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第17章 イクリプス
トピック・オブ・ザ・バスト
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~アントニー~
時は少しさかのぼる。
唐突に僕と魔王の間に割って入った、恐ろしい化け物。そうだ、魔王なんて目じゃない。こいつこそが本当の化け物だ。
化け物は魔王をあっさりと殺した後、僕らに話しかけてきた。
恥を承知で言おう。そのとき僕の体は、恐怖でろくに動かなかった。
「おぬしら、ドロシー・オーランドゥという乳のでかい女について、何か知らんか? この城のかつてのあるじだった女なのじゃが」
ドロシーだと? 聞いたこともない名前だった。この城は長く無人だと聞いている。主と言われても、いつの時代の話だろうか。
その問いに答えたのは、驚くことにジニーだった。
「はーい、ジニーは聞いたことあるよー」
どきりとした。この化け物の殺意が、ジニーに向かわないかと心配したのだ。だがそれはすぐに杞憂に終わる。
「おお、本当か? どこで見た? 何をしとった??」
化け物はやけに明るい、嬉しそうな声でジニーに聞き返した。
「えーとね、ジニーもあったことはないんですー。魔術書で名前を聞いたことがあるだけでー」
「なんじゃ、魔術書か……。いや、一応どんな話かを聞かせてくれんかのう?」
化け物はがっくりと肩を落とし、落ち込んでいるように見えた。
「えーと、『オーランドゥの魔術書』って、魔術師の間では密かに有名なんだよ。今から百年以上前って言われてるけど、辺境の地に住んでいる魔女が、酒代の代わりに置いて行ったんだって」
「ほほー、そーじゃったのか。どんなことが書いてあるんじゃ?」
「えーと、魔術書は何冊かあってね、次元と時間に関する魔術が一番有名かな。それ以外だと、物質の構成を効率的に変化させる方法とかだったと思うよ」
「む? 次元か? もしかして次元跳躍についても何か書いてあるのかの?」
「知らないよー、読んだことないもん。でもね、次元跳躍に成功した人っていないんじゃないかなあ? 魔術師の間でも、オーランドゥは嘘つきだって言ってる人いるもん」
「むー。ぬしは、ドロシーのことを嘘つきだと思っとるのか?」
「え、ジニーが? ううん、思わないよ。だって、ジニーが読んだ本の理論はしっかりしてたもん。すごかったよ」
「ひひひ、ぬし、いい子じゃのう。よし、面白い話も聞けたし、わしはもういくぞ。お嬢ちゃん、機会があればまた会おうぞよ」
「はーい、またねー」
去っていく化け物の後ろ姿をじっと見ていた。早く消えてくれと願いながら。
無邪気なジニーは手を振っていたが、今は助かったことへの安堵で、胸がいっぱいだった。
「よかったな、ジニーがいて」
いつの間にかジャミルが僕の横に立っていた。腕を押さえ、足も引きずっている。
「はあ、さすがに死ぬかと思ったよ」
「ふん、人生結果がすべてよ。生き残ったら、それだけで負けはねえのさ」
「なんでもいいから、今は熱いお風呂に入って、ふかふかのベッドでぐっすり休みたいわ」
お互いに強がりということはわかっていた。僕らが生きているのは、単にやつの気まぐれの結果でしかないのだ。
「これからどうするつもりだ? 魔王は倒したが、お前さんの目的はまだ果たしてないんだろう?」
「そうだね。でも、まずは少し休もう」
時は少しさかのぼる。
唐突に僕と魔王の間に割って入った、恐ろしい化け物。そうだ、魔王なんて目じゃない。こいつこそが本当の化け物だ。
化け物は魔王をあっさりと殺した後、僕らに話しかけてきた。
恥を承知で言おう。そのとき僕の体は、恐怖でろくに動かなかった。
「おぬしら、ドロシー・オーランドゥという乳のでかい女について、何か知らんか? この城のかつてのあるじだった女なのじゃが」
ドロシーだと? 聞いたこともない名前だった。この城は長く無人だと聞いている。主と言われても、いつの時代の話だろうか。
その問いに答えたのは、驚くことにジニーだった。
「はーい、ジニーは聞いたことあるよー」
どきりとした。この化け物の殺意が、ジニーに向かわないかと心配したのだ。だがそれはすぐに杞憂に終わる。
「おお、本当か? どこで見た? 何をしとった??」
化け物はやけに明るい、嬉しそうな声でジニーに聞き返した。
「えーとね、ジニーもあったことはないんですー。魔術書で名前を聞いたことがあるだけでー」
「なんじゃ、魔術書か……。いや、一応どんな話かを聞かせてくれんかのう?」
化け物はがっくりと肩を落とし、落ち込んでいるように見えた。
「えーと、『オーランドゥの魔術書』って、魔術師の間では密かに有名なんだよ。今から百年以上前って言われてるけど、辺境の地に住んでいる魔女が、酒代の代わりに置いて行ったんだって」
「ほほー、そーじゃったのか。どんなことが書いてあるんじゃ?」
「えーと、魔術書は何冊かあってね、次元と時間に関する魔術が一番有名かな。それ以外だと、物質の構成を効率的に変化させる方法とかだったと思うよ」
「む? 次元か? もしかして次元跳躍についても何か書いてあるのかの?」
「知らないよー、読んだことないもん。でもね、次元跳躍に成功した人っていないんじゃないかなあ? 魔術師の間でも、オーランドゥは嘘つきだって言ってる人いるもん」
「むー。ぬしは、ドロシーのことを嘘つきだと思っとるのか?」
「え、ジニーが? ううん、思わないよ。だって、ジニーが読んだ本の理論はしっかりしてたもん。すごかったよ」
「ひひひ、ぬし、いい子じゃのう。よし、面白い話も聞けたし、わしはもういくぞ。お嬢ちゃん、機会があればまた会おうぞよ」
「はーい、またねー」
去っていく化け物の後ろ姿をじっと見ていた。早く消えてくれと願いながら。
無邪気なジニーは手を振っていたが、今は助かったことへの安堵で、胸がいっぱいだった。
「よかったな、ジニーがいて」
いつの間にかジャミルが僕の横に立っていた。腕を押さえ、足も引きずっている。
「はあ、さすがに死ぬかと思ったよ」
「ふん、人生結果がすべてよ。生き残ったら、それだけで負けはねえのさ」
「なんでもいいから、今は熱いお風呂に入って、ふかふかのベッドでぐっすり休みたいわ」
お互いに強がりということはわかっていた。僕らが生きているのは、単にやつの気まぐれの結果でしかないのだ。
「これからどうするつもりだ? 魔王は倒したが、お前さんの目的はまだ果たしてないんだろう?」
「そうだね。でも、まずは少し休もう」
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