賢者、二度目の転生――女性しか魔術を使えない世界だと? ふん、隠しておけば問題なかろう。(作中に飲酒シーンが含まれます、ご注意ください)

鳴海 酒

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第13章 闇のとばり

汝、ゾンビを裁くことなかれ

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 レイチェルは、俺を森の中にある小さな洞窟に案内してくれた。
「キャシー、いるのか!?」
 俺は洞窟の入り口で、暗闇に向かい声をかける。

「あうあうあー」

 洞窟の中から戻ってきたのは、唸るような低い声。
 しばらく待つと、ゆっくりと女性のゾンビが出てきた。

 なんということだろう、キャスリーは確かにゾンビになっていた。
 肉は腐り、脳みそはゼラチンだ。彼女は両腕を前に突き出し、頭を振りながらのろのろと歩き回る。
 マリアとは全く違う、知性のない蠢く亡者だった。

「あうあー、うっぷ、おげええええ。き、きぼちわるいでずわあぁぁぁ」

 ああ、なんということだ。
 俺は嘆いた。彼女はひどい二日酔いで、戦うどころではなかった。

「レイチェル、水を多めに飲ませてやっているか?」
「ええ、もちろん。マリアさんもよく二日酔いにはなりますから、同じようにしましたよ。ただ、やっぱりちゃんぽんで飲んだのがよくなかったんじゃないかと……」
 レイチェルはキャスリーの痴態から目をそらしつつ答えた。

「そういえば、彼女は、ビールのあとワイン、さらにはウイスキーまで飲んでいたな」
「すみません、私がビールを進めたばっかりに」
「自分を責めるな。ワインはエドワードが、ウイスキーは俺が進めたのだ。そして飲んだのはキャスリー自身。みんなの責任さ」
 そうだ、俺たちはパーティーだ。すべて一人が背負いこむことはない。
「イングウェイさん、きゅんっ。 ……って、どうしましょう、ときめいている場合じゃないですよ。さすがに看病しながら戦う余裕はありませんよ!」

「エドワードに預けるしかないだろう。おぶって連れていくか」

「ごべんばさい、いんぐぃー。うえっ、おえええええ」

「しゃべるな、無理せず横になっていろ」

「でも、横になったら、吐きそうになりまずばあああ」


 うああー、ばっちい……

 レイチェルの憐みの声。
 医者として、医学の限力さを痛感しているのだろう。

「そうと決まれば、急いでエドワードさんに声をかけにいきましょう。夜襲で軍はボロボロですし、早くしないと預けるタイミングを失っちゃいますよ」

 ん?

 俺はその言葉に何か引っかかるものを感じた。

「レイチェル、ちょっと待ってくれ。今、軍がボロボロだと言ったか?」
「え? はい、言いましたよ。空からドラゴンや魔族が次々現れて、ブレスは吐くわ、爆裂呪文は連打されるわ。大騒ぎでしたが」
「いや、それはおかしいだろう」

 こんどはレイチェルのほうが首をかしげる番だった。

「先ほど君は、”襲撃の様子を誰も覚えていない”と言っていた。朝に情報を集めた時の話だな。君は襲撃の様子を覚えているのか? 覚えているなら、どの程度?」

「あれ? そうですね、確かにおかしいな。 どうしたんだろう、私……」
 レイチェルは頭を抱えて考え込む。
 かなり混乱しているようだ。
「ゆっくりだ。無理せず、一つずつでいい。ゆっくり思い出していこう」
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