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「カフェヘミング」 

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 そこはカフェヘミング。
 太平洋に添った海岸道路にあるログハウス風の建物。
 オーナーに
「ヘミングウェイのどの作品が好きですか?」
 と尋ねたら、
「いや、読んだことないんです」
 と言った。
 俺はAと顔を見合わせて皮肉な微笑を交わす。
 よくあることだ、高知では。
 ふう、と俺は溜め息をつく。
 とても軽い溜め息だ。
 美し過ぎるパリジェンヌのA。
 しかし今の俺は決してAに恋はしない。
 愛し過ぎるCがいるから。
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