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第四章 イン・ラスト・プレイス

ソード・アンド・マジック

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 王の依頼に対し、俺は言った。
「内容を聞いてからだ」

「まあ、その反応は当然だな。君は、王立魔法学院は知っているかね」
「……一般常識程度なら」

「結構だ。実はそこでとある女生徒がトラブルを起こしてね。それの解決を頼みたい」

 ……ん?
 ちょっと待て、俺は男だぞ、なんで魔法学院に?

「別に魔法がらみではないさ、人間関係のトラブルだ。それに、君なら女性に紛れていてもばれないだろう?」
 王は意味ありげに笑う。

「どういう意味だ?」
 一応聞き返してみる。
「なに、大した話ではないさ。君は美形だから、女装して潜入しても、簡単にはばれないだろうと思っただけさ。なにせ、あの勇者も見破れなかったくらいだからな」

 くそう、こいつめ、王の分際で俺を脅す気か。
 俺はしぶしぶ依頼を引き受けた。


 翌日、俺は魔法学院にいた。もちろん、女装をして。

「えー、今日から新しい先生を紹介します。冒険者として実戦で鍛えてきた方ですから、皆さんに足りない実用的な魔法の使い方などを学べると思いますよ」
「……今日から予備講師として派遣された、エチレン・テレフタレートです。よろしく」
 エチレン・テレフタレートというのは、俺の偽名だ。
 メガネの担任教師に紹介され、ぶすっとふてくされながらも自己紹介をする。
 我ながら往生際が悪いなと思うけれど、納得できないから仕方がないだろう。

「なにあれ、すっごい美人!」
「でも魔力少なそうね、なんでこの学院に?」
「剣術の授業じゃないの? 冒険者って色々するらしいし」

 まったく、好き勝手言ってくれるな、こいつらめ。

 王から直々に頼まれた依頼というのは、なんと不登校児の教育だ。まったく、いくら冒険者が何でも屋だからといっても、限度というものがあるだろ。そもそも女子校じゃないかここは。くそう、ぶつぶつ。

「せんせー、冒険者だったんですよね? 得意な術系統を教えてくださーい」
 生徒の質問が飛んでくる。

「攻撃呪文が専門だが、研究職にもついていたのでな。魔法陣でも薬学でも、一通り教えられるくらいの知識はあるぞ。属性という意味で聞いたのなら、炎属性が得意だが、特に不得意な系統はない」

「はい? あの、今なんて?」
 ん、担任よ、横にいたお前がなぜ聞き取れないのだ。そんな小さな声で言った覚えはないぞ。
「魔術なら、ほぼ全属性が使える、と言ったのだ。校長から説明とかなかったのか?」
「い、いえ。 冒険者は器用な人が多いと聞きますが、まさか全属性使える人というのは、聞いたことが……。それに、校長からは、剣術が専門だと」

 担任はメガネをくいっとあげながら、俺の胸元を凝視した。……あ、しまった。いつもの調子でやってしまった。
 この場だけならともかく、国王が噛んでいるとなると、魔法を使えること自体を隠しておかないとまずいだろう。

「すまん、使えるというのはナシだ。教えられる。知り合いに強力な魔術師がいたからな。専門は剣術だ」

 すごーい、かっこいい、などの声が聞こえてくる。まったく、がやがやと落ち着きのない教室だ。
 さっさと不登校児とやらの問題も解決しなければならないのだが。
 俺は頭痛がしてきて、頭を抱える。

 さて、と。まずは仕事をしておくか。
「おっと先生、あそこの席が空いているようですが、お休みですか?」

 先生はメガネの奥の瞳を曇らせて、言いづらそうに言った。
「え、ええ。実はちょっと長期間お休みしている生徒が一人いまして……」

「名前をうかがっても?」
「キャスリーです。キャスリー・レノンフィールド。まじめで優秀な生徒ではあったのですが」

 ……はい?
 今度はこっちが驚く番だった。
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