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第11章 パペット・パニック!
きずだらけのメサイア!
しおりを挟む俺は冷たい棺の中で目を覚ました。ここは、もしかして、ギルドハウスの霊安室か?
頭がぼーっとするが、なんとか正気のようだ。体を乗っ取られたような感覚も無い。……たぶん。
横を見ると、いくつかの死体。――死体だと?
焦ってその顔を見ると、焼け焦げたマリアに顔のとろけたフィッツ。猟奇的な表情でベロを出したレイチェルに。
こうしてみるとずいぶんひどいことをしてしまった。
「そういえば――!」
はっと気が付き胸を見ると、胸には手当てをした跡があった。
「気付きましたか」
背後で声がした。俺はばっと飛び起きて振り向く。
そこに立っていたのは、シャドウサクラだ。
「傷は私が治療しました」
「貴様っ!」
攻撃しようと魔力を集める俺を、シャドウサクラは慌てて止める。
「ま、待ってください! 私は敵ではなく、あなたに頼みがあってっ!」
なんだと? 謎の申し出に俺は話を聞くことにした。どうせこんなところには誰も来ないだろうし。
シャドウサクラは語った。
「私たちは、昔、ある魔術師に作られたゴーレムの一種です。本来の姿はスライムのように不定形で、武器や道具に化けるのも思いのまま。かつてはドッペルゲンガーと呼ばれていたこともありました。適当に目で見た相手に成り代わり、人間世界に溶け込むのです」
「ドッペル、だと? 魔法生物にしてはずいぶん知能が高いな。それで、あの部屋で鉱石に化けて隠れていた理由は?」
「いえ、隠れていたわけではありません。自身の本来の姿を持たない私たちは、機械と鉱石しかないあの場所では、自然とそういう姿になってしまうのです」
「まあいいだろう。で、俺に頼みというのは?」
「もともと、私たちの体は一つでした。それがあのゾンビの錬金術師が体を切り刻み、5つに分裂してしまったのです。私たちをまた、一つに戻してください」
ゾンビの錬金術師とは、マリアのことだろう。まあそれはいいとして、
「ちょっと待て。……5体、だと?」
俺は数える。マリア、フィッツ、レイチェル、サクラ。一人足りない。
「キャスリーという女性に化けた一体だけが、逃げ出しました」
「やはりかっ! マズイ、他の仲間たちが食われてしまう!」
「いえ、食べませんよ。何言ってるんですか、怖いなあ」
「何を言っている、現に内臓を露出しつつ俺たちを襲っていたではないか」
俺が恨めしそうににらむと、シャドウサクラは言った。
「あれは、あなたたちが攻撃的なことを考えていたからです。外見だって似るんだから、考えだって似るのは当たり前でしょう?」
どうやらコピーするのは外見だけではなく、考えていることもらしい。
そういうことなら仕方ない。完全には信用したわけではないが、とりあえず協力することにする。
「あ、でも指の先っぽくらいなら味見させてくださいね」
可愛らしく言うサクラ。俺は聞こえないふりをした。
俺たちは霊安室から抜け出すと、酒盛りを続ける皆のところへ走る。
「どうしましょう、サクラさんに化けてたら、たぶん揉めますよねえ?」
そういいながら俺の姿に化けるモンスター。本当に瓜二つだ。これで魔力の波長まで一緒だったらお手上げだったな。
俺たちは中庭の陰から、皆の様子を観察する。
キャスリーが中心となり、皆に酒を注いで回っている。こいつ、全員を酔いつぶす作戦か?
「おい、本当に残り一体だけなんだろうな」
「ああそうだ、俺を信じろ」
自分と会話をするのがこんなに気持ち悪いとは思わなかった。どうしようもないので、耳をふさいで束縛の術を唱える。
「お前は囮になれ」
そう言って後ろから偽俺を突き飛ばす。
なにをするっ! 奴が叫ぶが、耳をふさいでいるので聞こえない。
「あ、イングウェイにゃん。どこ行ってたにゃん?」
見つかった。観念したのか、仁王立ちでキャスリーを指さす。
「おい、そこのキャスリー。お前、偽物だな」
「あらインギー、どうしたんですの? わらわが偽物って、なんの話ですの?」
キャスリーはきょとんとした顔で偽俺を見る。騙されない。さっきの恨みは返さねばならぬ。
俺は束縛の術を唱えた。
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