173 / 200
第17章 イクリプス
デストラクション・プリヴェンター
しおりを挟む
~アントニー~
魔王城で一夜を明かした僕たちは、城の調査にとりかかることにした。
化け物に恐れてはいられない。僕らの本当の目的は、こちらなんだから。
この世界に転生したからには、この世界の未来のため、平和のために自分の力を使う覚悟はできている。仲間たちを得て、その気持ちはもっと強くなっている。
そうだ、むしろあんな化け物がいるからこそ、強力な戦闘力を持つ転生者の情報は大切だ。
ああいった災害がこの世界を壊す前に、それを防ぐもの
が必要なのだ。
僕は深呼吸して、みんなを鼓舞する。
「さあ、行こうか、みんな」
「「「おおー」」」
歩き出してすぐに、何か騒いでいるような声に気付いた。
下の階だろうか?
耳をすますと、女性の声のようだ。
…だから……にゃん。 ……うるさ…頭が……
よく聞こえないが、話声のようだ。
「とりあえず行ってみよう」
「本気なの? 昨夜みたいな強い敵だったらどうするのよ」
「あんなやつ、そう何人も出てこねえよ」
「そうだね。多分大丈夫」
杞憂だな。何も僕だって、適当な理由で大丈夫だと言っているわけでは無い。みんなを危険にさらすわけにはいかないからね。
なんか暢気そうな声だったので、おそらく大丈夫だろうと判断したのだ。
「そういやアントニー、なんであんなレベル高いのを隠してたんですかー」
「そーよ、レベル45だとか大嘘じゃない! ぎゃーぎゃー」
◇◇◇
「なんでウォッカをあんなにガバガバのんでるにゃん!」
「だってー、飲みやすかったんだもーん」
「サクラ、それは女を酔わせる手口にゃん! お前ちょろいんだから、インギー以外と絶対飲むなにゃん!」
なんだこいつら?
角を曲がったところにいたのは、金髪の美形な男と奇妙な服装の女、そして獣人族の女だった。
「君たちは誰だ? ここで何をしている?」
「あー! おまえはジャミルにゃん? ここであったが百年目にゃん」
「おう、お前か。どうしたんだ、こんなところで」
え、知り合い?
どうやら話を聞くと、ジャミルがよく相手をしている獣人というのが、この娘らしい。
そして彼らのリーダー的存在の青年も、僕らのことを知っていた。
「誰かと思えば『永遠の歌』の面々か。ずいぶん戦い疲れた顔をしているな。魔王とやらはそんなに強かったのか?」
彼に侮蔑の意味はないのだろうが、それでも少しむっとした。
こちらの苦労も知らないで。
「ああ、魔王も強かったがなあ、その後に出てきた化け物がまたひどかったぜ」
「化け物? もしかして金髪幼女の吸血鬼かにゃん?」
「「「知っているの??」」」
イングウェイと名乗る冒険者と昨夜の吸血鬼が知り合いだと聞いて、僕らは驚きを隠せなかった。
彼もかなり強いのは、見てわかる。最初は転生者を疑ったが、吸血鬼の知り合いということは、たぶん違うのだろう。
広い世の中、そんなに簡単に転生者に会えたら苦労はしない。
一通りこちらの話を聞いたあと、イングウェイは言った。
「オーランドゥの魔術書とやらが見てみたい。特に次元に関する部分だ」
「見てどうするつもりだい? まさか、やましいことを考えているんじゃないだろうな」
野心を抱いての行動なら、見過ごすわけにはいかない。だが、彼はこう言った。
「ちょっと、知り合いを助けに行かなくてはならなくてな。どうやら別の次元にいるらしい」
「君は、自分が何を言っているのかわかっているのか?」
「ああ。次元跳躍の術法のために、オーランドゥの魔術書を参考にしたい。なにか問題が?」
問題は大ありだ。僕やジニーですら、次元を超える術なんて使えない。しかも、こんな男性の魔術師が? 無茶にもほどがある。
「馬鹿なことはやめておいたほうがいい。次元を超える術なんて、扱える魔術師はいないよ」
「だからどうした? 救うことができないから、膝をついて降参しろと? それこそバカなことだ」
イングウェイはまっすぐな曇りのない瞳をしていた。彼は本気だった。
本気で、次元跳躍をするつもりなのだ。
僕は忘れていたのかもしれない、本気で立ち向かうことを。その決意が、不可能を可能にするのだ。
魔王相手に劣勢になっただけで心が折れかけた、あのときの焦りが頭をよぎった。
「強いんだな、君は。……ギルド長に、僕の名前を出してみてくれ。何か情報がもらえるだろう」
「ありがとう。恩に着る」
固い握手のあと、彼らは去っていった。
魔王城で一夜を明かした僕たちは、城の調査にとりかかることにした。
化け物に恐れてはいられない。僕らの本当の目的は、こちらなんだから。
この世界に転生したからには、この世界の未来のため、平和のために自分の力を使う覚悟はできている。仲間たちを得て、その気持ちはもっと強くなっている。
そうだ、むしろあんな化け物がいるからこそ、強力な戦闘力を持つ転生者の情報は大切だ。
ああいった災害がこの世界を壊す前に、それを防ぐもの
が必要なのだ。
僕は深呼吸して、みんなを鼓舞する。
「さあ、行こうか、みんな」
「「「おおー」」」
歩き出してすぐに、何か騒いでいるような声に気付いた。
下の階だろうか?
耳をすますと、女性の声のようだ。
…だから……にゃん。 ……うるさ…頭が……
よく聞こえないが、話声のようだ。
「とりあえず行ってみよう」
「本気なの? 昨夜みたいな強い敵だったらどうするのよ」
「あんなやつ、そう何人も出てこねえよ」
「そうだね。多分大丈夫」
杞憂だな。何も僕だって、適当な理由で大丈夫だと言っているわけでは無い。みんなを危険にさらすわけにはいかないからね。
なんか暢気そうな声だったので、おそらく大丈夫だろうと判断したのだ。
「そういやアントニー、なんであんなレベル高いのを隠してたんですかー」
「そーよ、レベル45だとか大嘘じゃない! ぎゃーぎゃー」
◇◇◇
「なんでウォッカをあんなにガバガバのんでるにゃん!」
「だってー、飲みやすかったんだもーん」
「サクラ、それは女を酔わせる手口にゃん! お前ちょろいんだから、インギー以外と絶対飲むなにゃん!」
なんだこいつら?
角を曲がったところにいたのは、金髪の美形な男と奇妙な服装の女、そして獣人族の女だった。
「君たちは誰だ? ここで何をしている?」
「あー! おまえはジャミルにゃん? ここであったが百年目にゃん」
「おう、お前か。どうしたんだ、こんなところで」
え、知り合い?
どうやら話を聞くと、ジャミルがよく相手をしている獣人というのが、この娘らしい。
そして彼らのリーダー的存在の青年も、僕らのことを知っていた。
「誰かと思えば『永遠の歌』の面々か。ずいぶん戦い疲れた顔をしているな。魔王とやらはそんなに強かったのか?」
彼に侮蔑の意味はないのだろうが、それでも少しむっとした。
こちらの苦労も知らないで。
「ああ、魔王も強かったがなあ、その後に出てきた化け物がまたひどかったぜ」
「化け物? もしかして金髪幼女の吸血鬼かにゃん?」
「「「知っているの??」」」
イングウェイと名乗る冒険者と昨夜の吸血鬼が知り合いだと聞いて、僕らは驚きを隠せなかった。
彼もかなり強いのは、見てわかる。最初は転生者を疑ったが、吸血鬼の知り合いということは、たぶん違うのだろう。
広い世の中、そんなに簡単に転生者に会えたら苦労はしない。
一通りこちらの話を聞いたあと、イングウェイは言った。
「オーランドゥの魔術書とやらが見てみたい。特に次元に関する部分だ」
「見てどうするつもりだい? まさか、やましいことを考えているんじゃないだろうな」
野心を抱いての行動なら、見過ごすわけにはいかない。だが、彼はこう言った。
「ちょっと、知り合いを助けに行かなくてはならなくてな。どうやら別の次元にいるらしい」
「君は、自分が何を言っているのかわかっているのか?」
「ああ。次元跳躍の術法のために、オーランドゥの魔術書を参考にしたい。なにか問題が?」
問題は大ありだ。僕やジニーですら、次元を超える術なんて使えない。しかも、こんな男性の魔術師が? 無茶にもほどがある。
「馬鹿なことはやめておいたほうがいい。次元を超える術なんて、扱える魔術師はいないよ」
「だからどうした? 救うことができないから、膝をついて降参しろと? それこそバカなことだ」
イングウェイはまっすぐな曇りのない瞳をしていた。彼は本気だった。
本気で、次元跳躍をするつもりなのだ。
僕は忘れていたのかもしれない、本気で立ち向かうことを。その決意が、不可能を可能にするのだ。
魔王相手に劣勢になっただけで心が折れかけた、あのときの焦りが頭をよぎった。
「強いんだな、君は。……ギルド長に、僕の名前を出してみてくれ。何か情報がもらえるだろう」
「ありがとう。恩に着る」
固い握手のあと、彼らは去っていった。
0
あなたにおすすめの小説
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~
草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。
レアらしくて、成長が異常に早いよ。
せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。
出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。
50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく
かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。
ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!?
俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。
第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。
「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」
信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。
賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。
様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する!
異世界ざわつき転生譚、ここに開幕!
※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。
※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。
元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々
於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。
今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが……
(タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)
神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由
瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。
神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる