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深読み修道士
しおりを挟むとある修道院では、貴族の子供4人が預けられ、教育を受けていた。
厳しい規律の生活に反抗し、段々と手に負えなくなっている少年たちである。
ある日、その少年たちが勝手に修道院の鐘を鳴らそうと鐘楼に登り、偶然にも鐘を壊してしまった。
厳格な修道士ペトルスは、修道院長にこう申し出る。
「もう耐えられません!重い仕置きをしましょう!」
しかし、ペトルスの申し出に院長は首を縦に振らない。
それどころか「単なる事故だから」と怒りを収めるようペトルスに言い聞かせたのである。
納得がいかないペトルスは、同僚の修道士モンバルにその話をした。
モンバルは知的で思慮深く、神学に傾倒した修道士である。
「どう思うか?俺はもう限界だ。昼夜問わず仕置きをするべきだと思うがな」
そうこぼすと、モンバルは微笑む。
「昼も夜もお仕置きをする。それも一つの手でしょう。
しかし院長にはきっと深い思し召しがあるのです」
「それはどんな?」
「そうですね。
では昼も夜もお仕置きをやめたことがない少年。その子は大きくなったらどうなるでしょうか?」
ペトルスは考える。
考えても何も思い浮かばなかった。
「愚かな獣のようになるでしょう。やっていることは人から獣を育てているようなものです」
そう言われてもペトルスにはイマイチピンとこない。
お仕置きをして身の程をわからせた方が良いのではないか。そんな考えが思い浮かぶ。
しかしモンバルはこう諭す。
「例えば庭に若木を植えるとしましょう。植えた直後に四方を囲み、枝が伸びないようにするのです。
数年後に囲いを外せば、どんな木に育っていると思いますか?」
「当然、見かけは綺麗でも枝は全てひん曲がり、もつれてどうしようもない木になるだろうな」
「そうです、それも不自然な囲いを作ったせいですね。まさにこれと同じことではないでしょうか」
そこまで言われて、ようやくペトルスは理解した。
なるほど、そう言われればそんな気がしてくる。
「少年は教会という庭に植えられた木です。そこで成長し、神のために身を結ぶ。それをあなたが殴り萎縮させ自由を奪えば、彼らは考えを正そうとする全てに抵抗するでしょう」
「ふむふむ」
流石はモンバルであった。
自分よりはるかに理解が深く、何でも知っている。
ペトルスは感心した。
「だが俺も出来る限りのことはしている。それでも真面目な振る舞いにならないのはどうすればいいんだ?」
問題はそこだった。
自由に野放しにすれば、増長させるかもしれない。
そんな答えにもモンバルは微笑んで応える。
「例えばパンを大人ではなく乳離れしていない子供に乳の代わりに与えればどうなるでしょうか?
そう、子供は強くなるどころか息が詰まってしまうでしょう」
そう言われてもペトルスは比喩では理解ができない。
ペトルスは首を傾げる。
そこでモンバルはこう続けた。
「か弱い魂は乳を欲しているのです。すなわち他人の優しさ、親切心、励まし、愛情のある忍耐などですね。
少年はそうしたたくさんのものを求めているのですよ」
「な、なるほど...!」
ペトルスは頭が下がる思いであった。
自分の短絡的な思考が恥ずかしくなった。
モンバルはなんて寛大で、知性的で、おおらかなんだろうか。
ペトルスはモンバルに感謝すると、自分の短慮を戒めてもらおうと院長の元へ向かった。
「自分が間違っていました。院長様には深い考えがあったのですね」
そう言われた院長は、ただこう告げるのだった。
「あの子たちは貴族だから、大きくなったらこの修道院に数百倍の返礼をしてくれるに違いないよ」
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