【TS】社畜のオッサン、前世で死ぬほどプレイしていたVRMMOへ転生し最強のヒーラーになって無双する!

カミトイチ

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――たどり着いた村は凄惨な有様だった。



燃え盛る街並み。崩れた外壁と、地に伏す村人。



これを目の当たりにするのは二度目だが、あの時と受ける印象はまるで正反対だ。



憎しみと悲しみと、悔しさと先に立たない後悔。ぐちゃぐちゃの心のままに村を襲う魔族を殺して回る。



「村の外へ逃げて!!」



叫ぶ俺の声は誰かの悲鳴にかき消される。気が狂いそうな中、道の真ん中で立ち尽くす一人の少女を見つけた。



「……ロカ!!」



呆然としている彼女の視線の先には片腕を失くしたラッシュの亡骸があった。周囲に二体の魔族の死体が転がっており、応戦しこれを退けたことがわかった。



「……ラッシュが、守ってくれた……」



心が無くなってしまったのかと思えるほど感情のない声。



「逃げよう!!ここに居たら殺される!!」



「……どこに、逃げるの……?お母さんも、ラッシュも、みんな死んだ……どこに行けばいいの」



ぎりっと胸の奥が締め付けられる。けれど、こんなところで、クロウの守った人を失うわけにはいかない。だれか一人でも助け出さなければ、ウルカが死んだ意味が無くなる、何も残せない。



ドゴオオオンンと派手な爆発音がした。



(あそこは……コクエの屋敷か!!)



ロカの手を引く。よたよたとしか歩けない彼女を無理やりに、引きずるようにしてコクエの屋敷を目指した。



たどり着いた屋敷。そこには六体の魔族の焼死体。そして、コクエの胸に剣を突き立てている魔族の姿が。奴がこちらに気が付いたと同時に俺は首を刈り取っていた。



「『ヒーリングレイ』……!!」



魔法をかけると閉じていたコクエの瞼がうっすらひらいた。その瞳に光は無く消えゆく命の灯に、せっかく覚えた回復魔法の無力さを思い知る。



(ラッシュと同じだ。急所に一撃……HPは0になってしまっている以上、もう)



コクエは柔らかく微笑んで、再び目を閉じた。



「……逃げよう、ロカ」



「……」



ロカの心はもう壊れてしまったのか、コクエの死にも反応を示さない。お母さんを連れて行かなければ……遠くに見える家が巨大な黒龍に踏みつぶされ、俺はそれを諦めた。



ロカだけでも。連れて行こうと手を引くと、彼女はそれを振りほどいた。



ドオオオオオンンン!!



ロカがいたはずの場所に火球が落ちた。勿論、これは狙ってやっている。飛んできたそいつは右手に少女の亡骸を握りしめていた。



「……なんなんだよ、お前は……何が目的でこんな……」



食いしばった歯が折れそうになる。怒りが全身を覆い、目の前が紅く染まる。



『何が目的か、か。ふむ。リン、お前は我の問いに一度答えた……ならば我も一度だけ答えようか』



奴の【死門】は……額。右の角の隙間。



『我々の主、軍団長【ヴァルデアーダ】様はこの村にあるとされるダンジョンに大変興味がおありになられる。そこでこの村の人間を駆逐し居を構える命をお与えになったのだ……あとは、まあ余興だな』



ルベウスダガーを握りしめる。固有スキル『月影』を唱え俺は走った――



『まあまあ、楽しめたぞ?リン』



――【死門】へと伸ばしたルベウスダガー。



「……ごふっ、が、は……」



しかしそれが【ダークネスドラグーン】に届くことは無く、逆に奴の指の爪が俺の胸を貫いていた。



『姿と気配を消す技……それはもう見た』



そして、投げ捨てられた先、ウルカの遺体と目が合う。



……ごめん、俺……失敗、し……。



熱が失われる。



広がる血の海に視界が染まり、懐かしい気分になる。



ああ、この感じ……前世で刺された時と……同じだ。



……刀身の砕けたルベウスダガーが……見える。



(ごめん、クロウ)



視界が暗転した。







「ああ……人生ってのは、ホントにクソゲーだな」





母親が死に、父親も死に、物心がつく頃には俺は一人だった。

勿論、引き取ってくれた親戚には中学卒業まで育ててくれたことには感謝している。けれど、彼らの俺を見る目は子供に向けられるもとはかけ離れていたように思えた。ある部分だけが必要で俺を見てはいなかったように思うのだ。

だから高校になるころには何とか自立して生きていけるように頑張った。そのころには残された両親のお金は少なくなってしまったけれど、なんとか一人で生きてきた。



バイトと勉強を両立し、大学へと進学。しかし、事件が起こる。交通事故による長期の入院。生死を彷徨い、目を覚ますと俺がモノ言えぬ事をいいことに加害者は俺に罪を擦り付けてきた。



『あの学生の方から当たりに来た』



当然、俺は周りの目が気になり大学にはいられなくなった。仲の良かった友人もいつの間にか目の色を変え、親戚もそ知らぬふり。



もうどうでもいいや……このまま死んでやろうか。どうせ人生はクソゲー。これ以上やるだけ無駄だろう。



そんな時、ふと街中の広告が目に入った。



フルダイブ型VRMMO【LASTDREAM】



どうせ死ぬならやってみたことのないことをして死のう。ゲームは前から興味があった。でも忙しくて結局やることは無かった。

残っている貯金も、死ねば誰かにわたる……なら使い切った方が良い。



それが【LASTDREAM】との出会いだった。



それから俺はそのゲームにハマった。やがてそれが生きる希望になる。その為だけに生きていきたくなる。その為に金を稼ぎ、辛い仕事にも耐えられた。



(……人生はクソゲーだ……でも)





――この世界は、クソゲーじゃない。



大切なものが詰まっている。



だから、嫌だ……諦めたくない。







【コンテニュー ➤はい いいえ】







――ポーン







『セーブポイントから開始します』





――月明かり俺の顔を照らした。





目を開けるとそこはリンの部屋の中だった。



月の光のみが照らし出す暗い俺の部屋。



背負ったリュック、腰に差したダガー。



俺は祈りのクリスタルに触れたまま立ち尽くしていた。



「……え?」







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