お見合い相手がAIかと思ったら、慇懃部長でしたが、なぜか今、溺愛されています

加茂茶 芽衣

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11 あなたの本音はどっち?

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泣きはらした目が痛い。

翌朝、私は放心状態で目が覚めた。

「そうだよね。きっと、あれはAIなんだよ。ピンクの首輪で現れた部長のモモンガさんも、餃子だって、あの中華三段重だって、全部AIが作った幻影だよね。」

ベッドの上で端座になっている私の上に、愛猫のラブちゃんは丸くなって座っている。

このベージュの平凡な壁に生活感のある部屋。昨日夕食に食べた肉じゃがの濃い醤油の匂いが未だに立ち込めている。部長のグレーで統一されたおしゃれな空間とは、全然違う。そう言えば、部長の部屋は、少しエロいロマンティックな匂いがしていた。

夢の中では、佐々木部長がグレーの部屋で、餃子を私にそれはそれは優しい笑顔で「あーん」して食べさせてくれたけど、現実の部長は全然違う。

「あの狭い個室でコーヒー片手に、沙耶とイチャラブして、ハグして、抱き合って……」

愛猫のラブちゃんが、膝の上で伸びをした。

「きっと、私のアキちゃん呼びも、みんな女子にしてるんだよね。そうだよ。佐々木部長は女子をとっかえひっかえで有名な人だもん。たまたま、同じ年の私を揶揄って遊んでただけんだよ。そう思わない?ラブちゃん。きっとラブちゃんが一緒に遊んだモモンガさんもきっと幻影だったんだよ。」

私は、傍らから遠ざかっていくラブちゃんを見つめていた。

「私が、勝手に舞い上がっていただけなんだ。ピンクのピアスをつけて、あんなにはしゃいじゃって……私って、ほんと、馬鹿みたい。」

――でもなんでだろう。……裏切られたようで、胸がすごく痛いのは。

ラブちゃんは、リビングの椅子の下で丸くなった。

私は、椅子の下でうずくまるラブちゃんにそっと近づき、丸い背中を優しく撫でた。

「そろそろ出社しなきゃ、」

食欲なんてない。昨日の残りの肉じゃがが、まだたくさん手付かずで残っていた。

泣きはらしたせいか、今日は化粧のノリが悪い。腫れぼったい目にアイシャドーを塗る。この場合、濃い方が目立たないだろうか。それとも、薄く暈した方がいいのだろうか?そんなに化粧の仕方に興味のない私には、対処の仕方が分からなく、結局いつも通りの結果になってしまったようで。却って、目立つような気がするが、直している暇はなかった。

制服に着替え、愛猫に今日は豪華に猫缶を開ける。気分転換は大事だ。これから、佐々木部長と顔を合わせなくてはならない。昨日は、気分が悪くなり、早退してしまったのだから。

出社の準備を整えた私に気づき、ラブちゃんがご飯もそこそこ食べかけなのに、私の足元にやって来る。顔をスリスリとするその姿は、「がんばれよ、応援している。」と言っているようだった。

「ごめんね、ラブちゃん、心配かけちゃって。泣いてばっかりだと、笑われちゃうよね……、よし、ママ、がんばって来るからね。」

徒歩で一階の花屋へ向かい、そのままエレベーターに乗り、3階のオフィスに一歩足を踏み入れると、どこかで嗅いだことのあるような甘ったるい匂いが漂っていた。

「昨日の残り香かな。まだ掃除のおばさんの出社前なのかな。この時間にしては珍しい。昨日、早退したから、今日は、やることがたくさんあるのよ。」

今日は、部長の部屋の花ブーケを交換する日だった。花屋との契約で2週間に一回水曜日に入れ替えることになっていた。

カチャとドアノブをまわす。

「あっ……」

扉を開けると、向こう側には、冊子や資料を片手に、ページをめくる部長がデスクの前に立っていた。

「どうして、君が?」

目が点になっている部長と目が合ってしまった。『どうしよう』と急いで扉を閉めようとしたら部長の戸惑った声がした。

「あの、すみません、いらっしゃるとは思わなくて……」
「この花は、もしかして、君が……。ごめん、誤解していたよ。てっきり、掃除のおばさんかと。」
「いえ、仕事ですから。」

――お願いします。今日だけは、普通の上司と部下でいさせてください。

「アキちゃん……」
「その言い方、止めてください。誤解してしまします。」

「お願いだ。誤解なんだ。話を聞いてくれ。」

思い出した。この香りは、佐々木部長の部屋に、夜に訪ねた時と同じ匂いだ。少しエロい、いかにも沙耶が好みそうな香り。勝ち誇ったように、部長にしな垂れかかる沙耶の昨日の表情が思い出される。

「……思わせぶりなことは、やめてください。あなたは、初めからそうでした。私は、もう……分からなくなるんです。」

――佐々木部長、あなたの本音はどっちなんですか?

つづく


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