お見合い相手がAIかと思ったら、慇懃部長でしたが、なぜか今、溺愛されています

加茂茶 芽衣

文字の大きさ
4 / 5

4 モモンガの襲来

しおりを挟む
 ここは、とあるバーチャルお見合い会場。
 今、私は、ここに全てを掛けている。

 今日は、待ちに待った日、お見合いの日。
 テーマは、『ともに何かをつくること』だった。

──だが、この状況で、一体何を作れと言うんだ?

 パソコンの画面で私の分身(ラブちゃん)を操作しながら、会場を歩き回る。

 私は、正直に自分のアバターを作ったつもりだ。身長、年齢、体重、学歴、年収、趣味など、まあ、趣味は料理と読書にしておいた。料理は得意ではないけれども、自炊をしているから、料理でいいかなと。パソコン上だし軽い気持ちでいいんだよね。

 それにしても、プロフィールの若い女子が多いな。みんな見た目は同じだけど。ホントにみんな若い子たちなんだろうか?若さがあるなら、わざわざここじゃなくても、見つけられそうなものだが。

 ログインして10分後、一人の男性とマッチした。

 彼は年収2000万の会社経営者、会話をしてみるが、いまいち価値観が合わない。求めるクオリティーが高過ぎる。若ければ若いほどいいって、それじゃあ私は始めたら対象外じゃないの?なぜ32の私とマッチしたのか?

 次は年収1500万のIT社長さんだった。次は2000万を目指しているとか。ただ家事に完璧さを求められてもちょっと困る。やっつけ仕事の私には到底無理だ。

 それから、2、3人とお見合いをしてみるが、いまいちピンと来ない。

『どうしよう……』

 この最後の人とお見合いしてみてダメだったら、諦めよう、そう思っていた。

 そして出会ったのは年収1000万の会社役員(モモンガさん)だった。この中では一番安い年収。だが何故か話していて波長が合う。不思議と初めて会う気がしないのだ。特に、料理で話が弾む。

「僕は料理が趣味で、一緒に出来る人探していました。」
「料理が趣味なんですか?凄いですね。それでは、料理は普段からされているんですか?」
「僕は家では専ら自炊なんです。特に中華が好きで、特に餃子づくりが得意で。一緒に餡を包んでくれる人が理想なんです。」

 私はプロのような料理は無理でも、家庭料理程度は出来る。私も、餃子は大好きだ。一人暮らしの私が作るのは、専ら味のMの冷凍餃子なんだが。だが、子供の頃、母を手伝って餃子を詰めていた私には、その一つ一つ手間暇かけて作る餃子の大変さが分かる。それを手料理なんて、理想の旦那さまではないか。

 『ま、まぶしいぞ。まさかAIではないよね……』

「モモンガさん、手作りなんて、凄いです。餃子には、やっぱり、酢と醤油ですよね。」
「それも、いいけど、意外と酢と胡椒とラー油もさっぱりして美味しいですよ。」
「へえー」

 話しているうちに、モモンガさんも、動物好きで猫を飼っていることが分かった。読書が趣味で、休みの大半を自宅で過ごすインドア派だが、実は仕事の前には、体力づくりにジムへ通うという意外と堅実な面もある。

「意外です。これだけ素敵な方なら、わざわざここに参加しなくてもモテそうなのに……」
「それが、全くなんです。ラブさんこそ、実はモテるんじゃないですか?」
「えー、そんなことは、私はもう年なので……」
「そんなことはないですよ、ラブさんは素敵です。それに年というなら、僕も一緒ですよ。あの……」



 それから、連絡先を交換し、今日は初めてモモンガさんと会う約束の日なのだが、まだモモンガさんは来ていないみたいだった。

 ここは駅前の有名な待ち合わせスポット。

 目印は、ピンクの猫。

 私は、ピンクの猫型の揺れるピアスをしている。分かるようにと、なるべく目立つ奴にしてきたのだが。この年でこれは少し派手だったかもしれない。周りの視線がちょっと痛い。

 気を取り直し、
 「えっと、モモンガさんの目印は、どこにいるのだろう」かと、見渡してみる。見ればすぐ分かると言っていたが、どこだろう。

 『えっ、まさか……』

 あの見慣れない物体は、そんなわけはない。私は、もう一度注視する。

 『う、うそでしょ……、なんで、信じられない。』

チリン、

 今、私の目の前を、猫にこれ見よがしにピンクのリードをつけて散歩させている佐々木部長が通り過ぎたのだった。

 これ、Alじゃないよね。

つづく

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end**

一夜の男

詩織
恋愛
ドラマとかの出来事かと思ってた。 まさか自分にもこんなことが起きるとは... そして相手の顔を見ることなく逃げたので、知ってる人かも全く知らない人かもわからない。

私の婚活事情〜副社長の策に嵌まるまで〜

みかん桜
恋愛
身長172センチ。 高身長であること以外ごく普通のアラサーOL、佐伯花音。 婚活アプリに登録し、積極的に動いているのに中々上手く行かない。 「名前からしてもっと可愛らしい人かと……」ってどういうこと? そんな男、こっちから願い下げ! ——でもだからって、イケメンで仕事もできる副社長……こんなハイスペ男子も求めてないっ! って思ってたんだけどな。気が付いた時には既に副社長の手の内にいた。

身体の繋がりしかない関係

詩織
恋愛
会社の飲み会の帰り、たまたま同じ帰りが方向だった3つ年下の後輩。 その後勢いで身体の関係になった。

【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!

satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。 働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。 早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。 そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。 大丈夫なのかなぁ?

ヤクザの若頭は、年の離れた婚約者が可愛くて仕方がない

絹乃
恋愛
ヤクザの若頭の花隈(はなくま)には、婚約者がいる。十七歳下の少女で組長の一人娘である月葉(つきは)だ。保護者代わりの花隈は月葉のことをとても可愛がっているが、もちろん恋ではない。強面ヤクザと年の離れたお嬢さまの、恋に発展する前の、もどかしくドキドキするお話。

処理中です...