カント・ドッグ・ハント

レウキッポスの禁秘たちの略奪

27 昨日の残りのアンパン牛乳

　500の瓶の中身はすでに三分の一程度になっていた。ピザもだいぶ無くなった。四分の一をこっち用として、そのうち五分の四を消費した。車の中で、1時間程度が経過した。
「まらかよぉ。たーれっとはいんねええのかいなぁ。」
　進藤のやつが、酔ってだぶついてやがる。弱えのに飲みすぎなんらよぉ。この後また俺が出動すると思うと、金属バットで後頭部をいきたくなる。そして、ぱっくり空いた頭蓋骨にイれてやんだ。進藤がすぐ酔うのに俺には全然効かないのが、納得いかねえ。
　体内にアセトアルデヒドばっか蓄積されて、頭ばっか痛くなるだけの状態にはうんざりさせられる。
　それもこれもあいつがさっさと帰って来ねえからだ。
「あいつじゃない？あの車。」
　瑠夏も、俺とおんなじで頭の中にエターナルを溜めるタチらしい。でも、そのおかげで助かった。あいつのマジェスタの後ろをつけさせて、ぴったり事務所の車一台分後ろに留める。俺は、脱ぎ捨てたピザコスチュームから、ボイスレコーダーを弄り、取り出した。そして、ジャケットの内ポケットに忍ばせ、ポッケから手を抜き出す間に人差し指を録音ボタンへ滑らせ弾いた。
　あとは、LSD。そんなに要らないってほど胸ポケットに忍ばせる。念には念をって事で。捕まった時、一気に舌に乗せて、今まで見たこともない幻覚に襲わせる気だ。その方が豚箱より断然マシってんだ！
　あいつがマジェスタのドアを開けて、降りてくる。チャンスは一回、しっかりあいつの後ろをつけてやるんだ。
　あいつがドアを閉めて、すぐそこの事務所へ向かうのを確認して、俺もすぐにダイナのスライドドアを静かに開けて早足で後ろについた。
　事務所のスライドドアの前にあいつは立つ。その後ろに俺は立った。
　あいつはドアに手をかける。俺も胸ポッケに手をかけた。チャンスは一回。3カウントでドアが開く。だから3カウントで後ろからタックル。と同時に、鼻と口を抑えろ。左手が鼻、右手が口。左の胸ポケットから出したLSDが、今は右手にあるから、右手が口だ。
　3カウントで、アセトアルデヒド漬けの肉体に命令をかける。大丈夫。アルコールでだぶついていても、成功オッズは25/1ってとこだ。4パーセントもあれば上出来。俺は、始まるカウントに集中する。
　1……。2……。3！