賢者、二度目の転生――女性しか魔術を使えない世界だと? ふん、隠しておけば問題なかろう。(作中に飲酒シーンが含まれます、ご注意ください)

鳴海 酒

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第15章 再びアサルセニア

ありていに言うと

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 ホームに戻った俺とフィッツは、ギルドメンバーを集めて今回のことを説明した。
「実は、勇者パーティーを追って、北にある魔王城を目指そうと思う」

「ほうほう、次の依頼は魔王城の調査か何かですか?」
 サムライのサクラが、サケを飲みながら聞いてきた。

 俺はウイスキーを飲みながら答える。
「いや、いやがらせだ」

「はあ? 何言ってるんだい」
 焼酎を飲みつつめんどくさそうにツッコミをとばすのは、ゾンビのマリアだった。

「説明はフィッツに任せる」

 ちなみにレイチェルは、すでにべろんべろんだった。半分寝ている。

 フィッツは、自分とジャミルとの因縁、そして勇者パーティーが魔王城の調査に行くこと、それを邪魔したいことなどを話した。

「で、事情はわかりましたけど、私たちを集めて、なんの相談です?」
 覚醒したレイチェルが、ビールを飲みつつ質問してきた。

「うむ、悩んでいるのは、今回のパーティーメンバーだ。今ギルド『ミスフィッツ』には、俺を含めて5人のメンバーがいる。フィッツと俺は確定として、その後だな」
 そういえばキャスリーは、例のゾンビ事件の時にエドワードに預け、そのままだ。
 少し父親に鍛えてもらうという手紙が届いていた。なんだかんだで、エドワードは娘に甘い。任せておいて問題なかろう。
 魔王城はレノンフィールド領の先なので、一応道中でキャスリーを連れていくという手もあるが。


 俺の気は重たかった。

「珍しいですねー、イングウェイさんが悩むなんて。前みたいにダイスで決めちゃえばいいんじゃないですか?」
「そうもいかん。成り行きとはいえ、今度の目的地は魔王城だ。しかも、相手が勇者パーティーときている」
 うそである。そんなものは言い訳だ。
 悩んでいるのは、今回が転生者がらみの案件かもしれないからだ。
 もし相手に転生者がいた場合、俺は彼女らを守り切れるだろうか。


「心配なんでしょう? 私たちがついて来れるかどうかが」
 核心をついたのは、レイチェルだ。まったくかなわないな、こちらの考えは見透かされていたようだ。

「はっきり言ってくださっていいですよ。ありていに言って、私たち、足手まといなんでしょう」
「いや、そういうわけでは」
 しかし、俺よりも先に、サクラとフィッツが口を開く。
「まあ、仕方ないですね。イングウェイさんが本気を出したら、誰もついていけないのはわかってましたし」
「そういうことにゃん。どうせジャミルのやつも、その気になれば勝てるんにゃん?」

「いや、違うぞ。今回の相手は、俺がみんなを守り切れるかわからないから――」
「それです!」
 びしっと俺を指さすレイチェル。
「守ろうとしてくれるのは嬉しいですけど、それは対等の関係じゃありません! もっと私たちを信用してください!」

 その言葉に俺は衝撃を受けた。守ろうとしているのは俺のエゴなのだ。


 そうか、そうかもしれない。
 じゃあみんな、着いてきてくれるか?

 俺の言葉に、レイチェルは言った。
「ええ、私はいきませんけど、サクラさんとフィッツさんなら、きっと大丈夫です!」

「えー、レイチェル、今絶対に一緒に行く流れだったじゃないですかー!」

「だってマリアさんの体はどうするんです? 死療術師ネクロマンサーの私がいないと、何かあったときに治療できませんよ」
「「あ」」
「ごめんねー、ボクの仕事は戦いじゃなくて鍛冶だし、ちょっと今回もパスかなー」

「そういうわけですよー。死霊術師ネクロマンサーは、少数精鋭での潜入作戦なんかには向いてませんからね、おとなしく待ってます」

 すまない、レイチェル。だが、俺は彼女の本音をわかっていた。
「本音はどうなんだ?」
「え? そりゃもちろん、こないだの遠征で懲りたからです。ビールが飲めないのはキッツい! 一日の疲れを癒すには、私にはビールが必要なのですよ!
 そしてビールをおいしーく飲むには、この魔道冷蔵庫がぜったいに必要ですから!」

「やはりか。まあいいさ、今回は魔族の地に潜入する。確かにレイチェルよりも、運動神経に優れたフィッツとサクラが適任だろうしな」

「はい、任せてくださーい!」
「がんばるにゃん」


「いってらっしゃーい。じゃマリアさん、私たちはしっかり留守を守りましょうねー」
「うーん、まったく、仕方ないなあ。よろしくね、たまには家事もしてよね、いっつもサクラにおしつけてるんだから」
「わかってますよ。骸骨おとうさんにがんばってもらいますから」
「えー? ズルいなあ」

 ……なんだか先日から、やけにレイチェルとマリアの仲が良い。何かあったのだろうか。
 
 それはともかく、今回の冒険のメンバーは決まった。俺、フィッツ、サクラの三人だ。
 さあいくか。
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