賢者、二度目の転生――女性しか魔術を使えない世界だと? ふん、隠しておけば問題なかろう。(作中に飲酒シーンが含まれます、ご注意ください)

鳴海 酒

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第12章 魔獣討伐

身を捨ててこそリビング・デッド

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「≪不可視化インヴィジビリティ≫、≪肉体強化グレートマイト≫、≪飛行フライ≫」
 祝福バフを重ねがけすると、俺は空高く舞い上がった。闇夜に兵たちの喧騒も相まって、飛んで接近するには好都合だ。

 敵は黒いマントを羽織っていた。動きはまだない。
 あれが誰かは知らないが、ある程度の立場の将ならば話が早いのだが。俺は以前、城で戦った魔族、キョニーのことを思い出していた。
 俺はメイジキラーを構え、メタ梨花りかと作戦を立てる。

「メタ梨花りか、お前は適当に相手を攻撃しろ。俺の身を守ったりなどは気にしなくていい」
「え、いいんですか、そんな適当で?」
「地上ならまだしも、空中だからな。下手に連携しようとしてリズムを崩すくらいなら、勝手にやった方がマシだろう」
「りょーかい」

 メタ梨花は白銀の蛇の姿を取ると、くるんと俺の体に巻き付いた。相手がどの程度のやつかはわからんが、予想外の方向から隙を作るくらいはできるだろうかもしれん。

 俺は敵の左斜め後方から、勢いをつけて切りかかる。
 奴の数メートル手前には、薄い魔力の覆いヴェールが展開されていた。気付くのが遅れたが、今さら止まれるはずもない。無視して突っ込む俺。振り向いて即座に剣を抜く魔族。

 奴は体をのけぞらせ、ほとんど寝そべるようになりながら俺の剣を避けた。その直後、俺の足元から伸びたメタ梨花の刃が、奴の肩口を貫く。
 だめだな、浅い。舌打ちをする。
 奴が指が動くのが見えた。次の瞬間、俺の眼前で黒い閃光が弾けた。
 
 あらかじめ展開していた防御魔法のおかげでダメージはないが、爆風を利用して距離を取られてしまった。一瞬の隙をつき、奴は地上へと逃げていく。

「イングウェイさん、奴は地上に降りましたっ!」
 メタ梨花が叫ぶ。わかっている。
 俺もすぐに後を追うが、奴の漆黒の鎧が闇に紛れてしまい、見失いかける。

「くそっ、メタ梨花、どっちに行ったかわかるか?」
「ええと、たぶん向こうですっ!」

 メタ梨花が指さしたのは、本陣。まずいな、すぐに追いかけなければ。


 俺は低空を飛びながら、一直線に本陣を目指す。
 奴は獅子顔のなんちゃらと対峙していた。慌てふためく兵士たちの上を飛び越し、両者の間に割って入る。

「諦めろ、俺が来たからには、これ以上人は殺させん」
「ちっ、しつこい奴だ。邪魔をするなっ!」
 魔族が腕を振ると、紅蓮の炎が巻き起った。こちらもすぐに防御魔法で抵抗レジストする。

 魔族は俺を無視して、タントゥーロに切りかかる。訓練された兵士たちが果敢にも立ちふさがるが、さすがにモブ兵士では、束になっても相手にならないだろう。
 俺は兵士たちに下がるように言うと、強引に魔族とタントゥーロの間に割って入る。

「おい、冒険者よ、この魔族は誰だ?」
 さすが獅子顔と言われるだけはある。魔族を前にしても、その怖い顔と威厳は崩れていない。

「空中から本陣を狙っていたのでな。まずいと思って攻撃を仕掛けたのだが、すまん、取り逃がした」

 実際に打ち合ってみてわかったが、こいつは結構強い。
 魔族だけあって、――少々癖は強いが――剣の腕はなかなかだし、扱う呪文のレベルもかなり高い。そして、片方だけにこだわらず、剣と魔法を柔軟に組み合わせた戦い方をする。
 俺は小技でけん制しつつ、相手の攻撃の出だしをつぶしていく。器用にも剣の合間に織り込んでくる術は、反属性で打ち消した。

「まあ、そうはいっても、俺の相手ではないな」

 奴が焦って大振りになったところで、死角からメタ梨花が飛び出し、剣を弾き飛ばす。
 勝負ありか。

 尻もちをついた魔族に、俺は剣を突き付けた。
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