賢者、二度目の転生――女性しか魔術を使えない世界だと? ふん、隠しておけば問題なかろう。(作中に飲酒シーンが含まれます、ご注意ください)

鳴海 酒

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第五章 ダンジョン・デストラクション

魔弾の射手

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「彼女は俺が責任をもって、幸せにしてやろう」
「えっ、イングウェイ様、それって……。ぽっ」
 顔を赤くするキャスリーに、俺は冷静に突っ込んでおく。誤解は早めに解かないとめんどくさいからな。

「キャスリー、何を勘違いしているかしらんが、お前は明日からうちのギルドで引き取ることになった」

 エドワードも、重い口を開いた。
「キャスリー、巣立ちの時だ。この家を出て、イングウェイ殿とともに行くといい」

 キャスリーはびくんと震え、姿勢を正した。いろんな感情がごちゃ混ぜになった顔をしている。不安、怯え、安堵、諦め。
「やはり、学校を退学になったから? わたくしはレノンフィールド家にふさわしくない、と」

 説明に詰まるエドワードに、俺は助け舟を出す。
「お前を守るためだ、キャスリー。今回の件で少し身を隠したほうがいいという判断でな。それとも、護衛が俺では不安か?」

「い、いえ、そういうわけでは」
「なら、決まりだな」
「でも……」

 煮え切らないキャスリー。エドワードは大きめの箱を取り出し、開けた。
 これは……、どこで一体これを?

「これは、お前の母親の形見の武器だ。銃という。魔法を込めて引き金を引くと、打ち出せる。これをお前に預ける」

「すごい。でも、こんな大切なものを?」
「大切なものだからこそだ」

 キャスリーはしばらく銃を胸に抱いていたが、やがて、力強く頷いた。

 感動のシーンではあるが、俺の脳みそは、その銃を見た瞬間、思考を停止していた。
 魔導銃。魔術が込められた弾丸や、魔力そのものを弾として打ち出す武器だ。

 日本で創造されたファンタジーという世界観の中では、銃は地球の科学の産物として扱われていた。だが数は少ないものの、銃や砲自体は、前々世でも魔法武器として使用されていた。魔法にしろ火薬にしろ、照準を付けて飛び道具を発射する用途の武器なら、似たような形になるのはむしろ自然なことだろう。
 俺が驚いた原因は、そんなことではない。


 その銃は、俺が良く知っているものだった。
 M1873、コルト・シングルアクション・アーミー。ピースメーカーとも呼ばれる、リボルバーだ。

 なぜ、この銃がここに?


 翌朝、俺たちは王都へ戻るため、出発した。

「お父さまー、行ってきますですのー!」
 キャスリーは何度も振り返り、大声で叫ぶ。エドワードは苦笑いを浮かべながら、いつまでも手を振っていた。

 ようやく屋敷も見えなくなり、キャスリーも少しは大人しくなるかと思いきや、今度は銃を構えて試し打ちを始める。
「急に敵が出てきたら大変ですの!」
 ああ、その心構えは大切だ。心だけで、体は油断だらけだがな。

 銃の操作方法は、意外と単純らしい。魔力を手からグリップに送り込んで引き金を引くと、魔力で精製された弾丸が飛び出す。
 しかも、込めた魔力の属性により、弾丸の属性も変わるようだ。

 なかなか手の込んだ武器だが、マリアに複製させてみようか? オリジナルは、いったいどこの誰が作り出したのだろうか。

 道中出会った魔物たちに試し打ちをする。

 ごぶー!
 ぱんっ、ぱんっ!
 ぐえ、ごっふー。

「すごいですの! ゴブリン程度なら一撃ですわね」

 俺は冷静にゴブリンの死体を観察する。
 なるほど、意外と属性が乗るというのは便利だな。そして弾速も狙いも素晴らしいが、貫通力はいまいちか。
 いや、違うな。これは魔法の弾丸だ。きっと貫通力なども、込めた魔法や魔力の質でコントロールするのかもしれない。
 あとはもう一つ確かめたいことがある。俺はキャスリーの胸を揉んだ。

 もぬんもぬん。

「きゃあ、な、なにするんですの!」

「気にするな。魔力残量を詳しく見ているだけだ。……なるほど、やはり消費魔力がかなり少なく抑えられている。すごい武器だな、これは」

「え、そうですの……?」

 母親の形見を褒められて、よほど嬉しかったのだろうか。キャスリーは真っ赤な顔をして照れていた。
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