68 / 200
第七章 製造と販売
シーバット
しおりを挟む街を歩く吸血鬼が一匹。
雨の中、吸血鬼が歩く。 そう、雨だ。ということはつまり、曇っている。
太陽が苦手なはずの吸血鬼が、昼間に歩ける理由がそこにはあった。
吸血鬼は厄介な魔物だ。太陽をはじめとする弱点は多いが、逆にそのせいで、姑息な立ち回りを覚えていく。永遠の時の中で積み重ねた知能、知識。
経験を積んだ伝説の吸血鬼の中には、魔王すら手玉に取ったものがいたらしい。
「ステータス、オープン」
名前:リーインベッツィ
種族:吸血鬼
年齢:451
LV:81
特殊能力:吸血、LVドレイン、血の誘惑、外観変移、飛行…
特技:闇魔術、吸血…
真っ黒のウィンドウに、白抜きで書かれた文字。ステータスを現すグラフは、かつての面影がないほどに貧弱なものだった。(とはいえ、並の冒険者では束になってもかなわない程度の力はあったのだが)
「あー、ずいぶん貧弱になったものじゃのう。体だけはぴちぴちなのじゃが」
その吸血鬼は、幼女の外見をしていた。ぴちぴちすぎて、胸はつるぺた。特殊能力でもう少し成長した姿に変身しても良いのだが、ムダに魔力を使いたくはない。
リーインベッツィは、はるか昔にアサルセニアの地下に封印された、吸血鬼の祖ともいえる存在だ。
才能はあったのだが、いかんせん血が苦手だったため、特殊な液体で魔力を保っていた。が、封印されてからは吸血はおろかその液体すら取り込めず。ステータスを削りながらも生きていたのが先日までの話。
突然何者かに呼び出され、ふと気づくと粗野な盗賊らに囲まれていた。弱体化しているとはいえ、そこは腐っても吸血鬼。ただの盗賊が相手になるはずもなく。
盗賊たちは数だけは多かったために、リーインベッツィは数名を殺したあと、闇魔術で不死者に変えた。あとは楽して同士討ちを待つだけだ。
腹が減りすぎて少しだけ血を飲もうとしたものの、ゾンビにした者の血は、腐って飲めたものではなかった。
そうしてこうして、なんとか食料を求めて地上まではい出てきたのが、今日のお昼のこと。
リーインベッツィは、ぴくりと鼻を鳴らす。
「この匂いは……! どこじゃ、どこじゃー?」
角を曲がり、橋を渡り、見つけた家は妙にアルコールの香りが強い。
「ここは、病院……かのう?」
まあいい、そんなことはどうでもいい。今欲しているのは――
バタバタと忍び込み、ドアを開ける。
そこには、
「あれー、なんでちゅか、この幼女はー?」
やけに魔力袋の発達した、黒髪の幼女がいた。
「お前だって幼女ではないか! それよりそれ、そのグラスじゃ! ちょっと見せい!」
リーインベッツィは少しむかついたが、それよりも黒髪の女の持っているグラスから目が離せない。
夢にまで見た、濁った赤の酒。レッド・アイ。
「おお、よこせ! それはレッド・アイじゃろう!? わしの大好物、命の源なのじゃー!」
「むっ、まだあなたにアルコールは早いんでちゅ!」
まっとうなことを言って断ろうとするレイチェルを、リーインベッツィは蹴り飛ばし、酒を奪う。
ごくりごくりと飲み干す。軽い炭酸が喉を駆け上がってくる。下を向き、目をじっと瞑って抑え込む。
「っっぷっはあーーーー! うまーいっ!」
「あいってて、なんですかあなた、それが気に入ったんですか?」
「おう、もっとよこせ。さっきは思わず蹴り飛ばしてすまなかったな、腹が減りすぎて我慢が出来なくてのう。あ、わしは吸血鬼じゃ。400歳はとうに越しておるし、人間の法律など気にせんでよいからの。もっと酒をくれ」
「あら、年上なんでちゅの。なら問題ないですわね。一杯どうぞ」
二人は意気投合した。
1
あなたにおすすめの小説
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~
草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。
レアらしくて、成長が異常に早いよ。
せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。
出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。
50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく
かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。
ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!?
俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。
第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。
「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」
信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。
賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。
様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する!
異世界ざわつき転生譚、ここに開幕!
※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。
※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。
元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々
於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。
今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが……
(タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)
神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由
瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。
神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる