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第一章 俺の職業? 魔術師だが?

選ばれた依頼

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 俺とサクラ・チュルージョは、依頼の貼られた掲示板に向かった。
 ゴブリン退治からドラゴン討伐、変なところでは鉱山調査、果樹園の収穫依頼から漫画のアシスタントなんてものまである。
 どうやらこの世界の冒険者は、相当な何でも屋らしい。

「で、何を選ぶんだ?」
 サクラはむーむーとうなりながら、一つの依頼を手に取った。
「私たちFランク冒険者では、せいぜいこんなところでしょうか」

 ゴブリン討伐、定期依頼と書いてある。
 依頼には通常依頼と定期依頼がある。単に依頼というと、通常依頼のほうだな。
 定期依頼というのは、王国や領主などが常に出している依頼のことで、受けるのも失敗時も何も制限はない。要するに雑用係のようなものだ。
 もちろん収入も少ないのだが、それはこの際仕方がない、というかどうせ駆け出しの俺たちだ。そんなものだ。

「ふむ、町の南にゴブリンの巣があるので、それを討伐するというやつもあるぞ、一緒にどうだ?」
「いいですねー、自信あるんでしょ。頼りにしてますよー?」
 サクラめ、ただの泣き虫かと思ったら、案外ちゃっかりしている。

 ということで、俺たちはゴブリンの巣穴を目指し、街を出た。
 街道を歩いている限りはそんなに凶悪なモンスターは出ないと思うが、はぐれゴブくらい出てくれなければ練習にもならない。

「おいサクラ」
「はい?」
「そういやお前、レベルはいくつだ?」
 ふっふっふ、とサクラは手を腰に当て、自慢してきた。

「驚きなさい、なんとこないだ21になったのです!」
 と言われても、勇者とやらの半分か。強いか弱いのか、いまいちわからんな。
 俺の薄い反応に、サクラは拍子抜けしたようにがっくりしている。

「ステータス、見せてみろ」
「ふえ? あ、はい。ステータス・オープンっ」
 明るい桜色のウィンドウが開き、サクラのステータスが開示される。

 ずいぶん歪なステータスグラフが目に映る。技術(DEX)の伸びが良いのはともかく、戦士系のくせに、肝心の攻撃(STR)と敏捷(AGI)が低い。

「お前、魔法は苦手だったよな」
 こくこくとうなづくサクラ。この呑気さで、よく今まで生きてこれたものだ。

「ちょっと来い」
 言いながら、こちらからサクラの体を抱き寄せる。がばっと服の上からサクラの胸を圧迫する。

「ちょ、え? えーー? いんぐうぇいさんーーー!」

 うるさい。

 むにむにと魔力のツボを押しながら、魔力の流れを確かめる。
 ふむ。
「思った通りだ。お前はちゃんと魔力は持っている。ただ、使い方を知らないだけだ」
「ぜはー、ぜはー、ふえ? ななな、なにをするんですかぁっ!」

 子供の胸に興味はない。そう言ったのだが逆効果だったようで、ぺちんとほっぺたをぶたれてしまった。まったく。

「ところでサクラ、今までの戦闘方法は?」
 え? きょとんとするサクラ。
「そりゃもちろん、カタナしかないじゃないですか。これです、名刀モモフク!」
 そう言って取り出したカタナは、確かに名刀っぽい。光り輝く刃は鋭そうだ。柄の横に、へたくそな桃のイラストが描いてある。

「あ、それ、私が描いたんです、かわいいでしょ?」

 ああ、同じことをしたミュージシャンがいたなーと、懐かしい目で遠くを見る。
 違った、そんなことをしたかったわけではない。
 カタナを借りてみると、本当に名刀のようで、魔力もよく刀身に通る。これならもしかして。

 都合よくゴブリンが近づいてきた。はぐれゴブリンか。

「おいサクラ、ちょっとこれでゴブリン退治して見せてくれ」
「ふえっ、イングウェイさんがやってくれるんじゃないんですか?」
 こいつめ。
「いいから行け!」
 俺は容赦なくサクラを蹴り飛ばす。
「ふっぎゃああぁ、ちょ、いきなりっ? こここ、こいっ、ごぶりんめ」

 腰が引けているものの、構え自体は悪くない。おそらく素振りや型は真面目にしていたのだろう。足りていないのは、度胸と――

「うっりゃあっ!」

 大振りにのサクラの袈裟切りを、ゴブリンはサクッと避けて反撃する。
 サクラは遅れて回避しようとするが、間に合わない。俺は横からサクラの体を押しのけて、ゴブリンとの間に割り込む。
 そのままゴブリンを蹴り飛ばし、距離をとる。

「わかったぞ、お前の欠点が」
 やれやれだ。これくらい誰か教えてやれよ。この世界のやつらは、筋力操作の基本もできないのだろうか。
 サクラの欠点、それは筋力に魔力がしっかり通っていないことだ。だからこそ反応も遅れるし、威力も弱い。

「鍛えなおしだな、体に覚えさせてやる。覚悟しろよ、サクラ。今日はゴブリンを斬って斬って斬りまくるぞ」
「ちょ、イングウェイさん、その笑いはすごく怖いですー」
 知ったことか。早く強くなってもらわないと、俺だって迷惑なのだから。
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