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2章 魔法使いと戦争
16.敵襲
しおりを挟む城が燃え続けているのを、俺たちはただ呆然と見続けるしかなかった。
「なんで....燃えているんだ!?」
騎士の悲痛な声が聞こえた。
なんで.....?なんでだ!?
愕然としながら周りを見渡すと、あるものが目に入る。
どこかで見たことのある旗。
あれは....。
「.....!?あれはシリル公国の旗じゃないですか?」
「馬鹿な!たしか前線はもっと南のはずだぞ!?」
「と、ともかく行ってみましょう!みんなが危ない!」
俺はそう叫ぶと、ズキズキと痛むケガも忘れて一心不乱に走り出した。
敵国の旗がここにある。つまりそういうことだ。
騎士がいないこんな時に...。
城の前の野原には多数の兵が固まっていた。敵兵だ。
近づいていくと血生臭い匂いに胸がムカムカする。
城の中にはまだ入っていないのか....?
いや城門が開いている!入った後か!
頭がカッとなった。
「『炎柱!!」
敵兵に気付かれる前に俺は両手で魔法を繰り出した。
敵兵団のど真ん中に大きな火柱が上がる。
「うわあああぁ!!!」
「敵襲だ!!?」
敵兵の叫び声や悲鳴が聞こえるが知ったこっちゃない。
先に手を出したのはお前らだ。
「噴水!!」
足元に大きな水の噴水を発生させ、燃え広がっている敵を飛び越えるように大きく空に舞い上がった。
「氷柱雨!!」
ちょうど敵兵の真上に差し掛かるとき、俺はそれを唱えた。
尖ったつららが雨のように降り注ぎ、敵兵に突き刺さる。
「ぐわぁぁああ」
敵兵の悲鳴が鼓膜に反響するが俺はそれを聞き流した。
着地点に大きな水を発生させ、衝撃を和らげる。
振り返るとそこには轟々と燃え上がる火柱と串刺になった兵士の死体が転がっていた。
敵兵の一団は見事に全滅していた。
誰も生きてはいなかった。
俺はそれを見なかったことにして城の中へと入った。
城の中にいる敵兵をバタバタと薙ぎ倒しながら進んでいく。
しかし、想像以上に人殺しというのは重かった。
後悔の念が渦巻いてくる。
人を....殺した.....
初めて自分で殺した.....だけど殺すしかなかった。
殺さなければ、仲間の誰かがやられる。
だが...そうやって正当化しても殺した感覚は後味が悪く命が絶たれていく瞬間がはっきりとわかった。
人を、殺してしまった———
「ーーーーか!レイ君!!」
肩を揺さぶられ、我にかえると目の前には青ざめたあの領主がいた。
見知った顔にホッとし、思わず座り込んでしまう。
どうやらここは執務室のようだった。
騎士もいるし、ここが最後の砦だったんだろう。
「危なかったところを助けてくれて助かったよ。だが君も大丈夫か?相当疲れてみたいだけど」
「...大丈夫です。それで今は?今はどういった状況ですか?」
「ああ。奴らはシリルの兵どもだ。君らが行った1時間後に流れ込んできたんだ。とても少数の騎士たちじゃ食い止められなかった」
「そうですか......」
「・・・・・」
いつもらしくなく、領主の顔が暗いのは気のせいだろうか。
奥には次女のメアリーが椅子に座り込んでいた。疲弊して眠っている様子だ。
.......?なんでメアリーしかいないんだ?
悪い予感が心から湧いてくる。
「エミリア様は?ルシア様もどうしたんですか?」
領主はその質問にビクリと肩を震わし、青白い顔で言い放った。
「........エミリアもルシアも攫われてしまった」
「は?」
時間が止まった。
「攫われたって?な、なぜ?」
「奴らが来た時、エミリアとルシアは中庭で遊んでいた。おそらく、見つかって攫われたんだろう.....領主の子供は交渉材料に使えるからね...」
「なんで?なんで助けに行かないんですか?」
「そんな兵力どこにもない!助けようにも助けられない!私には向こうの要求を待つしかなかったんだ....すまない......エミリア、ルシア.....」
普段は明るい領主の顔は、死人のような顔をしていた。
目からは大量の涙がこぼれ落ちている。
おそらく領主も色々思案したんだろう。しかし、戦力差は絶望的だった。
彼の方が辛いだろうに責めてしまったことを悔いる。
「なら、僕が助け出してきます」
「.......なっ?」
領主は俺の言葉に驚いたようにこちらを見た。
「な、何を言っているんだ?相手は千人を超える兵士だぞ?
君みたいな子供に出来るわけが無いだろう!!思い上がりも大概にしろ!!」
怒気の混じった声に驚きつつ負けんと言い返す。
「じゃあ一生そこで後悔しとけばいいじゃないですか!!俺は後悔したくありません!だから行きます!」
向こうの要求を待つ?
その間何をされているかわかったもんじゃない。自分には力がある。力があるのに何もしないというのはそれだけで罪だと思えた。
領主はポカーンとするような顔で俺を見つめている。
「そこにいても何も変わりません。相手が1000人だろうが俺は可能性がある限り助けに行きます!」
「・・・そうか。そこまでの決意で...。
すまなかった。誰かがまた死ぬのが怖かったんだ。子供扱いしたことを許して欲しい」
「謝ることはありません、実際子供ですからね」
「はは...しかし君だけに助けに行かせるというのはできない」
「しかしそれでは———」
「私も行く」
「え?」
「私も行くよ。私自身の手で助け出す。私の子供なんだ。私がやる」
「・・・!」
熱い決意だった。
領主の瞳は復讐の炎で燃え上がっている。
予想外だった。
だが守る対象でもある領主が一緒に来るというのは案外名案にも思えた。ここにいる人を残りの騎士に任せ、俺と領主は奇襲してエミリアとルシアを助け出す。
まさか敵も二人で来るとは思わないだろう。
「それで、エミリア様たちはどこにいるか見当はついているんですか?」
「ああ!奴らは天駆の丘に陣取っている。ここから4キロほど先のところだ。捕虜はきっと本陣にいるだろう」
「わかりました。では、行きましょう!」
お互いにうなずき、俺と領主 ボルトン・ファクトリアは勢いよく飛び出した。
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