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第八章 渦巻く嫉妬
グラップル・胸
しおりを挟む「いーやーだー」
「サクラ、いい加減にあきらめろ」
「いやですー! 女の子にとって、胸の格差がどれだけ重要なことなのか、イングウェイさんにはわかんないんですよぉぉー!」
「知るか、そんなことよりお前の体の方が大切だ!」
さわぐサクラを押さえつけるように、レイチェルの前に連れていく。
一人冷静なレイチェル。
「はいはい、サクラちゃん。どうちたんでちゅかー?」
「うわぁぁぁーん」
はあ、まったく。俺は深いため息を吐き、説明した。
「いきなり、サクラの胸が小さくなってしまったんです」
「ふむふむ、魔力もなんだか少なくなってる気がしますねー。ステータスは確認しましたかー?」
そういえば、慌てていてそれを確認し忘れていた。
えぐえぐと、サクラは泣きながらステータスを開く。
「うえぇぇん、ぐずっ、ずてーたす、おーぷんー」
レイチェルは横から覗きつつ、いくつかのページをスクロールして確認していく。
「ふむ、ここですね。魔力値の上限が[76/128/186]となっていまちゅ」
なんだと? 俺たちは顔を見合わせる。通常魔力値は、現在値と上限値とが並記される。三つ目のパラメータがあるなんて、初めて聞いたぞ。
「このべとべとになった胸。おっぱいに変化があった直前、何か変わったことはありませんでちた?」
俺たちはその時の状況を説明した。と言っても、どろどろに溶けた石鹸を塗り付けるようにしただけで、変わったことはなかったと思うが……
レイチェルは少し考えて、言った。
「イングウェイさん、もしかしてそのとき、魔力操作を行いませんでしたか?」
「そういえば、石鹸を探そうと、無意識に手繰り寄せるような動きをした気がする……」
レイチェルは似たようなことが無かったかどうか、他の女性の胸を触ったことがあるかどうかをしつこく聞いてきた。
記憶にあるのは、キャスリーとレイチェル。確かに、胸を通じて魔力操作を行った。
キャスリーは、体を循環する魔力を胸に集中させ、魔法を使いやすくするように。そしてレイチェルは、胸にたまり過ぎた魔力を放出して減らし、バランスを保つようにしたのだ。
「それです! イングウェイさん、あなたの手からは魔力を与えたり奪ったりする働きがあるのでちゅよ!」
レイチェルは大発見をしたかのように、俺をの両手を指さしていう。ドヤ顔をして自慢の黒髪をふぁさっとかきあげる。
見た目はただの幼女のくせに。
「いやしかし、慣れた魔術師なら他人の魔力回路を整えることくらいするだろう? 特に神官や、――そうだ、レイチェルのような医者のほうが、むしろ詳しいと思うのだが」
俺の疑問に、レイチェルは何言ってんだこいつという顔をした。
「なに言ってるんでちゅか、イングウェイさん。胸を使って魔力を受け渡したりとかいう発想、普通しませんって! そんな研究とか実験、聞いたこともありまちぇんよ!」
聞いたこともない、か。不思議なものだ。魔力を増強する手段というものはほとんどすべての魔術師が欲するものだろう。
俺が考え込んでいると、サクラが言った。
「あのー、それって、使ったら魔力を渡すんですよね? 相手の女性の胸が大きくなっちゃうってことは、もしかして代わりに自分の胸がしぼんじゃうんじゃないですか?」
「まあ、たぶん、そうだろうな」
サクラはがっくりした表情だ。
「じゃあ、誰も研究なんかするわけないですよね。自分の胸を犠牲にして相手を大きくするなんて。女性は繊細なんですから」
「それにもし思いついたとしても、絶対に自分だけの秘密にしまちゅよ。まわりがみんな使ったら、目立てなくなりまちゅからね」
この世界がかつての世界に比べ、魔力操作の面で一歩も二歩も遅れている理由がなんとなくわかってきた。魔力が脂肪に宿る構造、女性の特有の社会性。それらが複雑に絡み合っていたのだ。
ん、女性?
「なあサクラ、それなら使用者が男ならどうだ? 男性が女性の胸に魔力を送り込むのだ!」
「いやいや、何言ってるんですか。見境なく女性の胸を揉んでくる男なんていたら、ふつー殺されますって」
ああ、確かにそうだ。俺は納得した。
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