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第ニ章︙魔法都市編
初討伐と昇格
しおりを挟むヒュンッ
レオンの顔のすぐ横を風の矢が駆け抜ける。
ワーウルフに直撃するも、あまりダメージは入っていなくて少し気を反らせた程度。
俺達は今、ワーウルフ親分に予想外に苦戦していた。
いや、俺もまさかここまで手こずるとは思っていなかった。
ワーウルフが親分が俊敏で動きが速い、そして他のワーウルフよりも基礎力が高いこともそうだけど、さらには俺が生成した火に囲まれているので、活動範囲も狭く、俺もワーウルフ親分に襲われないよう動きながら援護しなければならなくなった。
唯一の救いは魔法の火なので煙が出ていないことか。
いっそ俺の魔法で火を……いや、そうしたら周りのワーウルフが攻めてくるな。それにこのワーウルフ親分を倒さなければまた膠着状態になるかも。
結局、俺とレオンはこの親分を倒さなければならないのだ。
「レオン……」
「わかってる……このまま戦ってたら先に体力のないお前のほうが力尽きる。さっさと決着をつけたいんだが、この速さじゃ……」
体力がないは一言余計だ。
でも確かに、この親分の危機察知能力がずば抜けているのか知らないけど、すごく避ける、というか逃げるのが上手い。
お陰でこっちは集中力をゴリゴリ削られているし、レオンはすぐに反応して攻撃を防げるようにしなければならないので、避けられる可能性がある親分に向かって重い一撃を放つことができない。
……完全に沼に嵌まっていたこの状況を打破する方法がなにかあれば。
取り敢えず状況を整理しよう。
今の俺達に必要なのは素早さ。あのワーウルフ親分についてこれる速度が必要だ。
でも、そんなに都合よく突然力が湧いてくるなんて、漫画でもあるまいし流石に最強と謳われる俺でも無理だ。
でも、今のままじゃ親分を倒すことができない。
じゃあどうするのか。
「……グフフ」
「……なんだ、気持ち悪い笑い声あげて。気持ち悪いぞ。ほんとに気持ち悪い」
「なんかいもいうな!」
自分達が上まで行くことができないなら、周りを下げればいいじゃないか。
女子達が見てた韓国ドラマも、話を聞く限り中々にドロドロだったけど、やはり定番は主人公をズルして妨害するところだと思う。
俺は悪者ではないけど、相手を妨害するのは一つの立派な策略だから大丈夫。
「このせかいをうらむがいー。おれのしょーりのかてとなれ!!」
俺は有名ドラマの混合捨て台詞を吐きながら矢を連射する。
流石の親分も俺が突然狂ったと思ったのか、心なしか呆然とした様子を見せながらも避けている。
そしてレオンは俺の方を見て呆然としていた。なにをやっているんだ、さっさと動け。
「はやく、さっさとおやぶんをたおさんかい!」
「はあー!?お前その程度の妨害で仕留められるとでも思ってんのかよ!お前は馬鹿か?」
チッ……やはりレオンじゃ弱っちくて倒せないか。
しかし残念だったな。親分がたいそう暴れ回ってくれたおかげで、俺の計画が実行できるな。
と言っても、俺達の周りには魔法の火しかないけれど、俺には必勝法があるのだ。
「ウォーターハント!」
俺とレオンの周りだけ水浸しにしたあと、両手を上げて思いっきり弓を引き絞る。
狙うは地面。
俺は思いっきり火属性の魔力を込めた矢を地面に向けて放つと、今まで矢を放ってきて蓄積されていた、見えない俺の魔力が原料となり
盛大に爆発した。
「それで?」
「……んむ?だから、ワーウルフのおやぶんはたおした。にんむたっせーだ」
「なにがだ!?森の一部にクレーターができたことか?大体何故ワーウルフの亜種が出てきて、討伐するのにあたり一面更地になるのだ!!」
折角依頼を完了してきたってのに、ギルド長に怒鳴られるなんてひど過ぎる。
流石に頑張ったなくらいの労いの言葉を掛けてくれてもいいのに、こんなにお冠だなんて相当ストレスが溜まっていると見える。
あのあと俺達は、レオンが反射的に放った最大出力の斬撃と、それにより一瞬だけ稼げた時間により、間一髪でクロスが結界を張って事なきを得た。
このままでは色々まずいので、俺が水魔法でダバーッと火を消し一件落着したと思ったら、まさかのワーウルフ達が跡形もなく消えていた。
かろうじて残っていた親分の骨もダンジョンに吸収され、戦利品の爪だけが残されていた。
だから取り敢えずそれだけ拾って冒険者ギルドに報告に行ったというわけだ。
「はぁ。お前が散々暴れてくれたのがダンジョンで本当に良かった。ダンジョンならお前の魔力残滓を上手く活用してすぐに修復してくれるからな。不幸中の幸いといったところか」
「うむ、さすがおれ。ここまでよんでいたからな」
「……。」
無言で頭をはたかれた。
酷い、酷すぎる。ストレスが溜まっているからって俺に八つ当たりするのは大人、いや人としてどうなのか。
これはもう報酬上乗せして貰うしかない。
「それで、報酬についての話だが……おい、ここで食べ物を取り出すな」
「おなかすいたんだ。こどもなんだから、ごはんをぬくのは、けんこーをそこねるからダメだ」
俺は近くの椅子に座りポシェットから朝作ったかつサンドもどきを取り出すと、お行儀よく食べ始めた。
美味い。
因みに今ここにレイシアさんとレイクさんは席を外していて、レオンとクロス、あと俺の三人しかいない。
レイクさん達が不満げだったけど、クロスが一言言ったら大人しく引き下がった。クロスってばいつの間にかそんなに仲良くなっていたんだ。
「それで、報酬についての話だが、ワーウルフの亜種ともあってか、通常より報酬が高くなっている……」
腕を組み難しい表情で淡々と説明してくるギルド長。
俺は口いっぱいにかつサンドを頬張りながら頷き返事をすると、呆れたようにため息をつきながら説明を再開する。
「それと、今回亜種ワーウルフが出現したことにより、ダンジョンが飽和状態になっていたことが分かった。危うくモンスターブレイクが起こるところだったがお前のお陰でそれも防げた」
クロス曰く、モンスターブレイクとはダンジョン内の魔力が飽和して大量の魔物を生み出すことらしい。
とても対応が面倒くさいらしいんだけど、俺がダンジョンをズタボロにしたせいで魔力飽和状態がなくなったんだとか。
俺、自分でも知らないうちに凄いことしてた。
「これでお前達は晴れてB級昇格だ。さすがに亜種魔物とモンスターブレイクを未然に防いだのだからな。昇格せざる得なくなってしまった」
………俺は真の最強へまた一歩近づいた。
でもB級かー……嬉しいけど、なんか二番煎じって感じがして嫌だな。さっさと昇格しないと。
「まさかの最速で、お前に至っては最年少での昇格だが、本当にこんなにも早く昇格を成し遂げるなんぞ思わなかった」
一位。最速で最年少……まさに俺が求めていた冒険者生活というやつだ。それにしても初討伐任務で昇格できるなんて天才だよね。
いや、自画自賛じゃなくて、俺が最年少で最速だからね。
明日から同年代の冒険者から尊敬の目で……
そんなことをつらつらと考えていた俺は、目の前の話を半分ボーっとしながら聞いていた。
「………これで以上だ。まあ、とんでもないことをやらかしてくれたが、お前もレオナルドも一生懸命頑張ったんだろう。よくやった。これからは問題を起こすなよ」
ポツリと労いの言葉をかけられた俺はコクリと頷きクールに席を立つと、最後の一口であるかつサンドをゴクンと飲み込みさっさと退出するため出口へ向かう。
扉に手をかけた俺に何かを思い出したのかギルド長が声をかけてきた。
「お前達の最速昇格に興味を持った隣国の王族から、後日招待状が来るかもしれないから覚えておけ」
まさかな。
俺みたいなぽっと出の冒険者に、王族が来るわけない。
そう心の中で思いながら、俺は一応返事を返し冒険者ギルドを出たのだった。
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