賢者、二度目の転生――女性しか魔術を使えない世界だと? ふん、隠しておけば問題なかろう。(作中に飲酒シーンが含まれます、ご注意ください)

鳴海 酒

文字の大きさ
34 / 200
第五章 ダンジョン・デストラクション

木刀・オブ・デストラクション

しおりを挟む

 手紙を読んだエドワードは、眉間にしわを寄せて、かなりの間沈黙していた。
 眉間にしわを寄せ、天を仰ぎ、そして、俺を睨む。

 涼しい顔をして受け流しておくが、あまりいい気はしない。

 夕飯までこのままなのだろうかと俺が思い始めたころ、エドワードはやっと、重たい口を開いた。

「イングウェイ殿。あなたは、王とどういう関係で?」

「王城が襲われた時に、城へ突入して、たまたま王を助けただけです」
 俺は簡潔に一言で説明する。

「そうですか」

 エドワードは手紙を懐にしまうと、俺に言った。

「イングウェイ殿、頼みがあります」
「私にできることなら」
 別に断る理由も無い。
「では、わしと剣で試合をしていただきたい。ああ、そちらが得意な武器があれば、剣でも槍でもかまいませんが」

「……は?」
 ちょっと待て、おっさん。話が見えん。
「レノンフィールド侯、理由を教えていただいても?」
「娘の恩人に大変無礼だとは思うのですが。すぐに用意いたしますので」

 話を聞け。



 結局すたすたと場所を移すエドワードに流される形で、屋敷内の訓練場へと移動する。
 エドワードは上着だけを脱ぐと、適当な木刀を手に取り、正眼に構える。

「さ、どうぞ」

「どうぞって言われても、俺にはあなたと戦う理由が無い」
「そうですか。では、すぐに作りましょう」

 言うが早いか、エドワードは一気に間合いを詰めると、俺ののどに向かい突きを放つ。
 確かに鋭いが、殺気もこもっていないのはバレバレだ。俺は右足を軽く引き、剣をかわしつつエドワードの利き手を掴む。
 人間の腕は、体に対して外側に曲がるようにはできていない。単純だが効果的な拘束術だ。

 が、エドワードはエドワードで、さらに上手だった。
 というより、さすが武門の頭領というべきか。

 エドワードは片手だけで俺の体を浮かせると、そのまま蹴りはがそうとしてきたのだ。

「おい、さすがに強引過ぎだろう」

 俺もスイッチを切り替え、魔力を高める。筋力を増大させ、エドワードの太い足をがっしりと受け止める。

「む、なかなかやりますな。では、これでっ!」

 エドワードが連続で剣を振る。
 扇風機かお前は。だいたいお前、好きな武器を――とか言ったくせに、素手の俺に対してムチャしやがる。

 しのげなくはないだろうが、さすがに苦しい。
 やれやれ、この世界の男たちを舐めていたな。鍛え上げた筋肉にはしっかりと魔力が乗っている。
 なかなか厄介な戦い方だ。
 
 俺は腕に魔力を集め、青白い盾を作る。木刀を一瞬でからめとると、次の瞬間左手で光の縄を作り、エドワードを≪拘束バインド≫した。

 今度は、驚いたのはエドワードのほうだった。

「なっ、これは、魔法? しかもこんなに素早く、無詠唱で使用するとは」

「気が済んだか? 試合というなら、これで勝負はついていると思うがね」
「ああ、わしの負けだ。認めよう」

 俺は拘束を解く。ふっと光の輪が消えた。

「今のは魔法ですか? その、失礼した。あなたのことを男だと思っていたのだが」

 俺は深くため息をつき、頭を抱えた。
「男だよ、れっきとした男だ。なぜ魔法を使えるのかは、知らん。そっちで考えてくれ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく

かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。 ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!? 俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。 第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。 「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」 信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。 賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。 様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する! 異世界ざわつき転生譚、ここに開幕! ※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。 ※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々

於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。 今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが…… (タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)

神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。 神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。

異世界転移物語

月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

処理中です...