賢者、二度目の転生――女性しか魔術を使えない世界だと? ふん、隠しておけば問題なかろう。(作中に飲酒シーンが含まれます、ご注意ください)

鳴海 酒

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第16章 聖なる戦い

浄化

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 ドロシーとリーインベッツィは、とある古城に移り住んだ。
 周辺は魔族や魔物が多数生息している地で、人間はあまり近寄るものもなかった。
 はぐれ吸血鬼であるリーインベッツィと、根っからの研究者気質でひきこもりぼっちなドロシー。似た者同士の二人は、すぐに意気投合した。

 ドロシーは様々な魔術についての研究をしていた。とくに転生についての研究をしていた。
 リーインベッツィは酒を飲んでいた。

 敵がいないわけではなかったが、問題はなかった。
 リーインベッツィはもちろん、ドロシーも魔術の達人だ。戦闘経験が足りない分は、液体金属の魔法生物を作りだし、護衛をさせていた。
 自然とその城は、魔族すら近寄らない、魔王の住む城として恐れられ始めた。

 ただ、そんなドロシーも、病気には勝てなかった。

 ◇◇◇

「うう、ドロシぃー。死なんでくれぇぇ」
「なあに泣いてんのよ、ばかねえ。ごほっ。大丈夫よ」
「うあぁぁ、ドロシー、また血がぁ!」
「あらごめんなさい。汚れちゃうわよ、離れなさい」
「そんなことはどうでもいいんじゃぁぁ、ドロシぃー」

 リーインベッツィは顔をくしゃくしゃにして泣いていた。

 その泣き顔を見るたび、ドロシーの心に刺さっていたとげが、じくじくと悪魔のようにうずくのだ。
 深酒のあと、吐いてしまえばどれだけ楽になるか。それがわかっていながら、我慢を続ける酔っ払いのようなものだった。

 そしてドロシーは、ついに我慢できず、吐き出してしまった。

「けほっ、大丈夫よ、リーイン。私は死んじゃうけど、必ず戻ってくるから」
「ふえ? 生き返りの術かの? ゾンビーになるのか?」

「ふふ、ばかね。違うわよ。…ごほっ。 私が前に死んだときの話は覚えてる? 女神が、死んだ人たちを転生させてたって話よ」
「覚えとるぞ! それでここに戻ってこれるのか!?」
「いえ、たぶんすぐには無理ね。どこの世界に転生できるかもわかんないし」

「そう、……なのか」

 しょぼんとするリーインベッツィに、ドロシーは続ける。

「リーイン、私を誰だと思ってるのよ。大魔術師のドロシー・オーランドゥよ。女神にできて、私にできないはずはないわ。ただ、時間は少しかかっちゃうかもしれないけど」

 精いっぱいの強がりだったが、それを聞いてリーインベッツィの顔がぱあっと明るくなる。

「大丈夫じゃ! わしは吸血鬼じゃぞ、不死身じゃ! 1000年でも2000年でも待っておるぞ!」

 ドロシーは薄く笑った。

 本当はこんなことを言うつもりじゃなかった。強がってみたものの、自信はなかった。
 希望は、呪いになる。こんなことを言えば、リーインがいつまでも待つであろうことは、わかっていた。
 それでも、彼女の泣き顔を見ていたら、つい口に出してしまったのだった。

「ふふ、いい子ね。…じゃあね。泣き虫リーイン」
「どろしーぃぃぃ」


 ドロシーは静かに瞳を閉じた。


 ――なんであんなこと言っちゃったんだろ。
  私らしくないなあ。
  あんまり待たせちゃうと、かわいそうよねえ。

  そうだ、時間を戻せば、待たせなくてもすむかな。
  ごめんねえ、リーイン……
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