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第四章 イン・ラスト・プレイス
人質にはさせないさ
しおりを挟む城には俺とレイチェルだけで行くことになった。
サクラは万が一に備えて、ホームで待機させておく。あの時、女装をしていた俺はともかく、サクラは顔を覚えられている可能性が高いからだ。
それに、またいつ王都が襲撃されて、メンバーが危険にさらされるかわからない。さすがにゾンビーが骸骨になってしまうのは不憫だ。護衛はつけないと。
俺に誘われたレイチェルは、不安そうだった。
「ついてこいっていうなら行きますけどー。でも、私、いざ戦いになったら足手まといですよ? 人質にされたら、迷惑かかっちゃいますよ?」
「そんなことさせないさ。それにまさか、王城に死体や幽霊を連れて行くわけにもいかないから、レイチェルが戦力外なのもわかっている。大丈夫だ、俺達の命が狙いだというなら、こんな回りくどい手なんて使わないさ」
「そうですかねー?」
うーん、お前一人くらいのほうが、かえって守りやすいんだけどなあ。
それに、この世界の常識や政治などに一番詳しいのは彼女だ。
頼りにしている。そう言うと、レイチェルは少しだけ笑ってくれた。
城についた俺たちは、メイドに案内されて城の一室に通された。ずいぶん奥まった部屋だ、窓もない。部屋の入り口を通るとき、魔術結界をくぐった時のような違和感があった。
のほほんとしているレイチェルに悟られないよう、俺は警戒レベルを2つほど上げておく。
長いテーブルに座らされて茶を出されるが、当然口を付けずに待つ。
少しして、二人の男が入ってくる。入り口に立っていた兵士たちは、緊張した様子で敬礼する。
おいおい、そう緊張していてはとっさの時に動きがにぶるぞ。優しい俺は兵士の心配をしてやった。
あ。
入ってきた二人の男のうち片方は、見覚えがある。
あの時とまるで様子が違うのですぐには気付かなかったが――
俺は立ち上がり、さっと頭を下げようとする。え?と戸惑うレイチェルに、俺はそっと耳打ちする。
「この男は、この国の王だぞ」
「ふえっ? ええっ、おうさまぁ?」
大声を出し、慌てるレイチェル。ため息をつき、うなだれる俺。
そんな俺達を見て、王は気さくに笑って言った。
「はっはっは、まあよい、今回はお忍びみたいなものだ。楽にしてくれてかまわん」
王に促され、再び椅子につく俺たち。
「さて、私はリチャード・トレント・アサルセニア。アサルセニアの国王だ」
「は、はいー」
レイチェルは、テーブルに頭を擦りつける勢いで小さくなっている。
「で、その王が俺に何の用だ?」
「おい、貴様、少しは礼儀というものをだな……」
隣の貴族が俺に小言を言ってくる。あいにくだが俺は、マリアのことで機嫌が悪い。仲間が死ぬ原因になった相手に、簡単に頭を下げるつもりはない。
「ごたくはいい。それより、何の用だと聞いている」
「かまわん、大臣よ。表面だけへりくだった態度をとる輩より、この男の方がよっぽど正直で信用できる」
「しかし……」
「わしが良いと言っているのだ」
「は、はい」
王がじろりとにらむと、大臣はそこで沈黙した。
「まずは礼を言わねばな。君たちのおかげで、あの魔族を無事撃退することができた。情報はいろいろ集めさせてもらったよ。街で活躍した女魔術師や女騎士というのは、そなたたちのことだろう?」
「なるほど、そこまでわかっているということは、お飾りの王ということではないようだな」
「イングウェイさんっ!! しーーっ!」
レイチェルの顔はすでに蒼白だった。
「はっはっは、正直だな。そんな君たちを信用して、一つ頼みがあるのだ。私からの直々の指名依頼だ、受けてくれるかね?」
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