賢者、二度目の転生――女性しか魔術を使えない世界だと? ふん、隠しておけば問題なかろう。(作中に飲酒シーンが含まれます、ご注意ください)

鳴海 酒

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第四章 イン・ラスト・プレイス

依頼は嵐のように

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 俺は頭を抱えつつも、キャスリーの腕を優しく持ち上げ、≪回復ヒール≫をかける。
 キャスリーが苦しそうな声で聞いてくる。
「メアリーの方が重傷ですわ、そちらが先ではなくて?」

 重傷、か。残念ながら、すでに手遅れだ。
 俺は死療術ネクロマンシーなんて使えない。もし使えるのであれば、とりあえずメアリーをゾンビにしておいて、帰り道であらためて暴漢にでも暗殺されたことにすればよいのだが。

 いや、そもそも今逃げたところで、上の人間には俺の素性も知られているし、キャスリーの立場だって悪くなるだけだ。

 頭を抱えていると、救護班ヒーラーが現れる。

「こ、これは」
「死んでますね」
「困ったな」

 俺も同意見だった。



 俺はそのまま学院の最奥にある会議室へと連れていかれ、事情聴取を受けることになった。
 担当は鋭い目つきの、数人の教師ら。宮廷魔術師も兼ねているという、この学院のトップたちだ。

「だから、決闘で死んだといっているだろう」
「なぜ授業中に決闘を? しかも真剣で」
「それも言ったはずだ、キャスリーの汚名をすすぐためだ」

「話になりませんね」
 それはこっちのセリフだ。言いかけたところを、すんでのところで飲み込む。ここでケンカをしても始まらない。冷静にならねば。

 俺がイライラしながら聴取を続けていると、とみに扉の向こうが騒がしくなった。空気がぴんと張り詰める。
 ばんっと音を立て勢いよく扉が開き、一人の男が入ってきた。

「……あいつは、もしかして?」

 俺が思った通り、その男は、城で王の依頼を引き受けたときに、隣にいた貴族だった。

「ジョン・ハワードだ。先日の依頼のとき以来だな。――まったく、だから俺は冒険者を雇うなんて反対だったんだ。まったく、面倒なことをしでかしやがって」

 ジョンと名乗った男は、椅子にも座らず、俺を見下ろして言った。

「私はお前を信用していない。が、法は法だ。処分を伝えるぞ」
 そういって彼は、懐から何か取り出し、読み上げる。

「今回の件は、正々堂々と決闘の作法にのっとったものであり、その結果も正当なものだ。故に、法的な処罰はない。だが、そのきっかけとなった揉め事自体は、キャスリー・レノンフィールドにも非がある。
 よって、本日をもって、キャスリー・レノンフィールドは当学院を退学。予備教師であるエチレン・テレフタレートは解雇する。
 なお、エチレン・テレフタレートは、キャスリー・レノンフィールドをレノンフィールド家へと送り届けること」

 なんだそりゃ。俺は首をかしげる。
 処分自体も甘く感じるが、俺への依頼も含めているとは。これではまるで――

 俺は、よほど何か言いたげな顔をしていたのだろう。ジョンがそっと俺に近づき、小声で囁いた。

 ひそひそひそひそ。

 ……なるほど、そういうことか。最初の依頼の時点で、いろいろと妙な話だとは思っていたが。これですべて納得がいく。

「わかったよ。その依頼、引き受けよう」
「当たり前だ。ああ、これも渡しておく。少ないが、路銀だ」

 そう言ってジョンが渡してくれた袋には、十分過ぎる量の銀貨が入っていた。
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