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第七章 製造と販売
もうひとつください
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ついに俺たちは、洗濯機を売り出した。
単に売り出すだけではない。同時にキャンポーテラ教の信者を削り取るべく、洗濯業界に殴り込みをかけるのだ。
「いらっしゃいませー、洗濯がめんどくさい人いませんかー」
「見ていってよー、新しい時代を作る機械の紹介だよー」
「使ってみて気に入ったら、買っていってもいいんですのよー」
マリアとサクラ、そしてキャスリーの三人を売り子に、以前逃げ出した宗教施設の近くの路上で商品を並べる。
リサーチはすんでいる。いつものお祈りの時間が終わった後、信者たちの多くはこの道を通って住宅街へと流れていく。
「ねえ、洗濯機を売るのはいいとして、この旗はなんなのさ? ナウマン、ダーヴ? モンスターの名前かい?」
マリアは、俺が広告として用意した旗を指さして聞いてきた。ふん、さすがマリア、良いところに気付く。
「それは俺の昔住んでいた国に伝わる救いの呪文、”ナウマンダーヴ”さ。唱えるだけで、皆が救われるんだ」
そのときだ。石を投げてくる一人の子供。危ない、止めろ。俺が制止するも、聞く様子はない。
「ふんだ、なにがナウマンダーヴだ! そんな唱えるだけで幸せになんかなれるもんか! キャンポーテラ様の教え通り、お手伝いで洗濯とか料理とか、がんばって家事をしたりして、家族みんなで幸せになるんだ!」
ちょうどいいターゲットに、俺は説得を開始する。
「なるほど、君はなかなか家族思いでいい子だな。別に俺たちはキャンポーテラ様の邪魔をしようなんてつもりはない。いや、むしろ手伝いをしようとしているんだ。
ナウマンダーヴ様が作り出した、この機械。名前は洗濯機という。これを使えば、洗濯板でごしごし一枚ずつ洗うという苦痛から解放されるんだ。洗濯好きのキャンポーテラ様も、大喜びだろう?」
くっ、と子供はひるんだようだったが、なおも噛みついてくる。
「そんな機械でかき混ぜたくらいじゃ、汚れなんか落ちるはずないし、それに心だってこもらないよ!」
「あちゃー、痛いところをつくね、このガキんちょは。ボクらの洗濯機は、確かにしつこい油汚れに弱いけどさ」
ぽりぽりと青い髪をかきあげるマリア。
なに、心配するな。商売は製品の効果でやるものではない、宣伝だ。
俺は自信満々な態度を崩さず、少年に向かい合う。
「それは違うな、少年よ。汚れを落とすのは確かに大切なことだ。しかし、それによって服が傷んだらどうだろう? 俺たちは服のことも考えている。
服を傷めない新しい洗い方、それが水流による優しい洗濯。すなわち、この洗濯機だ」
「で、でも、心がっ!」
「ここをごらん、魔石がはまるようになっているだろ。ここに魔石を入れれば、この機械は魔力で動く。魔力は心の力だ。まさに、心で動いているとは言えないだろうか?」
「ぐっ、で、でも、……高いんだろう? 買えないよ、うちは貧乏なんだ。お母さんの家事を頑張って手伝って、やっと暮らしているんだ」
「ふむ、それは立派だ。だが聞いてくれ。俺のかつて住んでいた国に、こんな言葉があった。『時は金なり』と。これを使えば、洗濯をする時間で他のことができる。ほら、その時間でさらに働けば、お金が稼げるのではないか? 実質ただでこの機械が手に入るようなものだぞ」
「す、すげえ! 買う、買うよ。この機械を買って、お母さんにもっと働いてもらうんだ!」
一人目の客を落とした後は、せきを切ったように次から次へと客が押し寄せた。
あらかた客をさばききったあと、サクラが大きな袋を取り出す。これも予定通りだ。
「よいしょっと」
「おい、ピンクのねーちゃん、それはなんだ?」
「ああ、これですかー? 洗剤って言って、水に溶けやすいせっけんですよ。洗濯機は普通のせっけんだと溶けにくいので、これを使わないといけないんです」
屈託のないサクラの笑顔。商売はやはり、愛嬌だな。
単に売り出すだけではない。同時にキャンポーテラ教の信者を削り取るべく、洗濯業界に殴り込みをかけるのだ。
「いらっしゃいませー、洗濯がめんどくさい人いませんかー」
「見ていってよー、新しい時代を作る機械の紹介だよー」
「使ってみて気に入ったら、買っていってもいいんですのよー」
マリアとサクラ、そしてキャスリーの三人を売り子に、以前逃げ出した宗教施設の近くの路上で商品を並べる。
リサーチはすんでいる。いつものお祈りの時間が終わった後、信者たちの多くはこの道を通って住宅街へと流れていく。
「ねえ、洗濯機を売るのはいいとして、この旗はなんなのさ? ナウマン、ダーヴ? モンスターの名前かい?」
マリアは、俺が広告として用意した旗を指さして聞いてきた。ふん、さすがマリア、良いところに気付く。
「それは俺の昔住んでいた国に伝わる救いの呪文、”ナウマンダーヴ”さ。唱えるだけで、皆が救われるんだ」
そのときだ。石を投げてくる一人の子供。危ない、止めろ。俺が制止するも、聞く様子はない。
「ふんだ、なにがナウマンダーヴだ! そんな唱えるだけで幸せになんかなれるもんか! キャンポーテラ様の教え通り、お手伝いで洗濯とか料理とか、がんばって家事をしたりして、家族みんなで幸せになるんだ!」
ちょうどいいターゲットに、俺は説得を開始する。
「なるほど、君はなかなか家族思いでいい子だな。別に俺たちはキャンポーテラ様の邪魔をしようなんてつもりはない。いや、むしろ手伝いをしようとしているんだ。
ナウマンダーヴ様が作り出した、この機械。名前は洗濯機という。これを使えば、洗濯板でごしごし一枚ずつ洗うという苦痛から解放されるんだ。洗濯好きのキャンポーテラ様も、大喜びだろう?」
くっ、と子供はひるんだようだったが、なおも噛みついてくる。
「そんな機械でかき混ぜたくらいじゃ、汚れなんか落ちるはずないし、それに心だってこもらないよ!」
「あちゃー、痛いところをつくね、このガキんちょは。ボクらの洗濯機は、確かにしつこい油汚れに弱いけどさ」
ぽりぽりと青い髪をかきあげるマリア。
なに、心配するな。商売は製品の効果でやるものではない、宣伝だ。
俺は自信満々な態度を崩さず、少年に向かい合う。
「それは違うな、少年よ。汚れを落とすのは確かに大切なことだ。しかし、それによって服が傷んだらどうだろう? 俺たちは服のことも考えている。
服を傷めない新しい洗い方、それが水流による優しい洗濯。すなわち、この洗濯機だ」
「で、でも、心がっ!」
「ここをごらん、魔石がはまるようになっているだろ。ここに魔石を入れれば、この機械は魔力で動く。魔力は心の力だ。まさに、心で動いているとは言えないだろうか?」
「ぐっ、で、でも、……高いんだろう? 買えないよ、うちは貧乏なんだ。お母さんの家事を頑張って手伝って、やっと暮らしているんだ」
「ふむ、それは立派だ。だが聞いてくれ。俺のかつて住んでいた国に、こんな言葉があった。『時は金なり』と。これを使えば、洗濯をする時間で他のことができる。ほら、その時間でさらに働けば、お金が稼げるのではないか? 実質ただでこの機械が手に入るようなものだぞ」
「す、すげえ! 買う、買うよ。この機械を買って、お母さんにもっと働いてもらうんだ!」
一人目の客を落とした後は、せきを切ったように次から次へと客が押し寄せた。
あらかた客をさばききったあと、サクラが大きな袋を取り出す。これも予定通りだ。
「よいしょっと」
「おい、ピンクのねーちゃん、それはなんだ?」
「ああ、これですかー? 洗剤って言って、水に溶けやすいせっけんですよ。洗濯機は普通のせっけんだと溶けにくいので、これを使わないといけないんです」
屈託のないサクラの笑顔。商売はやはり、愛嬌だな。
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