけど、僕は初めてのリリースをした。
そんなに釣れないのかな?疑問に思っていたげど、僕は二人が言った事を体感するとこになった。
確かに、二人の言う通りだった。アジゴが十釣れる間にキンギョは一釣れない。単に釣れないだけなのかもしれないけど……。でも、少しでも、すり身にして食べたらいいのにとも同時に思った。
黙々と考えながら釣っていると、今度は少し強いアタリがあった!
おぉ!?今度のは少しサイズが良いのかもしれない!アジゴとはちょっと違う!
ワクワクしながら上げてみると、今度は黒いのが釣れた。
よく見るとナマズ?ヒゲもはえてる。
ハリから外してよく見てみよう。そう思い、タオルを巻いて、魚を取ろうと思った瞬間。
「ヒロ!待って!!」
トイレに行って留守だった、ヨシさんの一言で、魚を触ろうとした手は止まった。
「あ~。良かった。危うく刺される所だったよ。」
ヨシさんは心底安心したようだった。
「これはゴンズイって言ってな、背びれと胸びれに毒を持ったトゲを隠し持ってる魚なんだ。」
「わ!?瀬高、ギュッギュば釣ったとね!?刺されんかったか!?」
同じくトイレに行っていた、島田社長も駆け寄ってくる。
どうやら、凄く危ない魚だという事が、二人を見て分かった。
毒持ってる魚って、簡単に釣れるんだ……。
ヨシさんは、フィッシュグリップとペンチを使い、ハリからゴンズイを外して、毒針を見せてくれた。
自然にありすぎて、普通に見たら、毒針なんかどこにあるの?と思えるくらいに分からなかった。
危なっ!と思いつつも、食べれるのかは気になる。不思議な事に。
「ゴンズイって食べれるんですか?」
二人はキンギョの時と同じような反応をする。
「美味しいらしいよ。毒針を取って、内臓なんかも取って、天ぷらや味噌汁、蒲焼きなんかにしたら美味しいらしい。」
「そぎゃん。味は凄くよからしか……。」
らしい。という事は、リリースなんだな。僕はゴンズイを海に返した。
リリースした後で聞いた話なのだが、ゴンズイは死んでも毒は生きているらしく、リリースせずに放置された魚を迂闊に触って大変な目にあった人がいるらしい。食べるのが目的でなければ、リリースすべきとの事。
ゴンズイは『ゴンズイ玉』といわれる程、集団で居るらしく、「一匹釣れたら、また釣れるばい!」という島田社長の言葉に焦りながら釣った。
釣っているうちに、気が付けば、餌も殆ど無くなってしまった。
少し休憩しようと、椅子に座り、お茶を手に取り、空を見上げる。見上げた空には、星が綺麗に瞬いていた。
僕が住む街も、田舎だ。星もある程度、綺麗に見える。しかし、それよりも、明らかに綺麗に見えた。街の灯りが少ないからなのか、空気がよどんでないからなのか、そんな事は分からなかった。
分かっている事は、一つしか無かった。ただ、ただただ、夢中で釣った。何を思い悩んでいたのかも、考える暇も、思い出す暇もなく……釣った。元々、何を悩んでいるかも分かってはいないが……。
そして、気がつけば、頭の中はクリアーになっていた。目の前が開けた感じがした。溜まっていたモノが少し溶けたような気がした。分かっているのは、一心不乱に釣りをしただけ。
そのせいなのだろうか?星がこんなに綺麗に見えるのは……。汗の出そうな、じんわりとした熱気も、さらりと吹く潮風が、心地よくしてくれた。
心を洗われ、清々しい気分で、視線を目の前に戻す。仕掛けを、そのまま海底に落としたままだったのを思いだし、ロッドを手に取った。すると、何かに引っかかったのだろうか?ロッドは曲がり、ラインが張ったまま、上がってこない。
それを見ていたのであろう、島田社長は、さも可笑しそうに近寄ってきた。
「瀬高~。とうとう、地球ば釣ったばいね。おめでとう。どぎゃんね、引くね。」
明らかな悪意のある表情で、浮かべる笑みだ。口角を上げて、ニヤニヤと……。せっかくの清々しい気分が台無しだよ。まったく!
それを、苦笑いしながら見ていたヨシさんが、助け船を出してくれた。
「ヒロ。貸してみな。根が掛かりした時は、張ったラインを、パッと緩めてやったりしたら取れたりするんだよ。ラインを手で引っ張って、離してみるとか……。」
ヨシさんは何度か同じ動作を繰り返した。すると、さっきまで張っていたラインが緩んだ。
「よし。取れたぞ。」
「ありがとうございます。」
流石、ヨシさん!ただの野次馬に来ただけの人とは違う。僕がお礼を言い、ロッドを受け取ると、島田社長は取れたのが悔しいのか、ケッと言わんばかりに悪態をつき、肩を揺らしながら、自分の場所へ戻って行った。その様子は、どこかの、アニメや漫画に出てくる、やられキャラのような小者臭を、漂わせていた。僕とヨシさんは、その後姿を見ながら、苦笑いを浮かべ、釣りを再開した。
ふと思った。今日、本命のアジゴは釣ったが、一回に釣り上げる匹数は一回につき、一匹しか釣り上げていない。そう、まだ多点掛けを出来ていないのである。相変わらず、二匹、三匹と時にはサビキ全部に掛ける、ヨシさんにコツを教わる事にした。
「ヨシさん。僕、まだ多点掛けを出来ていないんですけど、何かコツってあるんですか?」
ヨシさんは、聞かれた事が嬉しいのか、丁寧に教えてくれる。
「ヒロは直ぐに釣れたら上げちゃうだろう?それを、少し待って我慢するんだ。すると、他の針に魚が食いつくんだよ。釣れた魚が外れたり、仕掛けが絡んだりするデメリットもあるけど、多点掛けするには必要なテクニックなんだよ。あ。後、言い忘れていたんだけど、ただシャクってるだけじゃなくて、止めて、魚に食わせる『間』を作ってやるのも大事だぞ。」
「そうなんですね。少し我慢して待ってみます。ありがとうございました。」とお礼をいい、釣りに戻ろうとすると、ヨシさんとの会話が聞けていたのだろう、島田社長が自分の釣り場から、「瀬高には無理ば~い。単発で釣っときなっせ。」とまるで子供のような野次を飛ばしてきた。
僕は無視する事にした。釣って見返してやろう。とそう決めた。
さっきまで、底の方でアタっていたので、底の方まで落とす。そして、ゆっくりシャクる。すると、直ぐにアタリがきた。一回のアタリで、直ぐに上げるのではなく、少し待つ。その間、心地良いアタリは続いていた。しかし、ふっと軽くなってアタリは無くなった。上げてみると、魚は居なかった。
それを、ずっと見ていたのであろう、島田社長がまたもや、「ほら、やっぱり無理た~い。」と野次を入れてきた。
子供か!と思いながら、またもや、無視。
釣りを繰り返す。すると、また直ぐにアタリがきた。少し待つと、引きが強くなった。すかさず上げてみる。なんと、アジゴが二匹付いていた。初の多点掛けに成功した!
よし!と、これ見よがしにガッツポーズを決める。
やはり、じっと見ていたのだろう、島田社長は、悔しそうに、捨て台詞みたいな言葉を吐く。
「瀬高が二匹なら、俺は三匹掛けてやるたい。見ときなっせ!」
息巻いて、釣り始めた、島田社長。……だったが、少し様子がおかしい。ロッドが曲がり、ラインが張っている。
「しんちゃん、地球、おめでとう。」と憐れみを込めた視線を送りながら、ヨシさんは言った。そう、島田社長は、地球を釣ったのだった。
もう!とか、クソ!!とか言いながら、根掛かりを取ろうとしているが、取れないようだ。
諦めたのか、今度はロッドを真っ直ぐなるように引っ張っている。
そして、「切れてしもた。」肩を落とす、島田社長。自分の餌の入ったバケツを持ってこっちにやってきた。
「すまんかったな。俺は座ってビールば飲みよくけん、残りの餌、使ってはいよ。」と残りの餌をくれた。
それから、しばらく釣った。いつの間にか気がつけば、上がっていた水位もかなり下がり、餌も最後の一投と言う感じだ。
最後だから、かなり待ってみようと、素人ながらに思った。
ゆっくりシャクると、直ぐに魚のアタリがあった。それをしばらく上げずに待っていると、今までにはない、ガツンと!僕を海に引きずり込まんばかりの凄い力でロッドが曲がり、ラインが引っ張られた。
やった!アジゴだ。同じ様な感触なのに、やはり、……堪らない。
それから、表層が釣れなくなると、底まで落としてみたり、底から少し上にあげて、中層を狙ってみたりした。
アジゴはコンスタントに釣れ、休むのも忘れ、釣りに没頭する。
どの位入っているのだろう?クーラーボックスを覗いてみると、氷水の中にアジゴが所狭しといた。
こりゃ、凄い!こんなに釣って食べれるのか?と思いつつも、釣りに戻る。
僕はこの時、自分が自分自身思っているよりも欲張りだと知った。もっと釣りたい。もっと釣りたい。と思ったから。
ゆっくり、ゆっくりとシャクる。
すると、今度は変な?いや、アジゴとは違う微妙なアタリがあった。
最近だけ、コツコツっとアタリがあった後は、ただ重いだけ。
ん?逃げたのかな??と思って上げてみると、変な魚が釣れた。
口が大きく、身体の割には頭がデカいような……。少し赤みがかった小さな魚。
なんだ?これは??見たことない魚だ。
僕が不思議そうに見ていると、島田社長が言った。
「おっ。キンギョば釣ったばいね。おめでとう。」
ん?キンギョ??
……え?キンギョって海にも居るの!?
僕が不思議そうに、その魚を見つめていると、ヨシさんは教えてくれた。
「ネンブツダイだね。こっちでは、キンギョって言ったりするけど。」
あ、あぁ~。
びっくりした。本当にキンギョの仲間かと思ったら、違う魚だったんだ。
「この魚は食べれるんですか?」
食べれる魚なのか気になって僕は聞いた。
「うん。食べれるよ。すり身にして鍋とかに入れて食べたら美味しいらしいよ。」
「うんうん。そぎゃんらしいね。」
らしい?という事は、二人は食べた事ないのだろうか?持って帰って良いのだろうか?そう、疑問に思えた。
「この魚、持って帰って良いんですかね?」
僕の問いに二人は考える。
「釣りではよく釣れる外道なんだけど、すり身にする量ってほど、なかなか釣れないんだよね。だから、俺達はリリースしてる。」
「そぎゃん。何気に量は釣れんとよね。だけん、リリースで。」
二人の言う通り、なんか残念な気もするけど、僕は初めてのリリースをした。
そんなに釣れないのかな?疑問に思っていたげど、僕は二人が言った事を体感するとこになった。
確かに、二人の言う通りだった。アジゴが十釣れる間にキンギョは一釣れない。単に釣れないだけなのかもしれないけど……。でも、少しでも、すり身にして食べたらいいのにとも同時に思った。
黙々と考えながら釣っていると、今度は少し強いアタリがあった!
おぉ!?今度のは少しサイズが良いのかもしれない!アジゴとはちょっと違う!
ワクワクしながら上げてみると、今度は黒いのが釣れた。
よく見るとナマズ?ヒゲもはえてる。
ハリから外してよく見てみよう。そう思い、タオルを巻いて、魚を取ろうと思った瞬間。
「ヒロ!待って!!」
トイレに行って留守だった、ヨシさんの一言で、魚を触ろうとした手は止まった。
「あ~。良かった。危うく刺される所だったよ。」
ヨシさんは心底安心したようだった。
「これはゴンズイって言ってな、背びれと胸びれに毒を持ったトゲを隠し持ってる魚なんだ。」
「わ!?瀬高、ギュッギュば釣ったとね!?刺されんかったか!?」
同じくトイレに行っていた、島田社長も駆け寄ってくる。
どうやら、凄く危ない魚だという事が、二人を見て分かった。
毒持ってる魚って、簡単に釣れるんだ……。
ヨシさんは、フィッシュグリップとペンチを使い、ハリからゴンズイを外して、毒針を見せてくれた。
自然にありすぎて、普通に見たら、毒針なんかどこにあるの?と思えるくらいに分からなかった。
危なっ!と思いつつも、食べれるのかは気になる。不思議な事に。
「ゴンズイって食べれるんですか?」
二人はキンギョの時と同じような反応をする。
「美味しいらしいよ。毒針を取って、内臓なんかも取って、天ぷらや味噌汁、蒲焼きなんかにしたら美味しいらしい。」
「そぎゃん。味は凄くよからしか……。」
らしい。という事は、リリースなんだな。僕はゴンズイを海に返した。
リリースした後で聞いた話なのだが、ゴンズイは死んでも毒は生きているらしく、リリースせずに放置された魚を迂闊に触って大変な目にあった人がいるらしい。食べるのが目的でなければ、リリースすべきとの事。
ゴンズイは『ゴンズイ玉』といわれる程、集団で居るらしく、「一匹釣れたら、また釣れるばい!」という島田社長の言葉に焦りながら釣った。
釣っているうちに、気が付けば、餌も殆ど無くなってしまった。
少し休憩しようと、椅子に座り、お茶を手に取り、空を見上げる。見上げた空には、星が綺麗に瞬いていた。
僕が住む街も、田舎だ。星もある程度、綺麗に見える。しかし、それよりも、明らかに綺麗に見えた。街の灯りが少ないからなのか、空気がよどんでないからなのか、そんな事は分からなかった。
分かっている事は、一つしか無かった。ただ、ただただ、夢中で釣った。何を思い悩んでいたのかも、考える暇も、思い出す暇もなく……釣った。元々、何を悩んでいるかも分かってはいないが……。
そして、気がつけば、頭の中はクリアーになっていた。目の前が開けた感じがした。溜まっていたモノが少し溶けたような気がした。分かっているのは、一心不乱に釣りをしただけ。
そのせいなのだろうか?星がこんなに綺麗に見えるのは……。汗の出そうな、じんわりとした熱気も、さらりと吹く潮風が、心地よくしてくれた。
心を洗われ、清々しい気分で、視線を目の前に戻す。仕掛けを、そのまま海底に落としたままだったのを思いだし、ロッドを手に取った。すると、何かに引っかかったのだろうか?ロッドは曲がり、ラインが張ったまま、上がってこない。
それを見ていたのであろう、島田社長は、さも可笑しそうに近寄ってきた。
「瀬高~。とうとう、地球ば釣ったばいね。おめでとう。どぎゃんね、引くね。」
明らかな悪意のある表情で、浮かべる笑みだ。口角を上げて、ニヤニヤと……。せっかくの清々しい気分が台無しだよ。まったく!
それを、苦笑いしながら見ていたヨシさんが、助け船を出してくれた。
「ヒロ。貸してみな。根が掛かりした時は、張ったラインを、パッと緩めてやったりしたら取れたりするんだよ。ラインを手で引っ張って、離してみるとか……。」
ヨシさんは何度か同じ動作を繰り返した。すると、さっきまで張っていたラインが緩んだ。
「よし。取れたぞ。」
「ありがとうございます。」
流石、ヨシさん!ただの野次馬に来ただけの人とは違う。僕がお礼を言い、ロッドを受け取ると、島田社長は取れたのが悔しいのか、ケッと言わんばかりに悪態をつき、肩を揺らしながら、自分の場所へ戻って行った。その様子は、どこかの、アニメや漫画に出てくる、やられキャラのような小者臭を、漂わせていた。僕とヨシさんは、その後姿を見ながら、苦笑いを浮かべ、釣りを再開した。
ふと思った。今日、本命のアジゴは釣ったが、一回に釣り上げる匹数は一回につき、一匹しか釣り上げていない。そう、まだ多点掛けを出来ていないのである。相変わらず、二匹、三匹と時にはサビキ全部に掛ける、ヨシさんにコツを教わる事にした。
「ヨシさん。僕、まだ多点掛けを出来ていないんですけど、何かコツってあるんですか?」
ヨシさんは、聞かれた事が嬉しいのか、丁寧に教えてくれる。
「ヒロは直ぐに釣れたら上げちゃうだろう?それを、少し待って我慢するんだ。すると、他の針に魚が食いつくんだよ。釣れた魚が外れたり、仕掛けが絡んだりするデメリットもあるけど、多点掛けするには必要なテクニックなんだよ。あ。後、言い忘れていたんだけど、ただシャクってるだけじゃなくて、止めて、魚に食わせる『間』を作ってやるのも大事だぞ。」
「そうなんですね。少し我慢して待ってみます。ありがとうございました。」とお礼をいい、釣りに戻ろうとすると、ヨシさんとの会話が聞けていたのだろう、島田社長が自分の釣り場から、「瀬高には無理ば~い。単発で釣っときなっせ。」とまるで子供のような野次を飛ばしてきた。
僕は無視する事にした。釣って見返してやろう。とそう決めた。
さっきまで、底の方でアタっていたので、底の方まで落とす。そして、ゆっくりシャクる。すると、直ぐにアタリがきた。一回のアタリで、直ぐに上げるのではなく、少し待つ。その間、心地良いアタリは続いていた。しかし、ふっと軽くなってアタリは無くなった。上げてみると、魚は居なかった。
それを、ずっと見ていたのであろう、島田社長がまたもや、「ほら、やっぱり無理た~い。」と野次を入れてきた。
子供か!と思いながら、またもや、無視。
釣りを繰り返す。すると、また直ぐにアタリがきた。少し待つと、引きが強くなった。すかさず上げてみる。なんと、アジゴが二匹付いていた。初の多点掛けに成功した!
よし!と、これ見よがしにガッツポーズを決める。
やはり、じっと見ていたのだろう、島田社長は、悔しそうに、捨て台詞みたいな言葉を吐く。
「瀬高が二匹なら、俺は三匹掛けてやるたい。見ときなっせ!」
息巻いて、釣り始めた、島田社長。……だったが、少し様子がおかしい。ロッドが曲がり、ラインが張っている。
「しんちゃん、地球、おめでとう。」と憐れみを込めた視線を送りながら、ヨシさんは言った。そう、島田社長は、地球を釣ったのだった。
もう!とか、クソ!!とか言いながら、根掛かりを取ろうとしているが、取れないようだ。
諦めたのか、今度はロッドを真っ直ぐなるように引っ張っている。
そして、「切れてしもた。」肩を落とす、島田社長。自分の餌の入ったバケツを持ってこっちにやってきた。
「すまんかったな。俺は座ってビールば飲みよくけん、残りの餌、使ってはいよ。」と残りの餌をくれた。
それから、しばらく釣った。いつの間にか気がつけば、上がっていた水位もかなり下がり、餌も最後の一投と言う感じだ。
最後だから、かなり待ってみようと、素人ながらに思った。
ゆっくりシャクると、直ぐに魚のアタリがあった。それをしばらく上げずに待っていると、今までにはない、ガツンと!僕を海に引きずり込まんばかりの凄い力でロッドが曲がり、ラインが引っ張られた。
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