賢者、二度目の転生――女性しか魔術を使えない世界だと? ふん、隠しておけば問題なかろう。(作中に飲酒シーンが含まれます、ご注意ください)

鳴海 酒

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第三章 王都炎上

王都炎上

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 こうして、サクラ・チュルージョとマリア・ラーズ、そして俺の3人は、レイチェルの家に居候することになった。

 レイチェルの家はもともと病院だったこともあり、部屋数はそれなりに多い。古いけど。あと汚い。でも広い。
 この広さなら、あと数人はメンバーが増やせるな。俺の言葉に、レイチェルは呆れながらも嬉しそうだった。とりあえずメイドさんが欲しいな。掃除を任せられるやつが必要だ。

 俺の武器も完成したし、当面はこの王都アサルセニアを拠点として、冒険者として活動していくことになるだろう。
 暢気にそう思っていた矢先。


 その日は、よく晴れた日だった。薬草採りの依頼が入っていたため、俺とサクラとレイチェルは、アサルセニアを離れ近くの森へと来ていた。
 そういえば最初にこの世界に来た時、このあたりの領主の家に世話になったな。
 キャスリー・レノンフィールドと言ったか。あの金髪の元気な少女は、どうしているだろうか。
 そんなことを思っていると。

 異変に最初に気付いたのは、眼の良いサクラだ。

「あれー、なんか向こうの方で煙があがってませんかー?」

 このあたりだと木がじゃまでよく見えないな。
「待ってろ。≪飛行フライ≫っ!」

 俺は呪文を唱えると、ふっと宙に舞い上がる。確かに遠くに煙が上がっており、なんだか風に乗って焦げ臭いにおいも届いてくる。

「あっちってことは、王都のほうですよね」
 レイチェルが言う。

 心配そうに顔を見合わせる、サクラとレイチェル。

「戻ろうか」
「でも、薬草集めがまだ終わってませんよ?」

「依頼を失敗するくらい、なんでもないさ。それより、マリアのほうが心配だ」

「イングウェイさん、優しいんですね。当然のことみたいに。なんだか妬けちゃうな」
 レイチェルがいたずらっぽく言ってくる

「何バカなこと言ってるんだ。お前が残ってたとしても、同じようにすぐ帰るさ」
「えっ、それ本気で言ってます……?」

 レイチェルは顔を真っ赤にしている。何を勘違いしているか知らんが、今はレイチェルにかまっている場合ではない。
 ほら、行くぞ。

 俺は二人をせかし、帰路につく。



 王都に着いた俺たちは、驚きのあまり門の前で立ち尽くしていた。

 なんだこれは?

 城壁は崩れ、街からは複数の火の手が上がっている。行くときに挨拶をした門番は、どこにもいない。
 奥からはまだ戦いが続いているのだろう、遠くで多くの人たちの怒号や叫び声、戦いの音が聞こえる。

「まずいな、急ぐぞ!」
 門からレイチェルの家までは、かなり距離がある。
 そこまで戦火が届いていないことを祈りながら、走る。
 王都は変わり果てていた。


 ここに至っては、魔法を出し惜しみをしている場合ではない。
 俺は軽く女装をすると、剣を抜いた。
 レイチェルも骸骨おとうさんを呼び出し、戦いの準備をする。

「いいのか、レイチェル。骸骨を使役しているところを、知り合いに見られるかもしれないぞ?」
「でも、厄介ごとをイングウェイさん一人に押し付けるわけにはいきませんよ。見られたら見られたで、うん、きっと何とかなりますよ」
 レイチェルの決意は固いようだ。

「急ぎましょう、二人とも!」
 サクラもモモフクを抜いて、やる気満々だ。いつものドジっ子の姿はどこにもない。

 俺たちは走り出した。

 道をオーガがふさいでいる。
「邪魔だ、≪即死の掌握デス・グリップ≫」

 うがー

 オーガは声もなく、血を吹いて倒れる。
 と、その影から数匹のガーゴイルがとびかかってきた。
「それで隙をついたつもりか? ≪熱風刃ヒート・ストーム≫」
 ガーゴイルはぎゃーぎゃー騒ぎながら撃ち落され、石畳に激しく叩きつけられる。

「すごい、あの時は全然本気じゃなかったんだ」
「強いわね。まさかここまでとは思わなかったわ」

「二人とも、感心するのもいいが、油断するなよ。自分の身は自分で守るしかないんだ」
「「はいっ」」
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