お見合い相手がAIかと思ったら、慇懃部長でしたが、なぜか今、溺愛されています

加茂茶 芽衣

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12 だから、俺は反対だったんだ。

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まさか、こんな場所で会うとは思っても、見なかった。地方支社への赴任が決まった日、俺はかなりふさぎ込んでいた。海外帰りとエリートだなんだと、周りは囃し立てるが、そんなことは全くない。単に、海外の大学に行っていたのは、放浪の旅がしたかっただけ、日本には帰りたくなくて、その一心で、そのまま現地に就職した。その会社が親の会社と提携していたなんて知る由もなかった。結局俺は、親の掌で転がされていただけだったんだ。

日本へ戻って2年、本社で働くこと一年、半年ごとの移動で仕事なんて覚えている暇がない。今回も、おそらく半年したら、どこかへまた移動になるのだろうと思っていた。俺は、仲間と共にゆっくり仕事を覚えていきたいたちだった。

「なぜだ。」

米国生まれの気性の激しい母だった。南條家の本妻を追い出して、後釜に座ったとはいえ、あの気性では上手くいくはずがない。父と一緒に転々と転勤を蹴り返しす中、出会ったのが、沼田明子、アキちゃんだった。

久しぶりに再会したあきちゃんは、あの頃と変わっていなかった。そのまっすぐな瞳で見つめる姿に、背中がゾクリとした。

料理を覚えたのは、アメリカで放浪の旅をしていたとき。カナダの大学が通っていた俺は、自由を求めて渡ったアメリカチャイナタウンで中華鍋をふるうこと覚えた。

「どうして上手くいかない。」

親からの圧力と周囲からの期待。

「失礼します。」

喜多山さんの声に、体が思わず反応する。派手な匂いのする苦手なタイプの女性だった。

「ありがとう。」

喜多山さんは、ちっらと俺を見ると、無言で出ていく。

「でも、上手くいかないのは、何故なんだ。」


「佐々木部長、ちょっといいですか?」

ガチャリと扉が開き入ってきたのは、システム部門の担当の秘書だった。

「外部から、アクセスされた形跡があります。」
「どういうことだ?」

「当社の認証キーがなければ、ログインできないはずだぞ。」

AIお見合いプロジェクトが軌道に乗り上げていた。繰り返し出されるエラーにほとほとに困りかけていた。

「Teams、つながってるか?」
「はい、画面共有しますね。」

調べた結果、複数回のログイン履歴が残されていた。

俺も、お見合いプロジェクトには、被験者として参加しているが、俺の他にもう一人、『俺のプロフィールに寄せたAI』がいた。

「やばいっすね、部長。これ……、まんまじゃないですか。」

大手企業で部長職32歳。年収1700万、身長183センチ、体重75キロ、海外帰りの帰国子女設定、趣味 旅行、特技 料理。

――俺はこんなに詳しく自分のプロフィールを公開していないはずだが……

なぜか、そのAIに外部からのアクセスが集中していた。

「だれが、こんなの作ったんですか?これじゃあ、人気出ますよ。勘違いするのも、無理な話ですよ……」

「人気で済む話じゃない。原因を徹底的に調べろ。」


俺は、パソコンを閉じ、「だから、俺は反対だったんだ。」と一人呟いた。

「今日は、金曜日か。」

スケジュール管理をしながら、思いたって、スマホのラインを操作した。

何時のように真面目な顔でパソコンに向かって座るアキちゃんが見えた。今日は、残業するような用事はなかったはずだ。アキちゃんの目つきが変わり、ニコリと画面に向かってプロフェッショナルに微笑んだ。コールセンターへの電話がかかってきたのだろう。

その向かいのデスクに腰かける、喜多山沙耶は、感心なさげに爪の手入れをしていた。雑然としデスクが対照的だった。

仕事帰りにスーパーに寄る。ショウガとニンニク、ピーマンと水煮筍を買う。簡単に作れる料理をと考え、今日は、チンジャオロースーにした。

ラインの通知音が鳴る。

アキちゃんの仕事が、そろそろ終わるころだろう。会社の近くまで迎えに行こうかな。

アキちゃんが、待ち遠しかった。

「そう言えば、アキちゃん、ピーマン食べれるよね。」

地下の駐車場へと押していく足取りは、軽やかだった。


つづく



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