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第五章 ダンジョン・デストラクション
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「なに? ダンジョンから出たいだと?」
驚く俺に、真剣な顔で頼み込むフィッツ。
迷って出口がわからない、というわけでもなさそうだ。当たり前か。
しかし、出るのはいいけれど、獣人族は人間社会での風当たりが強いとも聞く。
それなのにこのダンジョンを出て人間の町に行きたいとは、こいつもなかなか苦労してるのかな。
「あのー、そのまえに、うぇあみる?なんとかって何ですか?」
サクラがおずおずと手をあげて聞いてきた。
「人狼や人猪は知っているな? わりとメジャーな獣人族だが、それのミルメコレオ版だ」
「ミルメコレオって?」
やれやれ。まったく、そこからか。もっとも、サクラの住んでいた国はここらへんと文化も環境も違うそうなので、仕方ないのかもしれないが。
俺はサクラに説明をしてやる。ミルメコレオとは、ライオンの上半身にアリの下半身を持つ、合成獣の一種だ。
ライオンなので肉を食いたいのだが、アリの体では食ったものを消化できない。結局、ろくに栄養が取れず、生まれてすぐに死んでしまう。
おや、サクラ、どうした?
「うぐゅ、ひっく、ミョルコメレオンさん、可哀そう。うえーん」
感受性の強い娘だが、耳は悪いようだ。なんだよ、ミョルメコレオって。
「あれ、じゃあなんでフィッツさんは生きているんですか?」
当然の疑問だった。フィッツは恥ずかしそうに説明する。
「ええと、お父さんはミルメコレオだったんだけど、たまたまダンジョンに迷い込んだ人間の女の人と恋に落ちて、私が生まれたんですにゃあ。 お父さんは立派なミルメコレオで、生まれてすぐに死んじゃいました。けど、お母さんはお母さんで人間一人このダンジョンで暮らしていくわけにもいかず、かといって獣人の特徴を持つ私を、街に連れていくわけにもいかず……」
「なるほどな。母は悩んだあげく、お前はここに捨てられて、知能のあるモンスターにでも育てられたか」
はい、とフィッツは頷いた。
「マンティコアのエマーソンおじさんに拾われて、ここまで育ててもらったんですが、最近エマーソンおじさんも病気で死んじゃって。それで、イジワルなギザギザ・マンティコアのやつにいじめられたりもしてたんですけどにゃー」
あらためてフィッツの身体をよく確認してみる。ライオンの特徴はかなり薄まってしまっており、見た目はただの猫娘だ。アリについても外見からは完全に消失しているようにも見えるが、先程の戦闘力からすると、筋力の増加という形で、体の内部にはその属性が残っているのかもしれない。
ミルメコレオの獣人など、珍しいなんてレベルではない。見つかれば狩人たちの餌食だ。おおかた、にゃんにゃん言っていたのも、カモフラージュのためだろう。
「ダンジョンを出るのはいいとして、そのあとどうするつもりだ? 目的やあてはあるのか?」
「ダンジョンの奥には、他にもマンティコアが住んでるにゃ。エマーソンさんに助けられて今まで暮らしてたけど、本来ここに、みーの居場所はないのにゃー。あてはにゃいんだけどー、エマーソンおじさんからの遺言はあるにゃ。広い世界を見て回れって。あとは、お母さんに会えたらいいなーってのも――」
なるほど。少女の切なる願いを聞いた俺は、胸が熱くなるのを感じた。
それに、冒険への好奇心を押さえつけて暮らすのは、”人間”とは言えない。そう、彼女もまた、立派な人間なのだ。
「イングウェイさん……?」
「ああ、レイチェルに空き部屋がまだ余ってるかを聞いてみるか。なに、今更一人くらい増えたところでかまわんだろう」
「やったー!」
「うれしいにゃん、ありがとにゃん!」
俺はフィッツ・マクバーニィのギルド入会を、勝手に了承した。
驚く俺に、真剣な顔で頼み込むフィッツ。
迷って出口がわからない、というわけでもなさそうだ。当たり前か。
しかし、出るのはいいけれど、獣人族は人間社会での風当たりが強いとも聞く。
それなのにこのダンジョンを出て人間の町に行きたいとは、こいつもなかなか苦労してるのかな。
「あのー、そのまえに、うぇあみる?なんとかって何ですか?」
サクラがおずおずと手をあげて聞いてきた。
「人狼や人猪は知っているな? わりとメジャーな獣人族だが、それのミルメコレオ版だ」
「ミルメコレオって?」
やれやれ。まったく、そこからか。もっとも、サクラの住んでいた国はここらへんと文化も環境も違うそうなので、仕方ないのかもしれないが。
俺はサクラに説明をしてやる。ミルメコレオとは、ライオンの上半身にアリの下半身を持つ、合成獣の一種だ。
ライオンなので肉を食いたいのだが、アリの体では食ったものを消化できない。結局、ろくに栄養が取れず、生まれてすぐに死んでしまう。
おや、サクラ、どうした?
「うぐゅ、ひっく、ミョルコメレオンさん、可哀そう。うえーん」
感受性の強い娘だが、耳は悪いようだ。なんだよ、ミョルメコレオって。
「あれ、じゃあなんでフィッツさんは生きているんですか?」
当然の疑問だった。フィッツは恥ずかしそうに説明する。
「ええと、お父さんはミルメコレオだったんだけど、たまたまダンジョンに迷い込んだ人間の女の人と恋に落ちて、私が生まれたんですにゃあ。 お父さんは立派なミルメコレオで、生まれてすぐに死んじゃいました。けど、お母さんはお母さんで人間一人このダンジョンで暮らしていくわけにもいかず、かといって獣人の特徴を持つ私を、街に連れていくわけにもいかず……」
「なるほどな。母は悩んだあげく、お前はここに捨てられて、知能のあるモンスターにでも育てられたか」
はい、とフィッツは頷いた。
「マンティコアのエマーソンおじさんに拾われて、ここまで育ててもらったんですが、最近エマーソンおじさんも病気で死んじゃって。それで、イジワルなギザギザ・マンティコアのやつにいじめられたりもしてたんですけどにゃー」
あらためてフィッツの身体をよく確認してみる。ライオンの特徴はかなり薄まってしまっており、見た目はただの猫娘だ。アリについても外見からは完全に消失しているようにも見えるが、先程の戦闘力からすると、筋力の増加という形で、体の内部にはその属性が残っているのかもしれない。
ミルメコレオの獣人など、珍しいなんてレベルではない。見つかれば狩人たちの餌食だ。おおかた、にゃんにゃん言っていたのも、カモフラージュのためだろう。
「ダンジョンを出るのはいいとして、そのあとどうするつもりだ? 目的やあてはあるのか?」
「ダンジョンの奥には、他にもマンティコアが住んでるにゃ。エマーソンさんに助けられて今まで暮らしてたけど、本来ここに、みーの居場所はないのにゃー。あてはにゃいんだけどー、エマーソンおじさんからの遺言はあるにゃ。広い世界を見て回れって。あとは、お母さんに会えたらいいなーってのも――」
なるほど。少女の切なる願いを聞いた俺は、胸が熱くなるのを感じた。
それに、冒険への好奇心を押さえつけて暮らすのは、”人間”とは言えない。そう、彼女もまた、立派な人間なのだ。
「イングウェイさん……?」
「ああ、レイチェルに空き部屋がまだ余ってるかを聞いてみるか。なに、今更一人くらい増えたところでかまわんだろう」
「やったー!」
「うれしいにゃん、ありがとにゃん!」
俺はフィッツ・マクバーニィのギルド入会を、勝手に了承した。
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