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第15章 再びアサルセニア
フィッツの昔話
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ということで、俺たちは冒険者ギルドにやってきた。
情報収集ならここが一番だからな。
「あらいらっしゃいませ、イングウェイさん、フィッツさん。今日はどうしたんですか?」
声をかけてきたのは、ギルドのアイドル、受付のアリス嬢だ。
冒険者というあらくれ達の中で、この娘はよくやっている。そういえば恋人の話などは聞かないが、いい相手はいるのだろうか。
まあ、今はどうでもいいな。
「勇者パーティーが魔王城のほうに旅立つと聞いてな。あいつらは何をしに行くか、詳しく知らないか?
「え、勇者ギルドの『永遠の歌』のことですか?
「そうにゃん。メンバーのジャミルの奴に、ちょっと借りがあるんにゃん」
「は? 狩り? それとも狩られたんですか?」
アリサはフィッツの猫耳から肉球までをじっくり見ながら不思議そうな顔をしている。何か勘違いしていないか、こいつ。
「そもそも、アリサは細かい依頼内容を知っているのか?」
「え? いやー、知りませんよ。たしか大臣あたりから直接指名依頼が来てたと思うんです。内容も内容ですしね、ギルド長くらいしか知らないんじゃないですか?」
まあそうだろうな。先日の王都襲撃以降、アサルセニアがバタバタしているのは感じていた。
魔族や魔物の襲撃。どちらも組織的な動きがあった。つまり、裏でそいつらを束ねる存在がいる。
それが魔王なのか何なのか。
あ、そういえば、魔王についても俺は良く知らないままだった。
「しかしなんだな、転生しても魔王と縁ができるとは」
「え?」
ふと漏れた俺の言葉に、アリサが反応した。
「む、どうした」
「いえ、イングウェイさんが今、てんせいどーたらとか言ってたから、びっくりして。たしかギルド長と勇者さんも、同じようなこと話してたんですよね」
「本当か? 詳しく聞かせてくれ」
アリサはゆっくりと思い出しながら、言葉を紡いでいった。
「ええっとー、魔族を束ねているのはてんせい?しゃ?とかいう人かもしれないんですって。すごく強いらしいですよ。噂では、伝説の魔王も転生者だったらしいですから。
で、今回は、魔王の城に転生するための魔法陣があるんじゃないかーとか、魔王時代の強力な遺物がないかーとか、そういう調査だったと思います」
ふーむ、転生者か。転生者がからんでいるとすれば、面倒なことになるかもしれないな。
「いんぎー、何か知っているのかにゃん?」
「ああ、ちょっとな」
アリスには感謝して、その場を離れる。
俺は、自分のことをみんなに話す時が来たのだろうかと、葛藤していた。
別に隠していたわけではない。だが、自分から話そうと思ったこともない。
嫌われるのが怖かった? 違うな。この期に及んでそれは、みんなへの侮辱になってしまう。
俺は皆を信用している。
だが――。
「そういえば俺、魔王について何も知らんな。フィッツ、何か知らんか」
「にゃー? エマーソンさんから聞かされた昔話でいいなら、話してやるにゃん」
エマーソンさんというのは、フィッツの育ての親であるマンティコアだ。エマーソン・レイクという地下湖で育ったフィッツだが、魔獣に育てられたなら、魔王について何かレアな情報を持っているかもしれない。
「魔王本人っていうのは、実はあまり表舞台にはでてきていないにゃん」
「は? 人間の街を襲ったりとかしなかったのか?」
「そういうのは、魔王が呼び出したしもべたちの仕業らしいにゃん。まあそういうやつらを呼び出している時点で、人間にとっては敵にゃんだろうけど。魔王本人はどっちかというと、城にこもって魔術研究ばっかりしていたらしいにゃん」
研究、か。そういえばそういう女魔術師がいた気がする。確か、首筋に”穴”があるやつだ。
それと、「呼び出す」という表現が気になる。
「魔王は転生者だったのか? 男だったんだろう?」
「その辺はよく知らないにゃん。みーは会ったことにゃいしね」
まあそうか。しかし、面白い話が聞けた。
「本当に魔王が転生者だったとしたら、勇者パーティーでも太刀打ちできんかもしれんな」
「にゃっ!? そんなに危険なのかにゃん?」
「ああ、そうだ。やめるか?」
しかしフィッツは瞳をメラメラ燃やしながら言った。
「とんでもにゃい! これは奴らの鼻を明かすチャンスにゃん。こっそりついて行って、魔王城のお宝もいただきにゃん!」
「もう一度言うが、危険だぞ? お前より強い魔族もいるかもしれん」
「フィッツより強いって言葉を使うってことは、いんぎーなら勝てる自信があるってことにゃん。それって、いんぎーと行けば安全にゃん?」
フィッツはにんまり笑った。ちゃっかりしている。
ただ、俺の中では、転生という単語を聞いた時点で、魔王城の調査に行くことは半ばきまっている。
行くしかないだろう、魔王城へ。
情報収集ならここが一番だからな。
「あらいらっしゃいませ、イングウェイさん、フィッツさん。今日はどうしたんですか?」
声をかけてきたのは、ギルドのアイドル、受付のアリス嬢だ。
冒険者というあらくれ達の中で、この娘はよくやっている。そういえば恋人の話などは聞かないが、いい相手はいるのだろうか。
まあ、今はどうでもいいな。
「勇者パーティーが魔王城のほうに旅立つと聞いてな。あいつらは何をしに行くか、詳しく知らないか?
「え、勇者ギルドの『永遠の歌』のことですか?
「そうにゃん。メンバーのジャミルの奴に、ちょっと借りがあるんにゃん」
「は? 狩り? それとも狩られたんですか?」
アリサはフィッツの猫耳から肉球までをじっくり見ながら不思議そうな顔をしている。何か勘違いしていないか、こいつ。
「そもそも、アリサは細かい依頼内容を知っているのか?」
「え? いやー、知りませんよ。たしか大臣あたりから直接指名依頼が来てたと思うんです。内容も内容ですしね、ギルド長くらいしか知らないんじゃないですか?」
まあそうだろうな。先日の王都襲撃以降、アサルセニアがバタバタしているのは感じていた。
魔族や魔物の襲撃。どちらも組織的な動きがあった。つまり、裏でそいつらを束ねる存在がいる。
それが魔王なのか何なのか。
あ、そういえば、魔王についても俺は良く知らないままだった。
「しかしなんだな、転生しても魔王と縁ができるとは」
「え?」
ふと漏れた俺の言葉に、アリサが反応した。
「む、どうした」
「いえ、イングウェイさんが今、てんせいどーたらとか言ってたから、びっくりして。たしかギルド長と勇者さんも、同じようなこと話してたんですよね」
「本当か? 詳しく聞かせてくれ」
アリサはゆっくりと思い出しながら、言葉を紡いでいった。
「ええっとー、魔族を束ねているのはてんせい?しゃ?とかいう人かもしれないんですって。すごく強いらしいですよ。噂では、伝説の魔王も転生者だったらしいですから。
で、今回は、魔王の城に転生するための魔法陣があるんじゃないかーとか、魔王時代の強力な遺物がないかーとか、そういう調査だったと思います」
ふーむ、転生者か。転生者がからんでいるとすれば、面倒なことになるかもしれないな。
「いんぎー、何か知っているのかにゃん?」
「ああ、ちょっとな」
アリスには感謝して、その場を離れる。
俺は、自分のことをみんなに話す時が来たのだろうかと、葛藤していた。
別に隠していたわけではない。だが、自分から話そうと思ったこともない。
嫌われるのが怖かった? 違うな。この期に及んでそれは、みんなへの侮辱になってしまう。
俺は皆を信用している。
だが――。
「そういえば俺、魔王について何も知らんな。フィッツ、何か知らんか」
「にゃー? エマーソンさんから聞かされた昔話でいいなら、話してやるにゃん」
エマーソンさんというのは、フィッツの育ての親であるマンティコアだ。エマーソン・レイクという地下湖で育ったフィッツだが、魔獣に育てられたなら、魔王について何かレアな情報を持っているかもしれない。
「魔王本人っていうのは、実はあまり表舞台にはでてきていないにゃん」
「は? 人間の街を襲ったりとかしなかったのか?」
「そういうのは、魔王が呼び出したしもべたちの仕業らしいにゃん。まあそういうやつらを呼び出している時点で、人間にとっては敵にゃんだろうけど。魔王本人はどっちかというと、城にこもって魔術研究ばっかりしていたらしいにゃん」
研究、か。そういえばそういう女魔術師がいた気がする。確か、首筋に”穴”があるやつだ。
それと、「呼び出す」という表現が気になる。
「魔王は転生者だったのか? 男だったんだろう?」
「その辺はよく知らないにゃん。みーは会ったことにゃいしね」
まあそうか。しかし、面白い話が聞けた。
「本当に魔王が転生者だったとしたら、勇者パーティーでも太刀打ちできんかもしれんな」
「にゃっ!? そんなに危険なのかにゃん?」
「ああ、そうだ。やめるか?」
しかしフィッツは瞳をメラメラ燃やしながら言った。
「とんでもにゃい! これは奴らの鼻を明かすチャンスにゃん。こっそりついて行って、魔王城のお宝もいただきにゃん!」
「もう一度言うが、危険だぞ? お前より強い魔族もいるかもしれん」
「フィッツより強いって言葉を使うってことは、いんぎーなら勝てる自信があるってことにゃん。それって、いんぎーと行けば安全にゃん?」
フィッツはにんまり笑った。ちゃっかりしている。
ただ、俺の中では、転生という単語を聞いた時点で、魔王城の調査に行くことは半ばきまっている。
行くしかないだろう、魔王城へ。
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