妹とそんなに比べるのでしたら、婚約を交代したらどうですか?

慶光

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№1 ホルムズとの婚約解消

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「ローラ、君は妹のレイラみたいに素早く行動できないのかい?」

「申し訳ありません、ホルムズ様。時間には間に合っていると思いますが……」

「そういう問題じゃないんだよな。レイラと比べると遅いって話をしているんだよ」


 伯爵令嬢のローラ・ツインズ。婚約者であり、侯爵のホルムズ・ナイトメアから叱責を受ける毎日だった。彼と婚約をして4か月が経過。

 ローラの気の休まる日は少ないと言えるだろう。誤解のないように言っておくと、ローラは決して仕事などの速度が遅いわけではない。温厚な性格から、動作などはゆっくりとしているかもしれないが、決して文句を言われるほどの速度というわけではなかった。

 それでも、婚約者のホルムズは毎日のように彼女と、彼女の妹のレイラ・ツインズを比較するのであった。

 ホルムズは20歳、ローラは18歳、レイラは17歳という年齢構成だ。互いに幼い頃からの知り合いでもある。ローラとレイラは実の姉妹なので当たり前だが、ホルムズも幼馴染のような関係だった。レイラはローラに比べて活発な性格をしており、確かに仕事の速度などはローラよりも早く、それ以外の行動についても素早いと言えるだろう。

 ホルムズはそういうタイプの女性が好みだったのだ。だからこそ、平均的な動きのローラを叱責している。あとは、性格的なところでも、ローラは責められていた……。

 活発な妹の方がいいと、何度もホルムズは言うのだ。

 そんな日々が4か月も続き、彼女は流石に精神的に疲れ果ててしまっていた。


「ホルムズ様、よろしいでしょうか?」

「ん? どうかしたのか、ローラ?」


 ある日、ローラはホルムズの部屋を訪れた。その表情は何かを決意したかのようだ。


「ホルムズ様は妹のレイラのことが好きなのだと推察されます……」

「ああ、確かに……そうかもしれないな。私は婚約する相手を間違えたようだ」

「左様でございますか」


 ローラはしっかりと彼からの言葉を聞いた。そして続ける。


「それでは私との婚約は破棄し、レイラとの婚約をお考えいただけませんか? 私はホルムズ様からの叱責で疲れ果ててしまいましたので……」

「そういうことか。まあ、仕方ない。ローラは私の隣には見合わない令嬢だったということだな。いいだろう、婚約破棄といこうじゃないか」

「ありがとうございます、こんな形で終わってしまうのは残念でなりませんが……」


 そこまで言うと、ローラはホルムズに一礼をして部屋を後にした。遅かれ早かれ、この婚約は破綻していただろう……彼女はそのように考え行動に移したのだ。

 これで叱責地獄から逃れることが出来る……ホルムズの方も大好きなレイラと婚約出来るのなら、何の問題もないだろう。彼女がそれを望むかどうかは別にして。ローラは束の間の安心を得られることに、心から喜んでいた。
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