賢者、二度目の転生――女性しか魔術を使えない世界だと? ふん、隠しておけば問題なかろう。(作中に飲酒シーンが含まれます、ご注意ください)

鳴海 酒

文字の大きさ
103 / 200
第11章 パペット・パニック!

なぞのぶったい、えっくす!

しおりを挟む

 ――フィッツとゴーレムが死闘を繰り広げた、その夜のことだ。ギルドハウス地下にある工房アトリエにて。

 皆が寝静まった後も、マリアは一人で研究を続けている。いつもの日課だ。
 今夜は、イングウェイの持って帰ったいくつもの鉱石の調査。大部分は正体がわかったものの、一つだけ難航している鉱石があった。削ったりしながら特徴を調べていたが、結局よくわからないのだ。古文書にも載っていないし。
 マリアは首をこきこきとならし、大きく背伸びをする。
「んー、なんだか変な鉱石だなー」

 つぶやきながら、部屋の隅にある一升瓶に向かう。休憩と、傷口の消毒のためだ。
 コップにとくとくと注ぎ、匂いも楽しまずにぐびりと飲み干す。

「けほっ、くはー。割らないと効くなあ、やっぱり」
 元来マリアはあまり酒に強いほうではないが、アンデッド化してからは定期的に飲んでいる(というか、飲まざるを得ない)のだが、最初のころは苦労していた。
 毎日飲んでいれば、少しは酒に強くなるだろうと思っていたのだが、一向にその気配はない。コップ一杯の水割りで、頭はいつもふらふらだ。
 結局マリアは酒に慣れるのではなく、酩酊状態に慣れてしまおうと、考え方を変えた。酔った状態で普段通りの作業をし、それを普通の状態に持っていくのだ。

 もちろん一筋縄ではいかなかった。寝ぼけて頭を炉に突っ込みかけたり、貴重な鉱石を酒のつまみにかじったり。柄の部分が刃で刃の部分が柄の武器を作ったこともある。敵に奪われても大丈夫という盗難防止用だとして売り出してみた。売れなかった。
 ともかく、そのような多大な苦労の元に、今のマリアは立っている。

 ことり。かたり。

 後ろで物音がして、何気なくマリアは振り返る。
 そこいたのは、謎の生物。
 キャンポーテラ教徒が泣いてうらやみそうな、非常に機能的な体型。全身に広がる、痛々しい縫い目。アクアマリンを溶かしたような、透き通るようなクリアブルーの髪。金属製の光沢をもつボディ。
「あれ? え、あれ? 変だな、ボク、酔っぱらってたっけ?」

 普段が酩酊状態なのだ。言うまでもなく酔っぱらっている。が、それは幻ではない。確かにそれはそこに存在している。
 メタルマリアだった。

 メタルマリアは人形のように動かない。が、その瞳は確かにマリアの動きを追っている。

「ちょっと待ってよ、ええと、何があったんだっけ。インギーの持って帰った鉱石を解析してたんだよねー?」
 マリアは考えつつも、メタルマリアにゆっくり触れようとする。
 次の瞬間、

 ぎしゃあああっっ!!

「うっひゃああああああ!!!」

 メタルマリアの腹が大きく裂け、どろりとした赤黒い内臓とともに白く太い肋骨が伸び、マリアの手を食らおうとする。
 そうだ、それは腹ではない。口だ。肋骨ではなく、歯だ。

 ほとんど反射だけで、かろうじてマリアは、メタルマリアを突き飛ばす。
「ぎゃああ、化け物だーーーーっ!!」

 ドアがマリアの後ろ側にあったのは幸運だった。マリアは転びかけながらもドアを開ける。履いているホットパンツが少々生温かいが、今は考えないことにした。腰は抜け、膝で這いずるように廊下を、階段を這いあがる。

 イングウェイを探さなければ!
 なんで自分ばっかりこんな目に合うのだろうと思わなくもなかったが、とりあえずは目の前の恐怖を何とかすることだ。

「いんぐうぇーーーーっっ!!」
 ありったけの声で叫ぶ。震えて裏返った声だったが、気にしてはいられない。



 実際には一分と経っていないだろうが、マリアにとってはほとんど永遠のような時間だった。
 ガチャリとドアが開き、寝間着姿のイングウェイが現れる。
「どうした、全く騒々しい」
「ああ、いんぎー、良かった、ばっ、化け物、化け物出たのっ!」

 目をこすりながらはいはいと適当にあしらおうとするイングウェイ。マリアは必死に説明する。

「あのね、石、たぶんあれ、金属っ! ボクの体になって、なんかばくうぅっって!」

 さっぱりだ。これでわかるはずがない。焦るマリアをぐっと抱きしめ、イングウェイは言った。
「ああ、今わかった。あいつだな、原因は」
「ふえ?」

 イングウェイが見据える先。暗がりの向こうに、一匹の蠢く影が見えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく

かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。 ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!? 俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。 第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。 「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」 信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。 賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。 様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する! 異世界ざわつき転生譚、ここに開幕! ※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。 ※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々

於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。 今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが…… (タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)

神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。 神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。

異世界転移物語

月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

処理中です...