146 / 200
第15章 再びアサルセニア
横たわったフィッツ
しおりを挟むジャミルという男が去ったあと、俺は庭に急いだ。
寝ているサクラとレイチェルはもちろん放置だ。
ぐったりと横たわったフィッツ。
「おい、大丈夫か、生きているか?」
「うう、その声は、インギーかにゃあん? ごめんにゃ、留守を守れなかったにゃ。くそう、あいつめええ、また負けたにゃぁぁ」
何ということだ。っておい、
「フィッツ、お前は今、「また負けた」と言わなかったか? あの男を知ってるのか?」
「知ってるにゃん? たまに街で出会う、強そうな筋肉男にゃん。なんでうちを知っていたかは知らにゃいけど、また負けたにゃん」
そういえば最近、町中でケンカに負けた話を聞いた気がする。
フィッツは素早さだけでなく、アリ由来の筋力も相当なものだ。ただ、技術面ではまだまだだ。
そんな彼女が何度も負けているということは、あいつは単純な筋肉だけでなく、格闘技術も相当なものだろう。
なかなか手ごわそうだな。
そういえばマリアたちは?
「ああ、マリアなら奥で寝てるにゃん。今日も徹夜で怪しい機械をいじってたにゃん」
まあ、ゾンビ―の彼女が出てきても、話がややこしくなるだけだ。
「そうか。えらいぞフィッツ、一人でよく我々のホームを守ってくれた。頑張ったな」
「えへへー」
とりあえずその日は体を休め、昼過ぎにギルドへと向かった。
まずは情報収集だ。
「デイヴィッド。久しぶりだな」
「おお、インギーじゃねえか。久しぶりだな。噂は聞いたぜ、遠征行く途中にドラゴンぶっ殺したんだってな」
「ああ。だが、そんなことはどうでもいい。聞きたいことがあるんだ」
デイヴィッドは、Sランクギルド『白蛇』のリーダーだ。おれが酒をおごってから仲良くなった。
「ジャミル・ソールという名前の男を知らないか? 筋肉達磨だ。むかつく顔をしている、常識と加減を知らないやつだ」
「はあ? あのジャミルかあ?」
「知っているのか、教えてくれ。なんなら報酬も払う!」
デイヴィッドは呆れた顔で言った。
「報酬なんかいらねえよ。だいたい有名人なんだから、みんな知ってるぜ。むしろ、お前はなんで知らねえんだよ」
「む、有名人だと?」
「そうだ。いいか、あいつはアサルセニア唯一のSSランクギルド、『永遠の詩』の前衛(タンク)だ」
「『永遠の歌』だと、聞いたことがあるな」
「そりゃそうだろ。単に勇者パーティーって言った方が早いだろうけどな」
「ああ、なるほど」
勇者パーティーなら知っている。以前キョニーとかいう魔族が攻めてきたときに、王の前でひと悶着あったパーティーだ。
たしか、優男の魔法剣士、斧使いのごつい戦士、そして女魔術師と女僧侶。
あのとき斧使いの戦士はサクラ相手にどたばたしていただけだと思っていたが、全然本気ではなかったということだろう。
俺は納得した。どうりで強いわけだ。
「どうしたんだよインギー、奴らと何か揉めたのか?」
「ああ、ちょっとな。仲間が世話になったんだ」
「そりゃ残念だったな、あいつら近いうちに王都を発つぜ。ほら、こないだお前さんらが出かけた北の遠征。そのさらに先にある、魔王城の調査だとよ」
なんだと?
◇◇◇◇◇◇
「というわけで、むかつくジャミルとやらは、北へ向かうそうだ。追いかけて仕返しをしてやりたい」
「はあ。 それはいいんですけど、いったいなんで急にそんなことに?」
レイチェルとサクラはぽかんとして聞いている。お前たちは寝ていたから、知らないのだ。やつがどんなにむかつくやつなのか。
王都を離れるのは、俺たちにとっては都合がいい。魔法を使って戦うなら、目撃者は少ないほうがいいからな。
よし、決まりだ。
「でもさー、インギー。そもそもそのジャミルって人は、うちにゾンビだのの調査で訪れたんだろ? そっちを疑われたまんまでいるのは、まずくない? ってゆーかボク、ゾンビだし機械作ってるし、家に踏み込まれたりでもしたら、めっちゃ危ないんだけどさ」
マリアの質問はもっともだ。
俺は考えた、そして閃く。
「ふむ、俺の昔いた世界での言葉だが。『木を隠すなら森』という言葉がある」
「ふむふむ? どういう意味です」
「要するに、うちのギルドが目立たなければ良いのだ。下手に隠さず、レイチェルの死霊術で、この付近の家に無差別にゾンビを沸かせるのだ。南に共同墓地もあっただろう。そちらで骸骨を大量発生させてもいい。それならうちにだけ調査をする理由もなくなるし、時間も稼げるだろう」
「「「却下!!」」」
0
あなたにおすすめの小説
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~
草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。
レアらしくて、成長が異常に早いよ。
せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。
出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。
50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく
かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。
ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!?
俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。
第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。
「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」
信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。
賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。
様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する!
異世界ざわつき転生譚、ここに開幕!
※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。
※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。
元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々
於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。
今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが……
(タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)
神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由
瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。
神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる