17 / 200
第三章 王都炎上
王都炎上
しおりを挟むこうして、サクラ・チュルージョとマリア・ラーズ、そして俺の3人は、レイチェルの家に居候することになった。
レイチェルの家はもともと病院だったこともあり、部屋数はそれなりに多い。古いけど。あと汚い。でも広い。
この広さなら、あと数人はメンバーが増やせるな。俺の言葉に、レイチェルは呆れながらも嬉しそうだった。とりあえずメイドさんが欲しいな。掃除を任せられるやつが必要だ。
俺の武器も完成したし、当面はこの王都アサルセニアを拠点として、冒険者として活動していくことになるだろう。
暢気にそう思っていた矢先。
その日は、よく晴れた日だった。薬草採りの依頼が入っていたため、俺とサクラとレイチェルは、アサルセニアを離れ近くの森へと来ていた。
そういえば最初にこの世界に来た時、このあたりの領主の家に世話になったな。
キャスリー・レノンフィールドと言ったか。あの金髪の元気な少女は、どうしているだろうか。
そんなことを思っていると。
異変に最初に気付いたのは、眼の良いサクラだ。
「あれー、なんか向こうの方で煙があがってませんかー?」
このあたりだと木がじゃまでよく見えないな。
「待ってろ。≪飛行≫っ!」
俺は呪文を唱えると、ふっと宙に舞い上がる。確かに遠くに煙が上がっており、なんだか風に乗って焦げ臭いにおいも届いてくる。
「あっちってことは、王都のほうですよね」
レイチェルが言う。
心配そうに顔を見合わせる、サクラとレイチェル。
「戻ろうか」
「でも、薬草集めがまだ終わってませんよ?」
「依頼を失敗するくらい、なんでもないさ。それより、マリアのほうが心配だ」
「イングウェイさん、優しいんですね。当然のことみたいに。なんだか妬けちゃうな」
レイチェルがいたずらっぽく言ってくる
「何バカなこと言ってるんだ。お前が残ってたとしても、同じようにすぐ帰るさ」
「えっ、それ本気で言ってます……?」
レイチェルは顔を真っ赤にしている。何を勘違いしているか知らんが、今はレイチェルにかまっている場合ではない。
ほら、行くぞ。
俺は二人をせかし、帰路につく。
王都に着いた俺たちは、驚きのあまり門の前で立ち尽くしていた。
なんだこれは?
城壁は崩れ、街からは複数の火の手が上がっている。行くときに挨拶をした門番は、どこにもいない。
奥からはまだ戦いが続いているのだろう、遠くで多くの人たちの怒号や叫び声、戦いの音が聞こえる。
「まずいな、急ぐぞ!」
門からレイチェルの家までは、かなり距離がある。
そこまで戦火が届いていないことを祈りながら、走る。
王都は変わり果てていた。
ここに至っては、魔法を出し惜しみをしている場合ではない。
俺は軽く女装をすると、剣を抜いた。
レイチェルも骸骨を呼び出し、戦いの準備をする。
「いいのか、レイチェル。骸骨を使役しているところを、知り合いに見られるかもしれないぞ?」
「でも、厄介ごとをイングウェイさん一人に押し付けるわけにはいきませんよ。見られたら見られたで、うん、きっと何とかなりますよ」
レイチェルの決意は固いようだ。
「急ぎましょう、二人とも!」
サクラもモモフクを抜いて、やる気満々だ。いつものドジっ子の姿はどこにもない。
俺たちは走り出した。
道をオーガがふさいでいる。
「邪魔だ、≪即死の掌握≫」
うがー
オーガは声もなく、血を吹いて倒れる。
と、その影から数匹のガーゴイルがとびかかってきた。
「それで隙をついたつもりか? ≪熱風刃≫」
ガーゴイルはぎゃーぎゃー騒ぎながら撃ち落され、石畳に激しく叩きつけられる。
「すごい、あの時は全然本気じゃなかったんだ」
「強いわね。まさかここまでとは思わなかったわ」
「二人とも、感心するのもいいが、油断するなよ。自分の身は自分で守るしかないんだ」
「「はいっ」」
0
あなたにおすすめの小説
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~
草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。
レアらしくて、成長が異常に早いよ。
せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。
出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。
50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく
かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。
ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!?
俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。
第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。
「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」
信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。
賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。
様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する!
異世界ざわつき転生譚、ここに開幕!
※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。
※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。
元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々
於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。
今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが……
(タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)
神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由
瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。
神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる