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第18章 サイレンス
狼と鴉亭
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~酒場『狼と鴉亭』~
「あー、あれです! あの奥でドラムを叩いてる、長髪の彼、スターキーって言うんですよー!」
店に入るなりアリサの酔いはあっという間に消え去り、恋する一人の乙女になっていた。
ステージ上では4人組のグループが、ガンガン激しい演奏を行っていた。
これは酒場というよりクラブだな。
「おい、先にトイレを見てきてくれないか?」
「何言ってるんですか、歌が先ですよ! 聞いてからにしてください!」
ううむ、仕方ない。待つしかないか。
俺は酒を飲みながら彼らの演奏を聴いていたが、なかなか骨のあるいい歌を歌っていた。
アリサの彼ぴとやらのドラムも素晴らしいが、ツインギターによる曲構成が特に気に入った。激しいリフの裏で鳴らされるうねるようなメロディーラインは、まるでクラシックを元にしているように思えた。
そしてサビのあとのベースソロ。途中でギターも入ってくるが、あくまで一歩引いて主役のベースを盛り立てている。
うむ、満足だ。
演奏がおわり、きゃーきゃーとうるさい女性たちの歓声があがる。
そのとき、ドラムの男が一瞬客席を見て、ドキッとしたように見えた。
まるでアリサを見つけて、驚いているような? ……まさかな。
演奏が終わると次のバンドに入れ替わる。グラスに酒が残っているにも関わらず、アリサは俺の腕を引っ張って店の裏へと連れていった。
「ちょっと待て、なにをする気だ」
「決まってるじゃないですか! 出待ちです!」
「出待ちって、たった今演奏がおわったばかりだぞ? そんなに焦らなくてもいいだろ」
「いーや、だめです! 特に最近の彼は、他のメンバーも待たずに急いで帰るんですよ! たぶん他の女のところにーって、来たー!」
「ひいっ! ア、アリサっ!?」
扉が開き出てきたのは、さっきのドラム男、スターキーだ。彼は顔を伏せて何かから隠れるように、焦った様子で出てきた。
他の女のところに行くというよりも、まるで何かからおびえて、逃げているような……」
「お疲れさま、スターキー。今日もかっこよかったよ!
「もう店には来ないでくれって言ったじゃないか! 頼むからもう許してくれよ」
彼がそう言った次の瞬間、アリサは左手を押さえうずくまる。
「きゃ、痛っ、いたたっ」
「あ、す、すまない。言い過ぎた。取り消すよ」
「うう、痛かった……。大丈夫よ、スターキー。それより、私の送った指輪、つけてくれた?」
「あ、ありがとう、アリサ。でも、指輪は、ごめん、つけられないって言ったよね」
「ふふ、イングウェイさん、彼って優しいでしょう? 他のファンから私が嫉妬されないように、ステージでは指輪を外してくれてるんです」
「あ、ああ、そうなのか」
何か様子が変だな。
「君、こいつの知り合いか? 何とかしてくれ、もう嫌だ、限界なんだよ! こいつがいなくなるなら何でもするから!」
「おい、ちょっと待て、さっぱり話が見えないのだが。君はアリサの恋人ではないのか?」
「ええ、そうよ」
「いや、まったく違う」
ううむ、困った。俺は頭を抱えた。
どうやら大変な難題に巻き込まれてしまったようだ。俺はその時初めて、ジャニ・アランに一杯食わされてしまったことに気が付いた。
なるほど、これが経験で問題を解決するという、老獪な冒険者の知恵か。許せん。
状況を整理すると、おそらくアリサ嬢がスターキーに一方的な恋心を抱いているようだ。
一番早い解決策は、スターキー氏がアリサを好きになってくれること。そうなれば円満解決だ。
となると、≪洗脳≫の術でスターキーの恋心を刺激するのが一番早いのだが、たぶん、まずいだろうな。
まったく、オーガやドラゴンなら吹き飛ばせば済むのに、人間関係は面倒くさいな。
「あー、あれです! あの奥でドラムを叩いてる、長髪の彼、スターキーって言うんですよー!」
店に入るなりアリサの酔いはあっという間に消え去り、恋する一人の乙女になっていた。
ステージ上では4人組のグループが、ガンガン激しい演奏を行っていた。
これは酒場というよりクラブだな。
「おい、先にトイレを見てきてくれないか?」
「何言ってるんですか、歌が先ですよ! 聞いてからにしてください!」
ううむ、仕方ない。待つしかないか。
俺は酒を飲みながら彼らの演奏を聴いていたが、なかなか骨のあるいい歌を歌っていた。
アリサの彼ぴとやらのドラムも素晴らしいが、ツインギターによる曲構成が特に気に入った。激しいリフの裏で鳴らされるうねるようなメロディーラインは、まるでクラシックを元にしているように思えた。
そしてサビのあとのベースソロ。途中でギターも入ってくるが、あくまで一歩引いて主役のベースを盛り立てている。
うむ、満足だ。
演奏がおわり、きゃーきゃーとうるさい女性たちの歓声があがる。
そのとき、ドラムの男が一瞬客席を見て、ドキッとしたように見えた。
まるでアリサを見つけて、驚いているような? ……まさかな。
演奏が終わると次のバンドに入れ替わる。グラスに酒が残っているにも関わらず、アリサは俺の腕を引っ張って店の裏へと連れていった。
「ちょっと待て、なにをする気だ」
「決まってるじゃないですか! 出待ちです!」
「出待ちって、たった今演奏がおわったばかりだぞ? そんなに焦らなくてもいいだろ」
「いーや、だめです! 特に最近の彼は、他のメンバーも待たずに急いで帰るんですよ! たぶん他の女のところにーって、来たー!」
「ひいっ! ア、アリサっ!?」
扉が開き出てきたのは、さっきのドラム男、スターキーだ。彼は顔を伏せて何かから隠れるように、焦った様子で出てきた。
他の女のところに行くというよりも、まるで何かからおびえて、逃げているような……」
「お疲れさま、スターキー。今日もかっこよかったよ!
「もう店には来ないでくれって言ったじゃないか! 頼むからもう許してくれよ」
彼がそう言った次の瞬間、アリサは左手を押さえうずくまる。
「きゃ、痛っ、いたたっ」
「あ、す、すまない。言い過ぎた。取り消すよ」
「うう、痛かった……。大丈夫よ、スターキー。それより、私の送った指輪、つけてくれた?」
「あ、ありがとう、アリサ。でも、指輪は、ごめん、つけられないって言ったよね」
「ふふ、イングウェイさん、彼って優しいでしょう? 他のファンから私が嫉妬されないように、ステージでは指輪を外してくれてるんです」
「あ、ああ、そうなのか」
何か様子が変だな。
「君、こいつの知り合いか? 何とかしてくれ、もう嫌だ、限界なんだよ! こいつがいなくなるなら何でもするから!」
「おい、ちょっと待て、さっぱり話が見えないのだが。君はアリサの恋人ではないのか?」
「ええ、そうよ」
「いや、まったく違う」
ううむ、困った。俺は頭を抱えた。
どうやら大変な難題に巻き込まれてしまったようだ。俺はその時初めて、ジャニ・アランに一杯食わされてしまったことに気が付いた。
なるほど、これが経験で問題を解決するという、老獪な冒険者の知恵か。許せん。
状況を整理すると、おそらくアリサ嬢がスターキーに一方的な恋心を抱いているようだ。
一番早い解決策は、スターキー氏がアリサを好きになってくれること。そうなれば円満解決だ。
となると、≪洗脳≫の術でスターキーの恋心を刺激するのが一番早いのだが、たぶん、まずいだろうな。
まったく、オーガやドラゴンなら吹き飛ばせば済むのに、人間関係は面倒くさいな。
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