異世界に行ったら才能に満ち溢れていました

みずうし

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8章 勇者の国

93.龍

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 シュドール平原。シュウスイの南に位置するそれは、召喚された勇者達が最初に繰り出す平原として有名だった。
 そう、「始まりの平原」として。

 当然、雑魚モンしかいないわけで、スライム・ゴブリンetc.....。ともかく初期のLevelあげにしか使えない何もない平原なのだ。

 その平原に何があるというのか。今は、見渡す限り何もない。魔物の姿も1つさえない。逆に不思議だ。うーむ。

 それに、ハクリも俺について行こうとしたらあの野郎バーニングに止められてたし。
 俺1人じゃないとダメな案件?ますます怪しい。
 まああいつのことだ。またどうせ厄介なことをーーー

 「むっ」

 突然、平原の雰囲気が変わった。さっきまで和やかだった平原が、いきなり殺伐としてきた。風もピタリと止み、太陽も雲で隠されている、
 何かが平原の奥からやってきていた。尋常じゃない、何かが。

 「ああ?、先客か」

 そんな時、いつの間にか背後に男が立っていた。音も気配も見せず、ただ最初からいたかのようにじっと俺を見ている。

 「ーーーーっ!?」

 「なんだ、小僧も依頼されたのか?気にくわねぇな」

 黒いフードをかぶる男。顔はよく見えないが、フードからヒゲが見えている。ゾッとするような真っ赤な色だ。
 この男、(色んな意味で)ヤバイ。

 「い、依頼?」

 「ああ?チッ、知らねえのかよ。じゃあなんでこんな所に小僧がいやがる。まさか冒険者か?なら残念だな。魔物はもうどっかに逃げてここにはいない」

 男は哀れむような目で俺を見る。
 冒険者に成り立ての子供だと思っているらしい。

 「今からくる奴のせいで?」

 平原の奥からやってくる何かが関係しているのは間違いない。
 そう聞くと男のピクっと反応した。

 「ほう、素質あり、だな。だが死にたくなきゃあ早く逃げたほうがいいぜ?なんせ今からくるのはーーーー」

 男は言葉を止める。そして訝しげに空を見上げた。
 
 「おかしい.....。やってくんのは腹を空かせて弱った奴のはずだ。なのになぜ、満足そうに食事をしてやがる?」

 


 ーーーーーーーーーーーーーーーー




 その日、街は大混乱に陥っていた。
 街から逃げ出そうとする者、閉じこもるために食料を買い占める者。さらには王城に火をつけた者までいた。みんな心中尋常じゃないほど動転しているのだ。
 それも、ある1つのことが原因だった。

 「黒龍がやってくる」

 朝、南からやってきた商人によって広がったそれは、町民を動転させるには十分だった。
 だって、A級の魔物、デッドポイントさえ国を挙げて討伐するのに、黒龍はそれを遥かに超える「魔王級」の異名をもつSSS級の魔物なのだ。

 いくらシュウスイが最強の国といえども、それは勇者が存命していればの話。今の王候補達には到底扱えない案件なのだ。

 なのに、なぜか、余裕そうにくつろいでいる男が、私の目の前にいる。
 ただバカなのか、何か手立てはあるのか、私にはわからない。

 「・・・くぁ~~」

 その男はまたあくびをかますと、立ち尽くしている私とハクリさんに声をかけた。ちなみにアンはまだ寝ている。

 「座れば?ずっと立っていても疲れるだろ?」

 「は、はあ?」

 やっぱりこの男、変人だ。なぜかレイさんはこの人のことを信用しているみたいだけど、私は到底信じる気にはなれない。だって変人だから。

 「黒龍が来ているのにそんなにのんびりしてていいのかのう?
 ・・・まさか妾達が倒すなどと思われては困るぞ。妾達はお主にこき使われるためにいるのではないからのう」

 あ、やっぱりハクリさんもこの人のこと嫌いなんだ。ゴミを見ているような目をしている。

 「あ?ちがうぞ。俺はのんびり出来るからのんびりしているんだ。ちゃんと手は打ってある」

 そして男は南の空を指差した。同時に民衆から叫び声と悲鳴が聞こえる。
 南の空には大きなキノコ雲がもくもくと立ち込めていた。

 ・・・普通に考えれば黒龍のブレスが平原を焼き尽くしたと考えるべきだ。同時に、黒龍はもうそこまで迫っていると。

 「ほらな?」

 だがこの人は随分余裕そうにしていた。これがまるで最初から起きることがわかっていたかのようにーーーー

 「あ、そうだカルナ.....ちゃん?君にやってもらいたいことがあるーーーー」




 ーーーーーーーーーーーーーーーー




 俺は平原で1人、唖然としていた。
 
 もちろん現れた真っ黒な龍の事もあるが、それ以上にーーーー


 「ギュアアアアアアアアア!!!!」


 黒龍は焼かれながら落ちていく。飛行船レベルの図体を全て火に焼かれて、死を目の前に感じて雄叫びをあげている。

 そして、俺の目の前には右手を燃やし、落ちていく龍を眺める1人の男が立っていた。

 風で彼の真っ黒なフードが取れ、その赤い髪が現れる。
 その時、俺はガドにうんざりするほど聞かされた話を思い出していた。ガドが敗れ、そして尊敬するようになった奴の話を。

 
 「ーーー奴はまるで自分の手のように自由自在に火を使い、その火は山をも燃やし尽くす。
 奴自身が真っ赤なんだ。まるで火の神みたいにな。だからあんな名前が付いたんだろうな。
 ーーーーー火神とーーーー」


 「ーーー7大列強3位、火神ガリウス.....」

 俺の口からふと飛び出たその言葉で男は振り向き、そしてニヤリと笑った。
 

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