39 / 200
第五章 ダンジョン・デストラクション
冒険へのカウントダウン
しおりを挟むダンジョン。
それはただの洞窟とは明確な区別がある、摩訶不思議なマジカル空間。
貴重なアイテムに、強力なモンスター。罠もあれば、休憩所もあり、場合によっては屋内なのに太陽があったりもする。
特筆すべきは、その変化・再生速度の速さ。
ダンジョンの奥にはダンジョン核(コア)がある。それが周囲の魔素ゆがめ、変化させているという理論が一般的だが、それにしても生み出されるエネルギーは途方もないものがある。まだまだダンジョンには謎が多い。
前世の経験と知識を持つ俺にはわかるのだが、ダンジョンはとてつもない資源の山だ。
日本にもダンジョンがあったならば、あんなにくどくど原料を節約しろだとか上からせっつかれることもなかっただろうし、製品だって強気で値上げ交渉に臨めただろう。そうすれば俺だって、機械を停止させる手間を惜しんで、金型に頭を挟んでしまうことも無かったはずだ。
無念だ。
「どうしたんですの、インギー? そんな複雑な顔をして」
「ああ、すまない。ちょっと昔を思い出していた」
「ふーん、まあいいのですけど」
キャスリーはあまり気にしていないようで、ギルド内にいる冒険者たちをキラキラした目で見つめていた。
そう、ここは冒険者ギルド。俺たちは、キャスリーのメンバー登録と、ダンジョンに入るためのギルド登録申請に来たのだ。
ダンジョンは資源の山でもあるが、同時に危険な場所でもある。死亡率も高い。
というわけで、ダンジョンに入るには登録制となっている。
登録といっても、特別な試験などがいるわけではない。金はいるけど。4人以上のパーティーを組み、いくつかの書類を出すと、正式にギルドとして認められる。
冒険者ギルドと区別して個人ギルドとも呼ばれることもあるが、組織的には、王国の冒険者ギルドに所属する下位ギルドという立場だ。
受付嬢はいつものアリス。知った顔だ、話が早くて助かる。……と思っていたら。
「はいはい、これに記入したら向こうね。 え? てきとーに書けばいいじゃないですかあ。 わからない? はあ? お優しい経験者が横にいるんでしょ? あーうらやまちいですねえ、教えてもらえて。まったく、何人女の子をはべらかせば気が済むんでしょうかねえ!」
「アリス、お前、酒臭いぞ」
「そりゃあ飲んでますからねえ。この街でフローラルの香りがするのは、トイレだけですよぉ」
「……ギルドの受付って、こんな感じですの? 男子生徒用の学食だって、もう少し品がよろしかったわよ?」
「まあまあ、キャスリーさん、気にせずちゃっちゃと書類出して行きましょう」
あきれるキャスリーだったが、レイチェルに教えてもらい、ちゃっちゃかと書類を記入していく。
さすがレイチェルだ、酔っ払いへのスルー力が高い。普段から酔っぱらっているだけはある。
レイチェルは病院をきりもりしているだけあって、一般常識力もかなりのものだ。
ずぼらなだけで、やるときはやるのだ。
「ちょっとインギー、ここってどう書けばいいんですの? レノンフィールドの名を書いてよいのかしら」
「ああ、問題ないだろう。細かいことを気にしてはいけない」
キャスリーが腕にしがみつきながら質問してくる。ちょっとくっつきすぎではないだろうか。せまい、じゃまだ。
「えー、インギーさんって呼ばれてるんですか? いいなー。私もそう呼んでいいですか?」
だめだ。お前ももう少し離れろ、ジャマだ。
俺、サクラ、レイチェル、マリア、そしてキャスリー。5人の名前を記入したあと、俺は用紙とにらめっこを開始する。
パーティー名と、ホームの登録。ホームはレイチェルの家で決まりだとして、問題はパーティーの名前だ。
「ギルド名は、イングウェイさんに任せますよ。かっこいいのをお願いしますね!」
お願いしますと言われても、いったいどうしたものか。
「レイチェル、お前、何かいい考えはないか?」
「特にありませんよ。てきとーでいいんじゃないですか? ギルド『ビール党』とか、そんなんで」
そうはいってもなあ。何でもいいと言われるのが一番困る。俺にはこういうセンスはないのだ。
うんうんと唸った結果、名付けた名前。
それは――、
帰り道。
キャスリーはギルド登録用紙の控えを眺めながら、俺に聞いた。
「ねえインギー、このパーティー名の『ミスフィッツ』って、どういう意味ですの?」
「ん、ミスフィッツか? なんと説明すればいいか……。そうだな、俺たちみたいなやつらのことさ」
「俺たち、ですの?」
「ああ。俺たち、だ」
微笑む俺の横で、キャスリーは首をかしげていた。
1
あなたにおすすめの小説
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~
草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。
レアらしくて、成長が異常に早いよ。
せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。
出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。
50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく
かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。
ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!?
俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。
第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。
「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」
信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。
賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。
様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する!
異世界ざわつき転生譚、ここに開幕!
※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。
※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。
元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々
於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。
今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが……
(タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)
神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由
瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。
神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる