碧よりも青く

ハセベマサカズ

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碧よりも青く ⑥

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コピペのような寸分たがわぬ毎日。まるで間違い探しみたいだ。
制服に着替え学校に向かう。授業をやり過ごせば一日が終わっていく。
今日はいったい何が出来ただろうかと。朝目が覚めれば昨日に何があったのかなんて思い出せない。
悩みなんてないはずなのに私は何が不満で何が不安なんだろう。
少しずつ違ってく。その少しが私には分からない。人より感受性が低いんだろうか。
ぼんやりと考えていても思い浮かぶのは周りへの劣等感だけだ。
この学校を出れば、環境変れば、こんな悩みもなくなるのかな。
いつものように当てもない気持ちを抱えてると、いつの間にか今日も学校が終わる。

終業のチャイムの後、数分と経たずヘイタがやってくる。
「良かった、まだいてくれた」
走って来たのか少し息を乱しながら安堵してた。
「さっきの授業で使った教材の片付けを頼まれちゃってさ」
毎日、忙しそうなヘイタ。それでも不満があるようには見えなかった。
「ほら、鞄持つぞ」
こちらが難儀して立ち上がる前に、自分のカバンに重ねて持っていた。
「自分でもなんとかなるよ」
と言ってみたものの
「なら、持ってみることは出来るのかな?」
とヘイタに一笑されて答えが出てしまう。慣れない私は自分の体を支えるのに精一杯だ。
悔しさも言葉に出来ずに私はヘイタをにらんでうなるのみだった。
「いつも忙しそうだね」
私はヘイタに聞いてみた。その後、大変なら構わなくて大丈夫だよ、と続けたかった。
今日の姿だけではないが、ヘイタは先生たちに頼られ忙しく過ごしている様子が伝わる。
言葉の途中に思いもしない答えが返って来た。
「気を遣われてるんだよ」
そう言ってヘイタは笑った。

「実は俺さ、柔道の特待生でこの高校に入ったんだ」
強かったんだぜ、と笑って言った。だけど、その笑い方には寂しさも感じた。
「でも、入学早々に膝に故障が起きて。運動自体出来ない体になったって話」
そう話す階段を下りる今のヘイタにそんな感じは微塵も見えなかった。
「普通の運動位は問題ないけどな」
そうは言っても体育の授業はやや無理があり、持久走では記録係に回さてるそうな。
サッカーだってキーパー以外やったことないと豪語してた。まあその体躯なら故障がなくてもそうであろう。
「落ち込んで学校を辞めようかと思ったけど、先生たちが居場所を作ってくれてるんだよな。
 ここの先生方には感謝してるよ」
ヘイタの歩く速度が上がって私より前を歩いていた。
今までゆっくりの私に合わせてくれていたのが考え事でペースが乱れたんだろう。
気付いて振り返るヘイタを見て、きっと嘘はないんだろうと私は何となく思った。
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