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第四章 イン・ラスト・プレイス

オーバー20yo

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 ところ戻って、ここは冒険者ギルド。

 俺とサクラ、そしてレイチェルの三人が久しぶりにギルドに顔を出すと、なにやらガヤガヤと騒がしい。聞くところによると先日王都が攻められたときに、謎の冒険者が現れて皆を救ったということだ。

 ほう、あの混乱の中で、なかなか骨がある奴もいるものだ。もし会ったら、城であったへっぽこ勇者四人組に飲ませられるように、爪の垢でももらっておこう。

「で、どんなやつなんだ?」
 俺はマリア用の米焼酎の瓶を受け取りながら聞いてみた。
 よく酒場で一緒になるアランやポールたちは、赤い顔で教えてくれた。
 ああ、赤い顔と言っても、単に酔っているだけだからな。復興にモンスター掃討にと、ベテラン冒険者の彼らは忙しいのだ。大目に見てやってくれ。

 まあとにかく、彼らは言った。
「めっちゃきれいな、金髪の魔術師らしいぜ。いいよなあ、たぶん胸もでかいはずだぜ」
「俺が見たのは魔法剣士だ。遠目だったけどな。オークの群れに飛び込んで、あっさりと首を跳ね飛ばしてた。ありゃ相当な腕だ」

 あれ? 俺は何か引っかかるものを感じ、聞いてみる。
「……なあ、そいつらってパーティー組んでたのか? それとも、単独ソロで?」

「黒髪の女がいたと思うぜ。そっちは明らかに魔術師タイプだ」
「俺の時は、ピンク色の剣士がいた気がする。さっさと走り去っていったから、よく見えなかったけどな」

 二人はそういうと、思い出したように俺とサクラ、そしてレイチェルを順番に見比べる。

「――そんなわけないか。ドジっ子サクラと酔いどれレイチェルだもんな」

 ……なんだ、そういうことか。バレてないぞ、良かったな、お前ら。日ごろの行いが良くて。

「むー、なんか納得できません」
「あいつらが死んだら、グールにして飼ってやりますぅ」


 俺たちが情報収集にいそしんでいると、酒場のマスターから声をかけられた。
「おい、そこのでこぼこトリオ。アリスのねーちゃんが呼んでたぞ。指名依頼が入ってるってさ」

 なんだと、指名依頼?
 指名依頼とは文字通り、担当冒険者を依頼主が指名するタイプの仕事だ。
 薬草採りなんかは、毎度同じ担当者の方が勝手もわかって融通が利くので、低ランクでも意外と指名される冒険者は多い。
 ただ、普通は、なじみの関係からだ。よほど有名なパーティーでない限り、一見さんから指名なんかされない。

 依頼書を見て、俺は眉間にしわを寄せる。
「なんだこれは?」

「なんだもなにも、見ての通り、お城からの依頼ですよ。でも変ですねー、大抵は担当部署の名前も書いてあるのに、王様の印鑑が押してあるだけ。まるでこれって、王様が直接依頼してるみたいな書き方じゃないですか」

 アリスは相変わらず、やけに俺の顔の近くに寄ってくる。近いぞ。そんなにのぞき込まなくても、受付のお前は先に読んでいるだろう。
 さて、それはともかくアリスの疑問はもっともだ。
 第一、俺たちが指名される理由がわからない。実力的にはともかく、世間的には俺たちは、発足したての無名パーティー。ランクだって、こないだやっとEに昇格したばかりだ。

 顔を見合わせる俺たち。
 そこに、マスターが酒を運びながら口を出してくる。

「依頼の件は知らねーけどよ。お前ら、初心者をよく助けてたりしてたろ? 実力ランクはともかく、面倒見がいいギルドってことで、意外と評判はいいんだぜ。おおかたその噂でも流れて、新兵の特訓にでも呼ばれたんじゃねえの?」

 うーん、城には良い思い出がないのだが。
 かといって話も聞かずに断るのも、逆に怪しまれる気がする。

 とりあえず、行ってみるか。
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