賢者、二度目の転生――女性しか魔術を使えない世界だと? ふん、隠しておけば問題なかろう。(作中に飲酒シーンが含まれます、ご注意ください)

鳴海 酒

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第七章 製造と販売

シーバット

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 街を歩く吸血鬼が一匹。
 雨の中、吸血鬼が歩く。 そう、雨だ。ということはつまり、曇っている。
 太陽が苦手なはずの吸血鬼が、昼間に歩ける理由がそこにはあった。

 吸血鬼は厄介な魔物だ。太陽をはじめとする弱点は多いが、逆にそのせいで、姑息な立ち回りを覚えていく。永遠の時の中で積み重ねた知能、知識。
 経験を積んだ伝説の吸血鬼の中には、魔王すら手玉に取ったものがいたらしい。

「ステータス、オープン」

 名前:リーインベッツィ
 種族:吸血鬼
 年齢:451
 LV:81
 特殊能力:吸血、LVドレイン、血の誘惑、外観変移シェイプシフト、飛行…
 特技:闇魔術、吸血…

 真っ黒のウィンドウに、白抜きで書かれた文字。ステータスを現すグラフは、かつての面影がないほどに貧弱なものだった。(とはいえ、並の冒険者では束になってもかなわない程度の力はあったのだが)

「あー、ずいぶん貧弱になったものじゃのう。体だけはぴちぴちなのじゃが」

 その吸血鬼は、幼女の外見をしていた。ぴちぴちすぎて、胸はつるぺた。特殊能力でもう少し成長した姿に変身しても良いのだが、ムダに魔力を使いたくはない。


 リーインベッツィは、はるか昔にアサルセニアの地下に封印された、吸血鬼の祖ともいえる存在だ。
 才能はあったのだが、いかんせん血が苦手だったため、特殊な液体で魔力を保っていた。が、封印されてからは吸血はおろかその液体すら取り込めず。ステータスを削りながらも生きていたのが先日までの話。

 突然何者かに呼び出され、ふと気づくと粗野な盗賊らに囲まれていた。弱体化しているとはいえ、そこは腐っても吸血鬼。ただの盗賊が相手になるはずもなく。

 盗賊たちは数だけは多かったために、リーインベッツィは数名を殺したあと、闇魔術で不死者アンデッドに変えた。あとは楽して同士討ちを待つだけだ。
 腹が減りすぎて少しだけ血を飲もうとしたものの、ゾンビにした者の血は、腐って飲めたものではなかった。
 そうしてこうして、なんとか食料を求めて地上まではい出てきたのが、今日のお昼のこと。


 リーインベッツィは、ぴくりと鼻を鳴らす。
「この匂いは……! どこじゃ、どこじゃー?」

 角を曲がり、橋を渡り、見つけた家は妙にアルコールの香りが強い。
「ここは、病院……かのう?」

 まあいい、そんなことはどうでもいい。今欲しているのは――

 バタバタと忍び込み、ドアを開ける。
 そこには、

「あれー、なんでちゅか、この幼女はー?」

 やけに魔力袋の発達した、黒髪の幼女がいた。

「お前だって幼女ではないか! それよりそれ、そのグラスじゃ! ちょっと見せい!」
 リーインベッツィは少しむかついたが、それよりも黒髪の女の持っているグラスから目が離せない。
 夢にまで見た、濁った赤の酒。レッド・アイ。

「おお、よこせ! それはレッド・アイじゃろう!? わしの大好物、命の源なのじゃー!」
「むっ、まだあなたにアルコールは早いんでちゅ!」

 まっとうなことを言って断ろうとするレイチェルを、リーインベッツィは蹴り飛ばし、酒を奪う。
 ごくりごくりと飲み干す。軽い炭酸が喉を駆け上がってくる。下を向き、目をじっと瞑って抑え込む。

「っっぷっはあーーーー! うまーいっ!」

「あいってて、なんですかあなた、それが気に入ったんですか?」
「おう、もっとよこせ。さっきは思わず蹴り飛ばしてすまなかったな、腹が減りすぎて我慢が出来なくてのう。あ、わしは吸血鬼じゃ。400歳はとうに越しておるし、人間の法律など気にせんでよいからの。もっと酒をくれ」
「あら、年上なんでちゅの。なら問題ないですわね。一杯どうぞ」

 二人は意気投合した。
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