会社員の女装と緊縛

なな

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第4章:見られる快楽、暴かれる私

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夜の9時を過ぎた頃、陽介は玄関に立っていた。

部屋着ではない。女装していた。

白のオフショルダーニットに、タイトスカート。肌にぴったり吸いつくベージュのストッキングと、5センチヒールのパンプス。胸元には、ブラジャーのラインがうっすらと浮き、メイクは控えめながら、唇は艶やかなローズピンク。髪はハーフアップ。

そして下着の中には、小さく折りたたまれた“男”の証が、女のシルエットに隠されていた。

部屋には、麻縄が3本。すでに一部は足首を縛る形で巻かれ、自撮り用の三脚が静かに立っている。これは、"陽菜"がいつもひとりでしている、儀式の準備だった。

けれど——今夜は、違う。

インターホンが鳴った。その音だけで、膝が震えた。

陽介の中にいた「陽菜」は、もう逃げる場所を失っていた。

ドアを開けると、そこには私服姿の市川麻衣が立っていた。黒のロングコートに、白いタートルニット。彼女は何も言わず、ただ微笑みながら陽介の姿をまっすぐ見つめた。

「……きれい。ちゃんと、女の子の顔してる」

その言葉は、言葉以上に、身体に沁みた。

部屋に招き入れると、市川は部屋の中を静かに見渡した。床に置かれた麻縄、三脚、鏡。そして女の服をまとった男。

「西山さん……いや、"陽菜"って呼んでいい?」

「……うん」

「ここで、ひとりで、こんなふうにしてたんだ。私に……見せてくれる?」

陽介は何も言えなかった。ただ、黙って足元に置かれた縄を手に取り、彼女の前に跪く。

その瞬間、空気が変わった。

陽介は両足を揃え、太ももと足首を縄で縛っていく。すべて自分の手で、習慣のように、身体が覚えている動きで巻きつける。摩擦の感触、締まりの強さ、肌を撫でるような繊維のざらつき。

次に、胸の下に縄を回し、腕を後ろに持っていく。完全には縛れないが、脇を締め、軽く肘に絡ませるようにして形をつくる。

——動けない。

——でも、それがいい。

「ふふ……興奮してる?」

市川は、陽菜の頬にそっと触れた。汗ばんだ肌をなぞる指先。震えを感じとったのか、口元が艶やかに緩んだ。

「……ねぇ、鏡、見てごらん?」

陽菜は首だけを動かして鏡を見つめる。

そこには、女装姿で、自らの手で縛られ、誰かに見られながら座っている“彼女”がいた。

羞恥が、波のように押し寄せる。だが同時に、それが異様なまでの快感に変わっていく。

「きれいだよ、陽菜ちゃん。誰よりも……淫らで、可愛い」

市川の声は甘く、支配的だった。

「でも……、こんなに可愛いのに、ずっと隠してたの? 誰にも見せずに、自分だけで……?」

陽菜の目から、ふっと涙がこぼれた。言葉にならない。けれど、その沈黙こそが答えだった。

市川は、縄の端を手に取ると、陽菜の首元にゆっくりと絡めた。

「もっと見せて。縛られるのが好きな、女の子の顔……私にだけ、ぜんぶ見せて?」
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