賢者、二度目の転生――女性しか魔術を使えない世界だと? ふん、隠しておけば問題なかろう。(作中に飲酒シーンが含まれます、ご注意ください)

鳴海 酒

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第15章 再びアサルセニア

ダメ男の詩

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 ~ところ変わってこちらは酒場。フィッツとイングウェイは飲んだくれていた~

「あ”ーもう、くやしいにゃんっ! あのブサイク、性格も悪いし絶対にモテないにゃん! モテない恨みから筋トレにはまったに違いないにゃん!」
「わかるぞフィッツ、あいつはムカつく。だいたい筋肉キャラはかませと相場が決まっているのに、生意気に技を使いやがって」
 俺たちはぐびぐびとグラスを空にしながら、ジャミルの悪口を言い合っていた。

「で、いんぎー、どうするつもりにゃん?」
「どうするとは?」
 焼き鳥にかぶりつきながら話すフィッツ。
「わかってるくせににゃん。どうやったらジャミルのやろうに一泡吹かせられるかにゃん」

「ああ、そのことか」

 俺はピーマンの肉詰めを箸でつつきながら、迷っていた。
 このピーマンはでかいのだ。一口で食べると、ぎりぎり口からはみ出るだろう。しかし、半分かじろうとすると、ぼろぼろこぼれるに決まっている。
 フィッツの質問についても、同じくらい迷っている。

 ジャミルについてはムカついている。だが、フィッツについては正々堂々の勝負だったし、仕方ないという気もしている。
 ムカつくにはムカつくが、俺自身、そこまで執着するほど怒り狂っているわけでもない。

 それはなぜか。決まっている、酔っているからだ。
 今俺様は気分がいい、見逃してやろう。そういうことだ。
 だが、フィッツは違った。やる気満々だ。

「フィッツ、そのやる気はどこから出てくるんだ?」
 俺はストレートに聞いてみた。
「決まってるにゃん、イングウェイは強くなりたくないのかにゃん? みーは、誰にも負けたくないにゃん」

 ああ、なるほど、合点がいった。
 俺がいまいちジャミルへの仕返しに乗り気になれないのは、俺の方が強いからだ。
 言い訳では無い。結局のところ、俺の本職は魔法使いなのだ。
 あの時は魔法を使っていなかった。魔法を使えば負けはしない。格闘で負けたからと言って、いまいち心の底から悔しいと思えないのは、そこに要因があるのだろう。

 それがわかったら、急にフィッツがまぶしく見えた。うらやましいな、その向上心は。
 かつて仲間とともに魔術を学んでいた日々が、懐かしく思い出される。

「フィッツ、君はなぜジャミルに勝てないと思う?」

 フィッツはほうれん草のバター焼きをつつきながら、少し考えていた。
「決まってるにゃん、力こそパワー、パワーが足りないにゃん! ……と言いたいところだけど、わかってるにゃん。あいつは単なるちからだけじゃない、みーのぱんちをいなす技術テクニックを持ってるにゃん。それをつぶさないと、勝てないにゃん」

 技術を学ぶではなく、「つぶす」と表現するフィッツに、俺は苦笑した。

「じゃあ、ジャミルにどうすれば勝てるようになる?」
「それがわかれば苦労しないにゃん」

 ごもっともだ。

「フィッツは強い。だが、お前は戦士ではなく、冒険者だろう?」
「にゃん?」
「人にはそれぞれの色がある。筋肉はあいつの強みであって、君の強みではない。君の魅力は、もっと違ったところにある」

「ほう!?」
 フィッツの耳がぴくんと立った。
「いんぎーも、みーの魅力にめろめろなのかにゃん?」

「ああ、そうだな。単純な強さではなく、しなやかな筋肉や素早さ、野生のカン。洞窟で鍛えた、夜でも見える目。そしてなにより、君には仲間がいる」

「むー、複数で袋叩きにするってことかにゃん? それはちょっと卑怯な気がするにゃん」

「そうじゃない。要は、ギルド『ミスフィッツ』が、『永遠の歌ソング・リメインズ』より上だと証明してやれってことさ」
 俺はぐびりとグラスを空にすると、フィッツに言った。
「やつら、北の魔王城の調査に行くんだろう? 追いかけるぞ、奴らより先に手柄を立てて、一泡吹かせてやる」
「おお、いい考えにゃん!」
 ムカつくジャミルの仲間なら、全員ムカつくに決まっている。せっかくだからまとめて嫌がらせをしてやるのだ。
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