Level2から始まる召喚魔剣士の異世界成り上がり冒険記

みずうし

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プロローグ ~ある男の異世界召喚~

プロローグ-1

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 「アルシッド王のおなーりーー!!!」

 文官らしき人が声を張り上げ、お付きの演奏隊によるファンファーレが意気揚々と奏でられた。
 それに伴って、大広間の大扉が重苦しい音を立てて開き、1人の男を先頭に大人数の騎士や文官が勢ぞろいして入ってくる。
 入ってきた人たちの大体の顔は、彫りが深くヨーロッパを感じさせたが、中には見慣れた平顔の奴もいるように思える。

 「勇者達よ!!!ようこそ我らの世界エドワールへ!!!」

 そんな中、先頭の男が満面の笑みで俺達に向かって喋りかけてきた。
 その言葉に、今まで唖然としていた俺達8人・・・・は思わず間抜けな声を出してしまった。

 「「「ーーーーえ?」」」

 どうやら俺、いや俺達・・はとんでもないことに巻き込まれたようです....。



 ☆☆☆



 「ど、どうなってんだ.....」

 俺は与えられた個室で1人ため息をこぼしていた。先ほどの状況といい、今も部屋を見渡せばどれもこれも日本ではありえない調度品ばかりだ。
 拉致、ドッキリ、死後の世界etc...今の状況の予想はいくらでも挙げられるが、特にピンとくるものがない。一体これはなんなんだ?

 大体、今日俺は普段の高校生活から脱却してアニメの先行上映会イベントへ向かうはずであった。それが、道中突然光に包まれたかと思うと、気づいたら謎の広間にいたのだ。超絶ファンタジーである。
 はぁ.....俺の人生どうなってんだ?

 まぁ、ともかく現状処理に努めよう。退屈な授業中にシミュレーション脳内妄想をしてきた俺にとってはこんな状況楽勝だ。
 早速俺は部屋の物を漁って分析を開始した。

 「・・・えーっと?壁や床、んで机とか見る限り中世ヨーロッパ風って感じ・・・だな。けどなぜか言語構成は日本語と読めない語句と。見る限り日本を象徴するようなもんはねぇし・・・。
 拉致にしては不自然、ドッキリにしては巧妙すぎるな。とするとーーーー」

 残るはアレしかない。

 「異世界召喚キタァァァァア!!!」
 「失礼します」

 俺が歓喜のあまりにガッツポーズを決めた瞬間、メイドらしき人が部屋入ってきた。なんて間の悪いメイドなんだ。

 「「・・・・・・」」

 間が悪すぎて痛い雰囲気になってしまっている。まずい、異世界召喚早々、俺=痛い人、になるわけにはいかない!ここは気の利いた一言でもーーーー

 「あ、ども」

 しかし生憎俺はコミュニケーション能力が皆無だった。いわゆるコミュ障である。無念。

 「・・・王がお呼びです。至急先ほどの広間までお越しください」

 そう言いメイドは早急に部屋から出て行った。
 どうやら先の俺の失敗はなかったことにしてくれるようである。・・・いや、痛々しすぎて早く逃げたかっただけか。

 そんなことはともかく、ようやく今の状況について説明がされるようだ。こんな状況になった原因、つまり異世界召喚について、そしてこれからについて説明されるに違いない。

 ・・・そしてそれはつまりーーーー

 「俺TUEEEEE展開キタァァァァア!!!」
 「お伝えし忘れていたのですがーーーー」

 ドアがまた開き、再び訪れるの雰囲気。もはやわざととしか思えないのだが。
 当のメイドは真顔で固まっているし、そのご自慢のしっぽやネコ耳も直立不動である。

 「ってネコ耳?しっぽ?」

 ある。そこには確かにぶちのしっぽと茶色がかったネコ耳が存在していた。よくよく見ればメイドさんの顔つきも若干ネコに似ている気がする。本当に今更だけれども。

 「・・・お伝えし忘れていたのですが、広間へ来る際は赤いカーペット沿いにお進み下さい」
 「あ....はーーー」

  バタンッ、と俺が返事をする前に扉は閉められた。どうやら俺は痛い人として確定したらしい。早速社会的に死んだな、こりゃ.....。

 

 ☆☆☆



 社会的に死んだことへの現実逃避を5分で済ませると、俺は早速移動を開始した。自慢ではないが気持ちの切り替えには自信があるのだ。

 いつだったか、俺が朝教室に入ろうとすると、クラス全体で俺の悪口を言っているのが聞こえたことがあった。しかし、その時も俺は"スキル"「何も聞いてない」を発動して何とか乗り越えたのだ。その後トイレでクソ泣いたけど。

 まぁ、そんなことは置いといて。
 先ほどの俺の推察通り、部屋だけでなく広間へと続く廊下も西洋チックだった。要するに石畳で生成され、左右の壁には何かしらの肖像画が飾られているTHEお城の内装だったわけだ。
 先ほどのネコメイドといい、確かに異世界召喚と言っても過言ではない展開.....。うむむ....。

 そんな思いで美しい廊下を真紅のカーペットを踏む罪悪感から自然と端っこで歩いていると、1人の男がとある部屋から出てきた。
 容姿は20代前半のリーマン、といったところか。バリバリの日本人である。
 しかもよくよく見れば、俺と同じく「ようこそ勇者よ!」とか言われて「え?」って言った人だった。なんか親近感が・・・。
 とりあえず挨拶・・しておこう。

 「・・・・ども」
 「どうも。君もこの訳のわからない状況に置かれている人かい?」
 「あ、そうっす」

 おどおどしながらそう答えると男は微笑みを浮かべた。

 「そうか。仲間がいて良かったよ。なんだか心細くてね」

 照れながらそう喋る男に俺は確信した。

 こいつっ!出来るッッッ!!!(会話が)

 「そうだ!君の名前は?」
 「あ、楠 夕間くすのき ゆうまっす。えっーとあなたは・・・?」
 「僕は五十嵐 春人いがらし はるひとだよ。ハルヒトって呼んでくれ」
 「あいわかった」

 あわわわわわわ。人と喋るの久しぶりすぎてどもった。なんだよ「あいわかった」って!
 
 しかし、そんな俺にハルヒトは微笑むだけで嫌な笑い方はしない。今までこんな俺を笑ってくる奴ばかりだったのに。
 俺は・・・意外な場所で意外な出会いをしたのかもしれない。
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