ちいさな物語屋

うらたきよひこ

文字の大きさ
50 / 526

#049 深夜2時の怪奇配信

しおりを挟む
俺の名前は佐々木翔。登録者12人の弱小YouTuberだ。しかも、その12人のうち半分はリアルな知り合い。お付き合いとして登録してくれたものの、見てないのは分かっている。でも俺は、毎晩ひっそりと配信を続けていた。
 
俺のチャンネル名は「翔のミッドナイト実験室」。やることはシンプル——意味の分からないことを深夜に淡々とやる。たとえば、砂時計が落ちる様子を5時間実況ライブ配信したり、コンビニのおにぎりを一晩かけて全種類食べたり。「誰が見るんだ?」と、自分でも思うが、いつかこのシュールさがウケるんじゃないかと思っていた。
 
そんなある日、俺は「深夜の公園でひたすらゴム手袋を膨らませる配信」をやることにした。目的は特にない。なんとなく、不気味で面白そうだったからだ。
 
カメラをセットし、薄暗い公園のベンチに座る。手袋に息を吹き込みながら、スマホで配信画面を確認する。視聴者数は「0」。うん、いつも通りだ。アーカイブの視聴を期待する。
 
5つ目の手袋を膨らませたところで、スマホに変化があった。
 
——視聴者「1」
 
……お?誰か来たのか?
 
チャット欄には何も書かれていない。でも確かに、誰かが見ている。やや気まずい。
 
「えーっと、こんばんは。深夜のゴム手袋膨らませ配信へようこそ」
 
コメント欄は動かない。でも視聴者数は「1」のまま。立ち去る様子もなかった。深夜だから酔って誤操作して寝落ちとか、全然あるだろ。俺は気にせず配信を続けることにした。
 
静かな公園に、俺の呼吸音とゴムのきしむ音だけが響く。
 
やがて20個目の手袋を膨らませた頃、コメントが入った。
 
「後ろ、誰かいるよ」
 
心臓が跳ね上がった。急いで振り向くが、誰もいない。風がブランコを軋ませているだけだ。コメントの内容が内容なだけに気味が悪くなる。
 
「……や、やめてよ、そういうの~」
 
軽く笑いながらカメラに向き直る。でも、その瞬間、視聴者数が増えた。
 
——「2」
 
「えっ……?」
 
静まり返る公園。俺はスマホを持つ手が震えているのを感じた。
 
次の瞬間、チャット欄に新しいメッセージが表示された。
 
「今すぐ逃げたほうがいい」
 
ギィ、ギィ……
 
背後のブランコが軋む音がさらに大きく聞こえた。俺は何も考えずに配信を切り、全速力で公園を飛び出した。
 
本当に何かが映っていたのか気になってライブ動画を確認しようと思ったが、なぜかその動画だけがない。運営に消されたのかと思ったが、ガイドライン違反の警告も来ていない。一体、後ろに何がいたのか。いや、騙されたのか?
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

麗しき未亡人

石田空
現代文学
地方都市の市議の秘書の仕事は慌ただしい。市議の秘書を務めている康隆は、市民の冠婚葬祭をチェックしてはいつも市議代行として出かけている。 そんな中、葬式に参加していて光恵と毎回出会うことに気付く……。 他サイトにも掲載しております。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...