異世界伝~風の国の姫様〜

5

　「姫様、コトハ姫、起きて下さい」
　「う……ううん」
　「おはようございます、コトハ姫」
　「お、おはよう、スズちゃん。……えっ！」
　
　声がする方を見るとそこにはスズちゃんがいたの。な、なんでと頭の中がグルグルと回ってちょっと混乱中。おかげで私の眠気が一気に覚めた。

　「えっ、えっ、何でスズちゃんがここにいるの？」

　私の質問にスズちゃんが可笑しそうに小声で笑ってから質問の答が帰ってきた。

　「コトハ姫、お忘れですか？　私はコトハ姫のお世話係です。朝、コトハ姫を起こしに来るのは当然ですよ」
　「そ、そうなの？」
　「そうですよ。これから毎日朝、起こしに来ますよ、コトハ姫」
　「は……はい」

　(お偉い人は皆こんな扱いされるんだ……慣れるまですごーくかかりそう……)

　心のなかで呟いた私はベットから起床する。

　「それではコトハ姫。早くお着替えを終わらせて朝食にいたしましょう。もう、陛下は朝食を頂く部屋でお持ちですよ」
　「えっ！」
　「コトハ姫と一緒に朝食をお取りになりたいとおっしゃっておりました」
　「お父様が。大変！」
　「それなのでお急ぎを」
　「い、急がないと」

　私は急いで寝間着から私服に着替え、髪を整えてといろいろやってからスズちゃんと一緒に朝食を頂く部屋に移動。朝食を取る部屋は見た感じ大きな食堂って感じの作り。朝は、私とお父様で。その後はお城のみんなかなと思った。
　お父様はもう席に座って私を待っていて下さったの。ちょっとお父様だけの光景が私にとっては寂しく感じたの。他に何名かはいるけどそれだけでも寂しい。

　昨日の夜の事を思い出すとお城の中にいるみんなは沢山いると思う。だからここに来たばかりの私は城のみんなとお話が出来るのは、食事の時だけかなと思っていたの。だから、私決めたの。

　「おはようございます、お父様。遅くなって申し訳ありません」
　「おはよう、コトハ。構わないよ。それよりゆっくりと休めたかい？」
　「はい」
　「じゃあ、朝食を食べよう」
　「はい」

　やっぱり、朝食は私とお父様だけが食べるのね。後でみんなは食べると思うけど……やっぱり。

　「あの、お父様」
　「なんだい、コトハ？」
　「お聞きしてもよろしいでしょうか？」
　「いいよ」
　「あの、皆さんはもう朝食をお食べになったのですか？」
　「それは、ここにいる人達であっているのかな？」
　「はい」
　「みんな、それぞれだなぁ。それがどうしたんだい？」
　「あの、これは私の我がままだと思います。私……食事の時間の時、お仕事が空いているお城の皆さんと、もちろんお父様とも一緒に食事をしたいです」
　「コトハ……理由を聞いても構わないかな？」
　「はい」

　自分の気持ちを正直にお父様に打ち明けることにしたの。

　「わ、私がここに来るまでは家族や友達と一緒に食事をする事が当たり前でした。食事をしながら今日の出来事などの会話をしながら。もちろんこの世界のルールがあるのも分かります。もし、お父様のお許しがあれば、私はお父様とお城の皆さんと一緒に食事をしたいです。そしてお城の皆さんとお話をしながら名前など覚えていきたいです」

　お父様は私の話を最後まで聞いてくれたの。この世界のルールがどのようなものかは、知らない。全くとはいかないけど少しは、リョウさんやミサキ君に教わったから知っている。
　もし可能だったらみんなと楽しく食事をしてみたい。