収納魔法になりました

αラブッ

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0話 プロローグ 俺の名は収納魔法

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 俺は収納魔法と呼ばれている。それは決して俺がパシリだからとか虐められているからという訳では全く無く、俺を的確に表現する良いあだ名だ。種族名と言っても遜色ないくらいに。
 そう、俺は人間ではない。魔法だ。何を言っているかは分からないと思うが、それが全てだ。俺も分からない。ひとつ追加することがあるとすれば、魔法は魔法でも俺は収納魔法だ。……前は人間だったけどね。
「何をブツブツと言ってるのかしら。貴方は……はっきり言ってキモイわよ」
おっと声に出ていた様だ。
「と、言っているのはアンジェリーナ・ラフィーネ・クリス。俺の……俺のパートナー? ……違うな……お前は俺にとっての何だ?」
「はぁ……さっきからなんなのかしら……物語の冒頭ごっこなんてやめてもらえない? うるさいのよ、収納魔法の分際で」
「あぁ!? 言ったなラフィ!? あーもう俺怒ったー。完全に怒ったわー。もう収納させてやんねーからな!」
 と声高らかに反抗する。
 種族名『インテリジェントマジック知性ある魔法』と分類分けされた俺は、この世界において非常に珍しい存在らしい。
その珍しい俺は魔法を使う主人の意思に反して魔法じぶんを使う事ができる。逆に、俺が認めなければ主人は収納魔法を使うことはできない。
「ギャーギャーうるさいわね。全く……とんだ迷惑よ。アンタなんかを使わなきゃならない私の身にもなりなさい」
 と嫌いな奴に話しかけるみたいな声色だった。
「で? そんな事より今は何処に向かってるんだ?」
 話を逸らすと、ラフィは大きなため息をつきこう言った。
「貴方……いつにも増して話の逸らし方が雑なんじゃ無いかしら。どこかおかしいんじゃないの? 
 特に頭とか」
「最後は余計だわ! しかも俺頭はおろか身体がないんだが……で、何処に向かってるんだよ」
 彼女は、今の今まで何を聞いていたのかしら、と深くため息をついてこう言った。
「西よ。その先に国があるといいわね」
 そう、目的地も無い旅をしている。西へ、ひたすら西へ。その先に国があるのなら寄っていく。
「やっぱそうだよなぁ」
 それも地図も無しに、だ。だから歩いて行く先に国があるかどうかも判らない。
 ラフィが家を出て早3ヶ月。目的地は無いが多分滞りなく進んでいる。
 ぐぅぅぅ、と鳴り響く腹の音。
「昼飯にするか? 食べもんはまだまだあるぞ」
 仕返しついでに優しい声色で問う。
「何よ。乙女に対してデリカシーの無い男ね。良いわよ昼なn……」
 ぐぅぅぅ。
「……」
「……」
 なんてタイミングで鳴るんだ。ナイス。
「ほら、お腹空いてるんだろう?」
 と冗談半分仕返し半分に優声で言う。
    
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