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第五章 ダンジョン・デストラクション
アルコール・イン・マイ・マウス
しおりを挟む「――『私は振り向き、お前の顔を覗き込む。
鏡の中で泣き叫べ、寒さでのたうち回るがいい。
無数の茨がお前を貫く』
――≪横たわる無数の茨≫!」
枝分かれした魔力の光が床を伝い、モンスターに触れると次々と巨大な石筍となって実体化する。
ぎゃうっ、ぐぎゃあー、がおー、ぐふゅっ。
「ふう、久しぶりにまともに呪文の詠唱をしたな」
獅子たちの死体の中、俺は大きく息を吐いた。
詠唱は魔法の発動の補助となる、大切な手順だ。その中には、魔法の方向や威力の指定も含まれる。
慣れてきたら省略することはできるが、酔っぱらって使用する場合には、やはり詠唱を推奨する。
これは何も魔術に限らない。工場内でも同じようなことをしていた。指差し確認、ヨシ!だ。
サクラが消えていった暗闇の先に、目を向ける。遠くで激しい魔力の躍動を感じる。
俺にできるのは、サクラを信じることだけだ。
吐き気は少しだけ収まってきたが、肉片の数を数える気にはなれない。めまいがする。
数えられないわけではない、数える気がしないだけだ。
俺の体をむしばむ毒(アルコール)は、まだまだ増加中だった。
そう、懲りずに俺は飲み続けている。
チェイサー代わりの梅酒ソーダ割りは、キャスリーから奪った。
仕方ないのだ、眠るキャスリーと力尽きたレイチェルを置いて、ここを離れるわけには……っと、いろいろと考えているうちにサクラが戻ってきた。なんと、獣人の娘も一緒だ。
「イングウェイさーん、ってうわ! なんですかコレ! すっごい、大惨事ですよ!」
「ああサクラ、実は5匹以下の獅子に襲われてな」
「4匹しかいませんよ!?」
「じゃあ4匹だ。とりあえず倒しておいた。うえっぷ。……ところでそちらの娘さんは?」
俺はサクラの後ろでドン引き気味の獣人に声をかけた。
「え? ああ、フィッツ・マクバーニィさん。獣人族らしいですよ。ええと、猫娘?」
サクラは、美しい銀髪にぴょこんと飛び出た猫耳を見ながら言った。
フィッツという娘は、思い出したように自己紹介をする。
「あ、はい、猫人族のフィッツです。さっきサクラさんに助けてもらったんですにゃん、ありがとうございましたにゃあ」
「猫族?」
ああ、確かに猫耳だが。たぶんこいつ、混ざっているな。
「お前、猫ではなく獅子だろう? もっと言うと、ミルメコレオだ。珍しいな、人獅子蟻とは」
言葉を失い、絶句するフィッツ。あれ、何か俺、まずいことでも言ったか?
「にゃなな、にゃにーっ? みーのことを一目で見抜くとは、貴様、何者にゃん?」
何者かと言われても、今はただのEランク冒険者だ。
だいたい見た目で判断するから間違うのであって、きちんと内在する魔力を感じ取れば、蟻が混じっていることくらいわかるだろう。
俺がどこから説明すべきか困っていると、フィッツが口を開いた。
「お願いですにゃん、このダンジョンから外に出たいんです、助けてくださいにゃん」
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