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№2 友人
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「ええ~~~~!! そんな話になったの!?」
「ええ……そうなの」
ローラ・ツインズ伯爵令嬢とホルムズ・ナイトメア侯爵との婚約破棄が決まってから数日が経過した。ローラは友人の伯爵令嬢であるミリム・ペンドラゴンと会っていた。自分の近況報告などを兼ねてのことである。
「ホルムズ様との仲はあんまり良くないとは聞いていたけれど……まさか、婚約解消? 婚約破棄? になっているなんてね」
「私としても望んでいたわけじゃないわ……でも、これ以上耐えるのは厳しかったの」
「まあ、それはそうなんでしょうけれど……妹のレイラはホルムズ様に求婚されるわけでしょう?」
「ええ……そうなるわね」
ローラは婚約破棄が成立した時は、自由になれたことを嬉しく思っていたが、レイラの苦労を考えると罪悪感のようなものは拭えなかった。
「レイラには悪いことをしてしまったかもしれないわ……自分のことしか考えられずに……私は駄目な姉ね」
「あれだけ追い詰められていたんですもの。ある程度は仕方ないわよ。それに……」
「それに?」
「ホルムズ様はレイラの性格を好んでいるんでしょう? だったら二人が婚約したとしても、特に問題はないんじゃないの?」
「それは……まあ、確かにそうね」
レイラが納得すれば特に問題はない。この数日、ローラは妹のレイラとは会えていない。彼女は別荘地に泊まりに行っているからだ。話として連絡は執事等を通して伝わっているはずだが、そういった意味合いでもローラ少し不安を感じていた。
「ミリム……レイラには私から謝罪しておくわ」
「そんなに気にし過ぎないようにね。ローラの悪い癖よ、そういうところは」
過ぎたことをいつまでも引きずってしまう……ローラにはそういう癖があった。反省出来る部分が多いのでプラスにはたらく時が多いが、今回はマイナスに働いていると言えるだろうか。友人のミリムはその部分を的確に指摘している。
同じ年齢の二人ではあるが、どちらかと言えばミリムの方がお姉さん気質があると言えるだろう。それは、彼女が既に結婚目前まで進んでいることと連動している。
「ありがとうミリム……なんだか、少し元気が出たわ。あ、もうすぐミリム・リシュート夫人になるんだったわね」
「気にしないで。私に関してはその通りね」
ミリムはリシュート公爵の下に嫁ぐことになっている。ミリム・リシュート公爵夫人の誕生であった。
「これからは敬語で話さないといけなくなるわね。リシュート家と言えば、ハイエルド王国の中でもトップクラスの貴族家系だもの……その夫人って言ったら凄いことだわ」
「肩書きが変わるだけよ、私は何も変わらないわ。第一、第三夫人だからね? リシュート公爵としては愛人に近い存在かも」
「それって幸せなの?」
「貴族令嬢は時には幸せでない婚約もするでしょう? ただ、私の場合は幸せな部類だと思うわ。マルクス・リシュート公爵は私の外見などを気に入ってくれたわけだから。恋愛結婚に近いからね」
「なるほど……そういう考え方もあるのね」
それも幸せの形の1つだ。ミリムからそう言われ、ローラは勉強になった気がしていた。今の自分ではなかなかそこまで割り切ることは出来ない為に、彼女のことを尊敬しているのだ。
「まあ、ローラが同じような結婚をする必要はないと思うわ。色んな愛の形だってあるんだし」
「ありがとう、ミリム。少し勉強になったわ」
「どういたしまして。また、結果の方は聞かせてね」
「ええ、また報告するわ」
彼女達二人はその後もしばらく談笑を続けることになったが、話題はまったく違うものになっていた。ローラ自身はやるべきことが、しっかりと分かったので、元気さを取り戻していた。それを見たミリムは彼女の心境を読み、微笑みで返す。
二人は互いになくてはならない存在でもあった。
屋敷に戻った後は、妹のレイラと話をしよう……ローラの心の中にはそんな決意が芽生えたのだ。
「ええ……そうなの」
ローラ・ツインズ伯爵令嬢とホルムズ・ナイトメア侯爵との婚約破棄が決まってから数日が経過した。ローラは友人の伯爵令嬢であるミリム・ペンドラゴンと会っていた。自分の近況報告などを兼ねてのことである。
「ホルムズ様との仲はあんまり良くないとは聞いていたけれど……まさか、婚約解消? 婚約破棄? になっているなんてね」
「私としても望んでいたわけじゃないわ……でも、これ以上耐えるのは厳しかったの」
「まあ、それはそうなんでしょうけれど……妹のレイラはホルムズ様に求婚されるわけでしょう?」
「ええ……そうなるわね」
ローラは婚約破棄が成立した時は、自由になれたことを嬉しく思っていたが、レイラの苦労を考えると罪悪感のようなものは拭えなかった。
「レイラには悪いことをしてしまったかもしれないわ……自分のことしか考えられずに……私は駄目な姉ね」
「あれだけ追い詰められていたんですもの。ある程度は仕方ないわよ。それに……」
「それに?」
「ホルムズ様はレイラの性格を好んでいるんでしょう? だったら二人が婚約したとしても、特に問題はないんじゃないの?」
「それは……まあ、確かにそうね」
レイラが納得すれば特に問題はない。この数日、ローラは妹のレイラとは会えていない。彼女は別荘地に泊まりに行っているからだ。話として連絡は執事等を通して伝わっているはずだが、そういった意味合いでもローラ少し不安を感じていた。
「ミリム……レイラには私から謝罪しておくわ」
「そんなに気にし過ぎないようにね。ローラの悪い癖よ、そういうところは」
過ぎたことをいつまでも引きずってしまう……ローラにはそういう癖があった。反省出来る部分が多いのでプラスにはたらく時が多いが、今回はマイナスに働いていると言えるだろうか。友人のミリムはその部分を的確に指摘している。
同じ年齢の二人ではあるが、どちらかと言えばミリムの方がお姉さん気質があると言えるだろう。それは、彼女が既に結婚目前まで進んでいることと連動している。
「ありがとうミリム……なんだか、少し元気が出たわ。あ、もうすぐミリム・リシュート夫人になるんだったわね」
「気にしないで。私に関してはその通りね」
ミリムはリシュート公爵の下に嫁ぐことになっている。ミリム・リシュート公爵夫人の誕生であった。
「これからは敬語で話さないといけなくなるわね。リシュート家と言えば、ハイエルド王国の中でもトップクラスの貴族家系だもの……その夫人って言ったら凄いことだわ」
「肩書きが変わるだけよ、私は何も変わらないわ。第一、第三夫人だからね? リシュート公爵としては愛人に近い存在かも」
「それって幸せなの?」
「貴族令嬢は時には幸せでない婚約もするでしょう? ただ、私の場合は幸せな部類だと思うわ。マルクス・リシュート公爵は私の外見などを気に入ってくれたわけだから。恋愛結婚に近いからね」
「なるほど……そういう考え方もあるのね」
それも幸せの形の1つだ。ミリムからそう言われ、ローラは勉強になった気がしていた。今の自分ではなかなかそこまで割り切ることは出来ない為に、彼女のことを尊敬しているのだ。
「まあ、ローラが同じような結婚をする必要はないと思うわ。色んな愛の形だってあるんだし」
「ありがとう、ミリム。少し勉強になったわ」
「どういたしまして。また、結果の方は聞かせてね」
「ええ、また報告するわ」
彼女達二人はその後もしばらく談笑を続けることになったが、話題はまったく違うものになっていた。ローラ自身はやるべきことが、しっかりと分かったので、元気さを取り戻していた。それを見たミリムは彼女の心境を読み、微笑みで返す。
二人は互いになくてはならない存在でもあった。
屋敷に戻った後は、妹のレイラと話をしよう……ローラの心の中にはそんな決意が芽生えたのだ。
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