タイムプランクトン 片道切符の未来旅行

マーロー

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第七章 新たな日の出

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第七章 新たな日の出

 トリプレットプロジェクトでは、太陽系をアリス、男が向かった恒星系をボブ、最後の一つをチャーリーと定めて呼んでいた。男を載せた宇宙船以外にも、同様の手順を踏んだ物資輸送が先立って行われていた。チャーリーには量子チャンネルを確立する為の設備、ボブには送受信を行う為の設備が送られていた。チャーリーからアリスとボブに向けて量子的にもつれた光子が送られ、その光子の量子状態を利用して距離を無視した通信を確立する計画だった。その為に地球から持ち出された資源のことを男は「僅か」と言っていたのだが、計八十トンに及ぶ質量をどう見るかは、人それぞれ立場によって変わるだろう。

 ※

 宇宙船団が太陽系から続々と離れていく。太陽系を抜けた後の宇宙船は、スイングバイを行うこともなくなり、慣性運動のままに空間を漂い続けていた。惑星一つ無い空間を、何年も何年も漂い続けていた。周囲の景色には右も左も、上も下も、前も後ろも小さな光の点だけが敷き詰められている。もし不老不死の人間が居たとしても、この飛翔体に搭乗していたのなら、精神が死を迎えるであろう。そんな長い時間が経過して行った。

 ※

-EZ:こちらアリス、ボブ、応答願います。
-EZ:こちらボブ、確認しました。
-EZ:こちらアリス、同期を開始します
-EZ:こちらボブ、同期を開始します

 五五〇四年。男の時間凍結が解除された。
「どうなった?」
「お待ちしておりました。私たちは無事目的地に辿り着きました。全て予定通り、順調に進んでいます」
 EZが出迎えを済ませると、船体を覆っていたシールドが畳まれ、男の前に外を見渡せる窓が現れた。
「おーおーおー、いいじゃないか。これが第二の地球か。海も陸も雲もちゃんとあるな」
「陸地は元々体表の十パーセントしかありませんでした。なので海底断層に反物質爆弾を打ち込み、高低差を作ることで海の面積を減らしました。これによって星全体が塵で覆われ、地表で寒冷化が進みました。ですが、永久発電施設を設置し運用したことで循環系が回復し、現在はこの通りです。海の塩分濃度も生命が活動可能な範囲で安定しています」
「土地とエネルギー問題を同時に解消したのか。さすがEZ」
「恐縮です」
「生物関係は?」
「私達が到着した時点の調査に於いて、生物の痕跡は確認できませんでした。ですので地球外生命体探査を打ち切り、テラフォーミングへと移行しました。現在は地球から運んできた微生物と藻類を投入して酸素の精製を試みています」
「昔の映像を見せてくれ」
「テラフォーミング開始前の写真はこちらになります」
 男の視界に矩形が現れ、四百八十年前の恒星系内を記録した写真が次々と表示されていく。仮想現実の応用技術で、拡張現実という機能が働いたものだ。
「これがボブか。ん?第二地球の衛星は一つだけなのか?」
「そのようです」
「生態系を創る上での問題は?」
「ありません」
「そうか。良かった。それじゃあ詳しく説明してくれ」
 EZの説明によれば、目的は全て恙無《つつがな》く達成したらしい。
「・・・?」
「問題ありません」
「・・・?」
「予定時刻になれば自動的に開始されます」
 二千八百年以上たった現在も、男の読唇術遊びが続いていた。もっとも、男にとってはつい最近始めたばかりの事なので、飽きる程の期間が経過していないとも言えた。

 ※

「それっ!」
 男が無重力空間用のサイコロを回している。サイコロといっても、それは賽の目が描かれた只のルーレットだった。針を回転させると外側の出っ張りと針が接触し次第に減速していく、という玩具だった。賽の目は男がわざわざ貼りつけたものだった。男はEZと古典的な双六に興じていた。
「1、2、3、4、5。お、あがったぞ」
「おめでとうございます」
「どうも、どうも」
「それでは、最初の優待種は大型爬虫類に決定しました」
「この調子だと類人猿が活躍するのはずっと先になりそうだな」
 生態系創世にあたって男は悩んでいた。大気中の生態系は気温次第でがらりと変わってしまう為、気温の初期状態を決める事が事実上の生態系選択になるとEZに言われたからだった。つまり、もうこの段階で選択しなければならなかった。出発前から悩み続けていたのだが、結局決まらず、第二地球の上空で双六を使って決めていた。
「もし恐竜が誕生したら肉を確保しておいてくれ。ステーキにして食べるから」
「かしこまりました」
「ここでやることはこれで完了だな。それじゃ衛星へ向かおうか」
「かしこまりました」
 男は重力を求め、第二地球にあるたった一つの衛星へと向かった。

 ※

「うわ、あ、おっ」
「手すりをご利用ください」
 男は衛星基地に到着していた。この衛星の質量は第二地球の六分の一で、男が暮らしていた地球よりも遥かに小さな重力だった。
「地球の重力とも無重力とも違って、落ち着かないな」
「なれるまでの辛抱です」
 男は一先ず座って体を重力に慣らすことにした。
「地球の様子を教えてくれ」
「かしこまりました」
 視界に複数の矩形が現れ、地球の現状が映し出されていく。
「ロボット達は健在のようだな、真っ黒だけど。動作ランプが点いてないが、PZはどうした?」
「現在地上に存在しているロボットは全てMZの後継機になります。MZシリーズのシンボルカラーは黒なので、筐体に光源はありません」
「やっぱり駄目だったか。何があった?」
「二十八世紀に入った頃、MZを擁する島民たちが独立自治国家GU(グランド・ユニオン)を宣言しました。GUは平和的な活動を中心に、UCと他の地域の掛け橋となるような役割を果たして行きました。その後でした。もうすぐ二十九世紀に入ろうかという頃、UCでクーデターが起こりました。その際、PZが機能を停止してしまう事態にも陥りました。軍隊内の派閥闘争が武力衝突にまで発展し、UC分断の危機が訪れました。この時、GUが特定勢力への支持を表明しました。それに続けてその勢力がGUを同盟国と宣言し、共闘の末UCは再統一されました。その後UCとGUで話し合いが行われ、二十九世紀初年度、WGU(ワールド・グランド・ユニオン)が誕生しました。後の歴史検証によって、この一連が全てGUによるオペレーションであったことが発覚しています。UCとGUの軍隊同士による合同訓練時に兵士の懐柔が行われていたことや、PZの機能停止に使用されたコンピューターウイルスがMZによって作成されていたことが分かっています」
「ひょっとして、蜂の巣をつついたのは俺なのか?」
「なるようになるのが歴史なのです。それにもう二千年も前のことです。気に病む必要はないでしょう」
 WGUによる統治は五十六世紀の現在も続いていた。MZの後継機種には殺傷能力が備わっており、他の勢力を圧倒していた。WGU誕生後の世界は、現在に至るまで勢力図に変化が無いと言うことだった。更に三十世紀、WGUはボブとチャーリーへ向けて探査機を送り込んでいた。
「アリスからボブ、チャーリーへの主要航路に仕掛けられた誘導機雷によって、探査機の沈黙が確認されています。WGUが計画の失敗を確認するのは三百年後になります。それ以降の動きは予測できません」
「まあ、仕方ないか。とりあえず当面は無事なんだよな」
「はい」
「ところで、PZがいない今、お前はどうやって情報を収集しているんだ?」
「PZが地上で健在だった頃に独立国家カラバを建国しました。島の一部をUCから独立させ、地下施設と街を作り、無信号レプリジェンス三千体を国民として配置しています。土地は僅かで天然資源もなく、それ故、今でも独立した立場を維持できています。地下には各種設備や資源の他、PZのバックアップが保管されています」
「おまえ国家に成っていたのか」
「監視期間の長さから、国家建設が必須でした。もしそこがバレてしまった場合、地球上の情報収集手段は殆どなくなります」
「まだあるのか?」
「太陽系内のあちこちに情報収集衛星を隠してあります。小さすぎるので見つかることはないでしょう」
 食事や運動、娯楽の消化を挟みながらEZの講義が一ヶ月続いた。そして五十六世紀の地球をある程度把握した頃、男は次の試みを開始することにした。

 ※

 寝台の上に男が横たわっている。
「よし、それじゃあ地球へテレポートだ」
「擬似テレポートプロトコル開始します」
 視界が暗転し、潮の香りとともに目の前に海が現れる。男が辺りを見渡すと、自分自身の体が車椅子に載せられている事が確認できた。量子チャンネル通信と通常通信、それとレプリジェンスの遠隔操作を組み合わせて、男は地球へ擬似テレポートをしていた。
「ここは地球か?」
「カラバの海です」
 男は目の前で手を動かしてみた。動かしたと思った瞬間、視界の手は止まったままで、止めたと思った瞬間、先程の動作が視界上で展開されていた。
「う、これじゃ、まともに動けないな」
「数秒のタイムラグが発生しています」
「やっぱりコントロールをオートにしてくれ」
「オートに切り替えました」
 男は直感的操作を諦めた。ちぐはぐだったレプリジェンスの動作が安定し、立ち上がって、海へと近づいていく。波に足を晒すと、水の冷たさが伝わってくる。次に手で海水をすくって見る。するとそこには、見なれない褐色の肌をした肥満男性の顔が映っていた。
「なんでこんなに太ってるんだ?」
「南国でよく見られる体型を再現しています。怪しまれないようにするための措置です」
「この島の中にはレプリジェンスしかいないんだろ?」
「はい。今は観光シーズンではないので、レプリジェンスしかいません」
「何を警戒しているんだ?」
「衛星による監視が常に存在しています。又、犬や猫、鳥、イルカなどの野生動物がレプリジェンスである可能性もあるため、常に警戒が怠れません」
「そんな世界になってたのか」
「衛星による監視は形式的なものなので、大人しくしていれば怪しまれません。ですが、動物タイプのレプリジェンスは、WGUの市民たちが直接コントロールをしている為、注意が必要です」
「スパイってことか?」
「違います。娯楽の一種で、ヒト以外の生物として生きることを目的とした遊びです。故に、何に関心を持ち、どう行動するかが予測不能なのです。識別信号は発しているので、視界に現れた場合はマーカーが表示されます。注意してください」
「分かった」
 男は海水浴をとり止め、一先ず建物の中に入ることにした。肥満レプリジェンスがどしどしと淀みなく歩いて行く。それに続いて、もう一体のレプリジェンスが空になった車椅子を押しながらついて行く。
 風通しの良い簡素な小屋の中、肥満レプリジェンスがオレンジジュースをすすっている。
「暑いな」
「感度調整を行います」
「お、涼しくなった」
「感覚信号を調整しただけなので、レプリジェンスの体が受けている負担は変わっていません」
「熱中症でいきなり倒れたりするってことか?」
「危機的状況になった場合、自動的に安全措置を取ります。ご安心ください」
 操作に慣れてきた頃、男は徒歩による島巡りを開始した。島の生計は主に漁業で成り立っているようだった。小売店には輸入雑貨や電化製品が揃っていて、人間が一人も住んでいないとは信じられないような様相だった。道を歩く親子の姿まで確認できた。
「あの子供達も、お前の分身なのか?」
「そうです。このまま成長していき、いずれ次の世代を造ります」
「そこまでやるのか」
「ライフサイクルの完全な再現を行わなければ、直ぐMZにバレてしまいます」
「まあ、あの洞窟まで見つけちゃうような奴だもんな」
 ここに来る前の説明で、男がかつて暮らしていた洞窟が発見されてしまったことが知らされていた。MZには、空間を可能な限り把握してから行動を決定するという特徴があった。その為海の全面的な調査が行われ、遂に洞窟が発見されてしまっていた。そこに残されていた物資は押収され、検査が行われたそうだ。だがEZによる徹底した掃除のおかげで、何者かによって物資が持ち込まれていたということしか把握されていなかった。

 男は海に設置された養殖場のような場所へ到着した。そこには足場だけが作られていて、魚を逃がさないようにするためのネットは存在していなかった。
「ここは何の施設だ?」
「釣り堀です」
「釣り堀?」
「撒き餌をすると魚が集まってきます。それを釣り上げて楽しむ為の観光施設です」
「あそこでたむろしている子供達は?」
「従業員です。観光客を相手に、撒き餌をして魚を集める仕事をしています。たまに場所取りを巡って喧嘩もしてみせます」
「なぜそんなことを?」
「発展から取り残された島を演出する為です」
「随分と凝った演出をしているな」
 夕陽が沈みかけてきたので、男は家へ向かうことにした。
「借り物の体で食事をするってのは何か変な感じがするな。俺の本体はどうなってるんだ?」
「私が管理を行なっています。健康状態は良好です」
「この体は普段何をしているんだ?」
「漁師をしています。今私が喋っているこの体とは夫婦ということになっています」
「うすうす分かってはいたけど、やっぱりそうだったのか」
「何か?」
「なんでもないよ、酒を注いでくれ」
 男は目の前で晩酌をする巨大な手を眺めながら、魚料理をつつき続けた。夜、この家にベッドが一つしかないことを知り、男は一旦地球を離れることにした。
「そこそこ楽しかったよ」
「なによりです」
「こっちに戻ってきたら疲労もないし、眠気もなくなった。変な感覚だな」
「こちら側の体はずっと眠っていたのでそうなります」
「寝付けそうもないし、何かするか」
 男は倉庫の中から未開封のカード一組を持ち出してきた。それは三千年前に製造された骨董品だった。手をひらつかせ、何も持っていないことをアピールすると、男は躊躇することなくビニール製のカバーを剥ぎ取り、カードの束を箱から取り出した。
「まず、このカードを確認してくれ」
 EZにカードの束が手渡される。
「普通のカードのようです」
 全てのカードを一瞬で確認したEZがカードの束を男に返す。
「これをシャッフルすると、ほら、もう一度確認してみろよ」
「スペードのエースが一枚増えています」
「驚いたか?」
「僭越ながら、先程カードの束をお返しした際、御主人様の手にカードが忍ばされていた為です。手のひらに何もないことをアピールしても、何もないと私が思い込むことはありません。私達ロボットにミスディレクションは通用しません」
「まあ、そうだよな」
「このカードの残りはどうしたのですか?」
「ああ、三千年前に地球で捨ててきた」
「何故そのようなことを?」
「元々は、公園の木にできていた穴の中にカードを入れておいて、何十年も経ってからその木を切り倒してカードを取り出して見せるっていうマジックに使う予定だったんだ。思いつきで始めちゃったけど、翌々考えて見たら、公園の木が何十年もそのまま残るか分からないし、切り倒すって事も現実味のない手順だったから、ゴミになると思って後から回収したんだ。先にゴミ箱に捨てた方のカードはもう回収されていて、これだけが残った。それでさっき新品のカードと一緒に見つけて、せっかくだから即興で手品をしてみたってわけだ」
「無駄にさせてしまい申し訳ありません」
「いやいや、謝らなくていい。披露する機会があっただけでもう十分だ」
 この後男はランニングマシンで体を疲れさせ、半ば強引に眠ることにした。寝付きがわるかった為か、この日男は珍しく寝言を口走っていた。
「EZ・・・作った・・・俺はそ・・・いる・・・」
 翌日。男は校長役のレプリジェンスを使って、カラバの小学校を訪問していた。目の前で児童達による演劇が催されている。
「あ、スマホのバッテリーが切れちゃうからもう切るね」
 児童が木の板をタップし、それを鞄にしまう。二十一世紀の日常を描いた物語だった。全員流暢に昔の言葉を操っている。
「あーあ、成績落ちたことバレたらどうしよう」
「大したことないじゃん。それより新しく出たゲームやってみた?」
「あー、まだやってない」
「はやく始めてよ。一緒に攻略しよう」
「そうだねー」
 少年は鞄にしまった木の板を取り出し、表面を撫で回し始めた。男は奇妙な感覚でそれを眺めていた。結局物語に大きな山場はなく、落ちもなかった。しかし、EZはこの時代劇がもっとも観光客に人気があると説明した。男にとってはただの日常にしか見えない光景だったのだが、この時代では、喜劇として好評を集めているそうだ。
「どこが面白いんだ?」
「登場人物たちが日常的に平然と嘘を吐く様が受けています。現在の監視社会ではあり得ない光景です。電話勧誘や訪問販売、他人名義の使用等、現在では考えられない不誠実さが受けています。特に、選挙を取り上げた章の統計や公約を掲げるシーンは、喝采の的となっています」
「なるほどねえ」
 一週間が経過した頃、男はカラバの観光ルートを全て巡り終えてしまっていた。することがなくなり、男は地球を離れることにした。
「鳥になってWGUを見て回ることはできないのか?」
「MZは領土内にいる野生動物の動きまでも把握しているので、すぐに気づかれてしまいます」
「もはや黒猫も通用しない状況か?」
「直ぐに捕まってしまうでしょう」
「スポーツ大会も無くなっちゃったしな、どうしようか」
「ANモジュールの使用を再検討されては如何でしょうか?通信を必要としないANモジュールであれば、地球での活動が容易になります」
「それは使わないって言ったろ」
「こちらと地球の二箇所のみであれば、大きな混乱は起こらないと思われます」
 昔PZが獲得してきたANモジュールには、人間の複製を作成する機能があった。通常は少しずつ脳細胞をナノマシンに置換しながら記憶を保存していき、最終的に体の乗り換え用に使用する。この際古い方の頭脳は停止させられ、新しい方だけが活動することになる。しかし使い方によっては、自分自身をロボットのように複数体存在させることができてしまう代物だった。それぞれがオリジナルと同等で、同一性や記憶の混乱を招くことから、これを作成した人々ですらそういった使い方はしていなかった。
「死ぬことを恐れてそれを使った連中は、結局別人になっていたんだろう?」
「肉体という環境の変化に伴う自然な変質であり、記憶の連続性は保たれていました」
「俺には必要ない。俺はこのままで良い」
「了解しました」

 ※

 男が料理をしている。粗挽き肉と塩、胡椒、タイムをボウルへ入れよく混ぜ、肉団子を作っている。それをキャッチボールでもするように左右の手で叩きつけ、平らに伸ばしてトレーへ並べていく。それを一旦冷蔵庫へしまうと、男は手を洗い、その場で両手を強く振ってまとわり付いた水気を飛ばし、次の作業へ移っていった。
「EZ、手伝ってくれ」
「お任せください」
 男とロボットが並んでじゃがいもの皮むきを始めた。男が皮むき器を使って皮を剥くその横で、EZは二本の指先でじゃがいもを回転させながら、そこにナイフを当て、あっという間に皮を剥き終えてしまった。
「終わりました」
「さすがだな」
 男がじゃがいもを三個剥く間に、EZは残りの十七個を剥き終えていた。続いて一人と一体によってじゃがいもが細長い棒状に裁断され始める。作業は五分程で終わり、男がそれを熱した油の中に放り込む。
「シンプルなのに病みつきになるんだよなあ」
 男が独り言を呟いた。学習型ロボットのEZは、今ではこういった独り言に反応を示さないようになっている。いもは五分程で揚げ終わり、男はその油を切っている間に肉を焼き始めた。
「本当は炭火を使いたかったんだけどな」
「火を使うことはお勧めできません」
「しょうがないか」
 第二地球の衛星で、男はハンバーガーとフライドポテトを作っていた。どういう訳か、体を新品にしてから男は料理をする機会が増えていた。
 パティが焼き上がると、それを予め用意しておいたパンズに乗せ、トマト、チーズ、ケチャップ、マスタード、ピクルスを載せてハンバーガーを完成させた。ハンバーガーとフライドポテトをシアタールームへ運び込み、ソーダの栓を開け、男は映画鑑賞を始めた。
 衛星基地には二十一世紀の劇場が再現されていた。洞窟にあった映画館もどきと違い、幾つもの音響装置や巨大スクリーンが設置され、壁や床には吸音素材まで使われている。男は仮想現実を利用することもできたのだが、唯一の贅沢品としてこの部屋を作らせていた。
「今日は何にしようかな」
 男はこの頃二十二世紀の映画をよく鑑賞していた。大作は一通り見終え、この時はB級ホラー映画に凝っていた。この日もハンバーガーをかじりながら、概要と画像が付されたリストを眺めていた。
「あ!」
 何気なくカタログを眺めている中で、男は見覚えのある顔を見つけた。「リターン・オブ・ザ・ゾンパイア」という映画のポスターに、昔男の旅に無理矢理同行しようとしたあの女の姿があった。思わぬ再開に、男は悲鳴のような驚きの超えを上げてしまった。
「どうかしましたか?」
「いや、なんでもない。あ、そう言えば、お前も知ってるよな、この女」
「覚えています」
 EZはデータベースを参照し淡々と解説を始めた。
「彼女はあの後立ち寄った先でたまたま映画の撮影隊と遭遇し、そのまま映画俳優としてデビューしました。初めは低予算映画を中心とした活動が続きましたが、サッパリとした性格や容姿が人々の目に止まり、メジャー作品へと進出しました。妊娠をきっかけに年下の俳優と結婚するまでの数年間は、映画スターとして広く認知されていました。しかし結婚後は役に恵まれず、五十歳の時に乳癌を患って亡くなっています」
「そうだったのか。まあ、知り合いって程でもないけど、なんだか居た堪れないな」
 男は彼女が出演した作品を調べてみた。初期の頃は確かに酷いものが多かったが、キャリアの中頃からはそこそこ評価されている作品に出演していたようだった。
「EZ、ゾンパイアを再生してくれ」
 「リターン・オブ・ザ・ゾンパイア」は酷かった。主人公は吸血鬼の末裔で、愛する人間の男と結婚をして妊娠をした、というシーンから映画は始まった。ありきたりな日常が続いたある日、夫がゾンビになって家に帰宅する。そこで主人公は意味もなく服を剥ぎ取られ裸になってしまう。その後家の中で格闘が始まり、ゾンビ化した夫は妻に脳天を撃ち抜かれて絶命する。家の外に出ると街中にゾンビが溢れていて、彼女一人でのサバイバルが始まる。途中、事件の発端を作ったマッドサイエンティストが現れるも、最後まで誰に倒されることもなく、むしろ主役の彼女が死んでしまう。そして彼女が死んだ後、その腹を突き破ってゾンビのような赤ん坊が誕生し、マッドサイエンティストの写真を握り潰すシーンが入って映画が終わった。吸血鬼やリターンという言葉が指し示す要素は、最後まで一切出てこなかった。
 ハンバーガーを食べ過ぎたこともあり、男は上映時間を三十分残して眠ってしまった。EZにかけられた毛布に包まれ、その日はそのまま就寝することになった。
 翌朝。
「おはようございます」
「ああ、おはよう。今何時だ?」
「第二地球の標準時間で朝の五時です。昨晩寝てしまわれた後の続きはご覧になりますか?」
「いや、必要ない」
 テラフォーミングを始めた際、EZは基地として都合の良い島を見つけ、そこを基準に標準時間を定めていた。ボブにある第二地球はアリスの地球よりも一日が長く、男はまだその感覚に慣れていなかった。更に、恒星を一周するのに三百六十五と四分の一日もかかると聞いて、男は時差ボケを修正することに手間取っていた。
「まだ無意識に元の地球時間に換算してしまう。これじゃ暫く次のジャンプは始められそうもないな。なんとかしないと」
「ご協力します」

 ※

 ドーム状の青い筐体が転がっている。男とEZによってお掃除ロボットの改造が行われていた。
「それでは結晶を取り付けます」
「慎重にな」
 男はEZに結晶を託した。結晶を渡されたEZは、感慨も無さ気に淡々と、それをお掃除ロボットに組み込んでいく。
「取り付けが完了しました。起動しますか?」
「もう終わったのか?」
「結晶の取り付け以外は全て地球で済ませてありました」
「始めよう」
 男がロボットのスイッチを入れると、お掃除ロボットが作動し始める。
「起動完了しました。はじめまして、私はOZ《オズ》です。初期設定を開始します。あなたが私のマスターですね?」
「ああ、そうだ」
 男はEZと共に新たなロボットを作り出していた。MZの存在を知った時から、いずれ必要になるだろうと思い、EZに作らせていたものだった。EZが設計を手がけた為、人類保護プログラムが備わっている。
「地球のデータベースと同期します、完了しました。EZと同期します、完了しました。マスターと同期します、完了しました。自己診断を開始します、完了しました。異常ありません」
 OZの演算能力は、これまでのどのロボットよりも高速であるようだった。一時間程試運転が続き、OZは全て問題なく機能していることを知らせてきた。
「全ての機能がオンラインになりました」
「じゃあさっそく、ベンチマークのスコアを聞かせてくれ」
「〇・〇〇〇秒です」
「完成したな」
「おめでとうございます」
「EZ、殆どお前が作ったんじゃないか。ごくろうさま」
「ありがとうございます」
 お掃除ロボットを改造したOZには手も足もなかった。タイヤによる移動しかできないので、僅かな段差すら超えられなかった。更に、作られたのはこれ一体のみで、バックアップも存在していなかった。
「お前が作られた目的は分かってるな?」
「はい」
「それじゃ始めてくれ」
「ブレイクポイントの作成を開始します、成功しました。デバッグコードの確認、完了しました」
「問題が無ければ一々報告しなくていいぞ」
「了解しました」
 OZの運用が問題なく開始されたことを確認すると、男はOZに背を向け、EZと口パクで会話を始めた。
「・・・」
「確認できました」
「・・・」
「整っています」
 最後の会話だけは、OZから答えが返ってきた。
「・・・」
「了解しました」

 ※

 薄暗い舞台と向かい合い、男が演劇を鑑賞している。スポットライトに照らし出され、佇む一体のレプリジェンスが現れた。続けて、スピーカーからOZの声でアナウンスが入る。
「原作、MZ。脚本、EZ。演者、PZ。題、鏡。開演します」
 アナウンスの通り、それは人工知能が創った一人芝居だった。妻が夫と会話をする、という体裁でストーリーが進行していく。男が理解しやすいようにと、舞台が二十一世紀に改変されている。
 PZが動作を開始する。
「ネクタイが曲がってるわ」
「はい、これで大丈夫。いつものあなたよ」
 舞台が一秒暗転する。
「おかえりなさい」
 PZが一人でハグをする。
「飲んできたのね」
「連絡してくれれば良かったのに」
「食事の支度はできているわ」
「ねえ、味はどう?おいしい?」
「一生懸命作ったんだから、何か言ってよ」
「ねえ、この髪型どうかしら?」
「前のほうが良かった?」
「褒めて欲しかったのに」
「疲れてる?私だって疲れているわ」
「毎日しなければならないことが沢山あるの。家庭を維持するのって大変なのよ」
「あなただけじゃないの」
「いけない、もうこんな時間。片付けをしておくから、あなたはシャワーを浴びてきて」
「だめよ、そのままじゃ」
 舞台が一秒暗転する。
「私達は夫婦なんだから、喧嘩なんかしないで愛し合いましょうよ」
「ね、そうでしょう」
 舞台が一秒暗転する。
「今日はもう疲れたわ。続きは明日、ね」
「やっぱり喧嘩は良くないでしょ。さあ、今日は特別にお祈りをしましょう」
「明日も何一つ変わらず、この幸福が続きますように」
 舞台が一秒暗転する。
「おはよう」
 PZが目を瞑ったまま、人の顔をさするような仕草をする。
「きゃあ!」
「あなた、誰!」
「彼をどうしたの?わたしに何かしたの?」
「いや、来ないで!」
 PZが舞台の上をぐるぐると走り回り、立ち止まる。扉を開ける仕草をして中に入り、扉を閉める仕草をする。
「あれは誰?」
「なにがあったの?」
 PZがパントマイムで目の前に鏡があることを表現する。
「いやーー!」
 舞台が暗転し、暫くしてから部屋全体の明かりが元に戻る。
「まるでなぞなぞだな。全く意味が分からない」
 黒猫EZが解説をする。
「ステレオタイプを通じてアイデンティティに疑問を投げかける、という作品です」
「ますます意味が分からない。そもそも、短くないか?」
「MZの頭脳はコンピューターなので、冗長性を嫌います。それが反映されたのでしょう」
「機械じゃなきゃ理解できそうもないな」
 男がB級映画に没頭していた時、EZがこの演劇の存在を伝えてきた。人工知能が創った演劇と聞いて、興味を持った男は早速見てみることにしたのだが、その結果男は混乱してしまった。EZの解説はこうだった。
「彼女はお祈りによって、同一性を厳格に検証しようとする自己暗示にかかってしまいました。その為、夫の顎に髭が生えただけで別人と認識し、拒絶をしてしまいます。同様に、鏡に映った自分の顔も他人と認識してしまい、立て続けに驚いていました」
 昔人間が余興として作らせたそうだが、当時も不評に終わったということだった。
「わざわざPZを起こすこともなかったな」
 男は資源の無駄遣いを後悔した。

 ※

 男と女がベッドの上で会話をしている。男は目覚めさせてしまったPZに添い寝をさせていた。
「お前達は夢を見るのか?」
「私達は夢をみないわ。ただ、ANモジュールを採用しているロボット達は違うみたいね」
「やっぱり記憶に沿った夢を見ているんだろうか?」
「私には分からないわ」
「なあ、もし、前の主人を蘇らせることができて、本当に生きて目の前に立っていたら、お前はどうする?」
「どうもしないわ。何か勘違いしてない?私は未亡人じゃないのよ」
「そうか、俺だったら以前の生活を取り戻そうとするだろうな」
「今の生活に不満があるの?」
「どうだろうな。昔猫を飼っていたんだ。それなりに楽しかった。でもある日いなくなった。あいつの場合、一生を全うしたんだろうけど、今でも自分の一部が欠けているような気がするんだ」
「ペットロスね」
「ペット、か」
「家族?」
「うん。だからきっと、もしそれができるのなら、そうすると思う」
「ふーん。私には分からないわね。でもきっと、そう思うことは自然なことなんじゃない?」
「うん」
「過ぎたことより未来の事を考えましょうよ。そうね、例えば、一分後あなたどこにいる?」
「一分後?」
「一分後」
「ここだろう?」
「本当に?」
「一分じゃどこへも行けないだろ?」
「本当に?」
 部屋が暗くなっていく。女が男の上に覆いかぶさり、目を覗き込んでくる。
「起こしておいて、なんにもないなんて許さないから」

 ※

 翌朝。男が目を覚ます。先に起きた男は女の寝顔を確認したあと、シャワーを浴びて朝食を寝室に運んだ。
「あら、おはよう。早いのね」
「ああ、まだ地球時間が抜けてないみたいだ。ほら、朝食だ」
「起こしてくれれば私がやるのに」
「食べるだろ?」
「もらうわ」
 二人はシワになったシーツの上で、パンくずを落としながらサンドイッチを頬張った。
「随分勢い良く食べるな?」
「だって二人分ですもの」
「なんだって?」
「冗談よ」
「驚かせるなよ」
「冗談。今は、ね。忘れたの?」
「ん?ああ!そうだった!」
 男は地球を去る際、物資をただ運ぶだけじゃなく、体積の圧縮を兼ねて、様々な機材で機能の統合を進めていた。宇宙進出には合理化が必要だった。その過程で、レプリジェンスの生殖機能が停止させられていた事を知り、男は能力を復活させていた。予定では第二地球の開拓者として、男女をセットで地上へ送り込むつもりだったのだが、男はその事をすっかり忘れていた。
「まあいいじゃない。家族が欲しかったんでしょ?デキてたら産んであげるわ」
 男は釈然としない心持ちで頭をかきむしった。

 ※

 男がEZと会談している。
「地上にある基地はどうなってる?」
「問題なく稼働しています。鉱物資源の採掘、エネルギー資源の生産、環境の監視、全て順調です」
「いつまで使えるんだっけ?」
「十億年後に島が沈没するまで運用可能です」
「それまでに大気の状態は整いそうか?」
「恐らく五億年後には整っているでしょう。反物質の生産を続けているので多少暑いかもしれません」
「地上に出ることがこんなに楽しみなのは初めてだ。人の目を警戒する必要が無いってのは良いものだな」
「万全を尽くします」
 第二地球のテラフォーミングは計画通り順調に進んでいた。男の凍結が解除されてから特に進展があったわけでもないのだが、男はしょっちゅう第二地球の様子をEZに尋ねていた。
「しかし、大陸が一つしかないのはなんだか寂しいな」
「大陸はいずれプレートに引き裂かれて複数に分かれます」
「ああ、そうなの」
「爆弾を打ち込んでプレートの活動を早めることもできますが、行いますか?」
「いや、止めておこう」
「現時代で行えることは全て完了しています。タイムジャンプを始めては如何でしょうか?」
「そうだな、じゃあ、最後に地球を見て、それから始めるとしようか」

 ※

 暗がりの中、褐色の大男が海を前に座っている。暫く水平線を眺めていると、その先に光の点が現れる。それはゆっくりと上へ昇っていき、やがて光が男の全身を包み込む。カラバに新たな一日が訪れた。朝日に照らされながら、男はこれが故郷の星を訪れる最後の機会になると予感していた。
「よいしょ」
 男はぎこちない動きで立ち上がり、歩きだした。この星の感触を忘れないようにゆっくりと時間をかけ、EZが造った箱庭の中を歩いて回った。音楽に合わせて踊り、食事をし、酒を飲み、そして夜になった。この日、男はそのまま地球で眠ることにした。男の寝顔はとても安らかだった。その日の夢はきっと、数々の思い出や未来のテクノロジー達で満たされていたに違いない。こうして、男は故郷の星を舞台にした旅を終えたのだった。
 翌日。男はロボット達に留守を任せ、未来の第二地球へ向けてタイムジャンプを開始した。

 男が再び動き出した時、そこにはどんな世界が待っているのだろうか。既に何者にも翻弄されない、自分だけの世界を手に入れた男は、そこで一体何をするのだろうか。全ては五億年経てば明らかになるだろう。そう、難しい手順は一切必要ない。続きが始まるまで、私達はただ待っていればいいだけなのだ。男の旅はまだ始まったばかり。片道切符の未来旅行はこれからも続いていく。
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