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番外編 ~攻略者達の記憶~
記憶の片鱗ー2
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彼に案内された先は小高い丘のようなところだった。
町を少し出て郊外をちょっと入ったところにある丘だ。頂には一本の大きな桜が植えてあり、ピンク色の花を満開に咲かせていた。
「・・・・良い所」
私は、戦闘や武器にしか興味のなさそうな彼の意外な案内に戸惑いつつ素直に感想を述べた。
「だろ?この間見つけたんだ!この景色お前に見せたくてさあ!」
彼は風になびく赤髪に合う照らすような笑顔で笑った。
小高い丘を登ってきたからか、私はわずかな胸の鼓動を感じた。
「・・・・ありがと」
そう言うと彼は照れたように笑う。
やがて丘の頂上に着くと、私はさらなる光景にしばらく見惚れてしまった。
「・・・これも?」
「うん。これも見せたくてさ!」
そう彼と会話をしながら私はその景色を見続ける。
それはさっきまでいた街の風景だった。
その風景に真っ赤な光が地平線から伸びている。
曲りくねり複雑な町の道路。夕方どきだというのに忙しそうに町を行き来する人たち。その人たちを避けながら鬼ごっこをする子供達。
その全ての人工物や人に、まるでその町自体が生きているかのように沈みかけている太陽の淡い赤い光が差し込んでいた。
まるで全てのものが生きているように見えた。
私がその景色に魅入っていると、隣から苦笑が聞こえてきた。
私はなぜ笑っているのかわからず、彼の顔を見て顔を傾げる。
「あ、いやーごめん。お前って意外と表情が豊かだなと思って」
そんなに顔に出ていただろうか。
私がそのことに頭を悩ませていると再び彼が笑う。
「そういう所が面白いんだよなぁ」
そう言われなんとなく、私は恥ずかしくなって顔を背けた。
もう丘を登っていないはずなのに胸がドキドキする。
なんでだろう?
「よしっ!んじゃあそろそろ帰るか?」
そうだ。もう夕方という事は早く帰らないと夜になってしまう。
私はこくんと頷く。
私たちは顔を見合わせ、彼から丘を下り始めた。
登って来た時とは違い、少し日が沈んで暗くなっている。
あまり運動神経の良くなかった私は降っている最中、見事に足を滑らし、体重が後ろにかかり頭から倒れそうになる。
「あぶねえ!」
頭が地面とぶつかりそうになる瞬間、彼の手が私の手を掴んだ。
ギリギリ私は倒れずに済んだようだ。
「大丈夫か?」
その質問に私は立ち上がり、服をさっさと払うと親指を突き出した。
その様子がおかしかったのか彼は小さく笑う。
それから彼は私に背を向け丘を下りようとしてーーー再び私の方を向いた。
「あ、あのさ。もし良かったら手、繋ぐ?ほらさ!危なそうだしさ!」
妙に慌てる彼に私は思わず笑いを漏らす。そんな私をポカーンと彼が見つめた。
「・・・はい」
私は彼の提案にのり手を差し出すことにした。
彼は少し頬を染めると私の手を取る。
それから私たちは2人で丘を下った。
町を少し出て郊外をちょっと入ったところにある丘だ。頂には一本の大きな桜が植えてあり、ピンク色の花を満開に咲かせていた。
「・・・・良い所」
私は、戦闘や武器にしか興味のなさそうな彼の意外な案内に戸惑いつつ素直に感想を述べた。
「だろ?この間見つけたんだ!この景色お前に見せたくてさあ!」
彼は風になびく赤髪に合う照らすような笑顔で笑った。
小高い丘を登ってきたからか、私はわずかな胸の鼓動を感じた。
「・・・・ありがと」
そう言うと彼は照れたように笑う。
やがて丘の頂上に着くと、私はさらなる光景にしばらく見惚れてしまった。
「・・・これも?」
「うん。これも見せたくてさ!」
そう彼と会話をしながら私はその景色を見続ける。
それはさっきまでいた街の風景だった。
その風景に真っ赤な光が地平線から伸びている。
曲りくねり複雑な町の道路。夕方どきだというのに忙しそうに町を行き来する人たち。その人たちを避けながら鬼ごっこをする子供達。
その全ての人工物や人に、まるでその町自体が生きているかのように沈みかけている太陽の淡い赤い光が差し込んでいた。
まるで全てのものが生きているように見えた。
私がその景色に魅入っていると、隣から苦笑が聞こえてきた。
私はなぜ笑っているのかわからず、彼の顔を見て顔を傾げる。
「あ、いやーごめん。お前って意外と表情が豊かだなと思って」
そんなに顔に出ていただろうか。
私がそのことに頭を悩ませていると再び彼が笑う。
「そういう所が面白いんだよなぁ」
そう言われなんとなく、私は恥ずかしくなって顔を背けた。
もう丘を登っていないはずなのに胸がドキドキする。
なんでだろう?
「よしっ!んじゃあそろそろ帰るか?」
そうだ。もう夕方という事は早く帰らないと夜になってしまう。
私はこくんと頷く。
私たちは顔を見合わせ、彼から丘を下り始めた。
登って来た時とは違い、少し日が沈んで暗くなっている。
あまり運動神経の良くなかった私は降っている最中、見事に足を滑らし、体重が後ろにかかり頭から倒れそうになる。
「あぶねえ!」
頭が地面とぶつかりそうになる瞬間、彼の手が私の手を掴んだ。
ギリギリ私は倒れずに済んだようだ。
「大丈夫か?」
その質問に私は立ち上がり、服をさっさと払うと親指を突き出した。
その様子がおかしかったのか彼は小さく笑う。
それから彼は私に背を向け丘を下りようとしてーーー再び私の方を向いた。
「あ、あのさ。もし良かったら手、繋ぐ?ほらさ!危なそうだしさ!」
妙に慌てる彼に私は思わず笑いを漏らす。そんな私をポカーンと彼が見つめた。
「・・・はい」
私は彼の提案にのり手を差し出すことにした。
彼は少し頬を染めると私の手を取る。
それから私たちは2人で丘を下った。
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