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はじめ

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魔人とは

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 お兄様が連れ去られてからの日々はとても辛かった、何も考えられず、魔物退治について行く気が全く起きなかった。

 生きてるのか死んでるのかさえわからない状況で、私にできる事は何もなかった。そんな中、お父様は気丈に振る舞い、魔物退治も行っている。そして、私のケアもしてくれている。

 思い出したくもないあの憎き魔人、連れ去られたのは一瞬…………考えれば考えるほどに憎しみが募る。

 そんな憎しみの中、そろそろ、私も何か動き出さなきゃと思う…………魔人とは何か、何故お兄様が攫われたのか、お父様に聞いてみようと……そこから何か手掛かりが見つかるかもしれない、そう思い、お父様の書斎をノックする。

 すぐにお父様に迎え入れられる。魔人の事を知りたいと言うと、少し驚いた様な悲しい様な顔を一瞬浮かべ話してくれる。

「魔人はね、魔物と違い私達と同じ様に知性がある生き物なんだ。ただ私達と違う点は魔力量が多く、力も強い。あとは残虐性が非常に高いんだ。戦闘狂と言っても良いね。それが魔人だよ。
 それに、魔人は魔物を使役する事ができるんだ、普段は魔国から出てこないはずなんだが、なぜこんな所に…………」

「お兄様はなぜ連れ去られたのでしょう………そんなに戦闘狂ならその場で戦った方がいい様な」

 すると辛く顔を顰めてお父様は俯いてしまった。しばらくした後、ぽつりぽつりと苦しそうに話し始める。
 
「私もそれは疑問だったんだ、あの戦いの中、殺せば良いだけの人間を連れ去るとは…………私にも全く検討がつかない…………一つの仮説だが、もしかすると、人間の奴隷を作っている可能性もある……………………もしくは…………より痛ぶって殺す為………………考えたくはないがな………」

 最後は絞り出す様な震える声だった。分かった事といえば、お兄様を奴隷にしてるかもしれない事と、少し知恵のある血も涙もない殺戮マシーンだと言う事だ。絶対に許さない。

 討伐も終わり。自宅に戻るとお母様が倒れて寝込んでいると聞いた。お母様の顔を見ると艶やかだった肌が荒れ、頬がこけていた。

「お母様、私がお兄様をいつか連れ戻します!!だからお母様元気を出して、お願い」

「ありがとうアデル…………ありがとう…………」

 そのまま気を失うかのようにお母様はまた眠りについた。私はお兄様が生きていると信じて毎日必要以上に魔法の鍛錬をする様になった。

 皆が止めるのも聞かずに。
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